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3話 放送室と部長 (17/20)
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パタン。と扉の音がして、放送室に静寂が訪れる。
「……俺もしかして、愛花ちゃんに完全に嫌われた……?」
新堂がその場にへたり込む。陸空は麗音の隣にそっと膝をついた。
「鈴木くん、うちの書記の暴力行為を心から謝罪する。本当に申し訳ない事をしてしまった……」
「……構わない。誤解には……慣れている」
「いやいや、良くないですよ! 新堂さんは、どうしていきなり麗音さんを殴ったんですか? 話も聞かないなんて、らしくないですよ」
アキの言葉に、新堂が俯いていた顔を上げた。
その視線が麗音の手元に注がれた後、床の上に落ちた制服の上着にたどり着く。
「愛花ちゃん、涙目でさ……。鈴木が……明希ちゃん達の上着持ってて。暑くて脱ぐような気温じゃねーしさ、無理矢理脱がされたのかと思ったら……」
「「「!?」」」
「ええー? 新堂さんよく一瞬でそんなこと考えつきますねー」
「上着……? 気付かなかった……」
誰もそんなこと考えてなかったという空気に、新堂がさらに惨めな気分になる。
「なるほど、納得した。貴君にとって貴女らはそれほど大切な存在だという事か」
言葉を発した麗音の表情が歪む。話すだけでも痛む様子だ。
「……なんでお前だけそこ汲んでくれるわけ?」
新堂はしょんぼり呟きつつも、のろのろ立ち上がると麗音の側に両手を付いた。
「いきなり殴って悪かった。俺の勘違いで痛い思いさせて、本当にごめん。俺のことも殴っていーから。……ただ……」
土下座する新堂に麗音は首を振ろうとして、アキの両手に止められる。
「麗音さん首振ったらダメですよ。私、愛花にキープを命じられてますからね」
「そ、そうだ、な……すまない……」
アキの両手で顔を優しく抑えられたままの麗音がどうしようもなく睫毛を伏せる。麗音の頬に赤みが増すのを、陸空だけがじっと見ていた。
「俺のことと生徒会は関係ねーからさ、俺は停学になっても、退学になってもいーんだけど、生徒会とこいつのことは別にしてもらえないか?」
額を放送室のフロアマットに擦り付けていた新堂が、麗音の表情を窺うように、じわりと顔を上げる。
「うむ。我が早急に上着を返却しておけば防げた事故だ。貴君が気に病む事はない」
麗音は痛みに顔を顰めながらもハッキリ返す。
許された事にホッとしかけた二人に声を上げたのはアキだった。
「そうはいきませんよっ。無実の麗音さんの顔がこんなになっちゃったんですよ!?」
「ぅ、え、ええと、治療費は俺が全額払うよ……」
しどろもどろに答える新堂に、アキはビシッと言う。
「それは当然です。が、それだけじゃ足りませんっ」
「……俺に、何をしろって?」
新堂に半眼でじとりと見られても、アキは怯むことなくにっこり笑って言った。
「新堂さんには、ぜひ麗音さんに協力してもらいたいんですよねっ」
「協力……?」
「……俺もしかして、愛花ちゃんに完全に嫌われた……?」
新堂がその場にへたり込む。陸空は麗音の隣にそっと膝をついた。
「鈴木くん、うちの書記の暴力行為を心から謝罪する。本当に申し訳ない事をしてしまった……」
「……構わない。誤解には……慣れている」
「いやいや、良くないですよ! 新堂さんは、どうしていきなり麗音さんを殴ったんですか? 話も聞かないなんて、らしくないですよ」
アキの言葉に、新堂が俯いていた顔を上げた。
その視線が麗音の手元に注がれた後、床の上に落ちた制服の上着にたどり着く。
「愛花ちゃん、涙目でさ……。鈴木が……明希ちゃん達の上着持ってて。暑くて脱ぐような気温じゃねーしさ、無理矢理脱がされたのかと思ったら……」
「「「!?」」」
「ええー? 新堂さんよく一瞬でそんなこと考えつきますねー」
「上着……? 気付かなかった……」
誰もそんなこと考えてなかったという空気に、新堂がさらに惨めな気分になる。
「なるほど、納得した。貴君にとって貴女らはそれほど大切な存在だという事か」
言葉を発した麗音の表情が歪む。話すだけでも痛む様子だ。
「……なんでお前だけそこ汲んでくれるわけ?」
新堂はしょんぼり呟きつつも、のろのろ立ち上がると麗音の側に両手を付いた。
「いきなり殴って悪かった。俺の勘違いで痛い思いさせて、本当にごめん。俺のことも殴っていーから。……ただ……」
土下座する新堂に麗音は首を振ろうとして、アキの両手に止められる。
「麗音さん首振ったらダメですよ。私、愛花にキープを命じられてますからね」
「そ、そうだ、な……すまない……」
アキの両手で顔を優しく抑えられたままの麗音がどうしようもなく睫毛を伏せる。麗音の頬に赤みが増すのを、陸空だけがじっと見ていた。
「俺のことと生徒会は関係ねーからさ、俺は停学になっても、退学になってもいーんだけど、生徒会とこいつのことは別にしてもらえないか?」
額を放送室のフロアマットに擦り付けていた新堂が、麗音の表情を窺うように、じわりと顔を上げる。
「うむ。我が早急に上着を返却しておけば防げた事故だ。貴君が気に病む事はない」
麗音は痛みに顔を顰めながらもハッキリ返す。
許された事にホッとしかけた二人に声を上げたのはアキだった。
「そうはいきませんよっ。無実の麗音さんの顔がこんなになっちゃったんですよ!?」
「ぅ、え、ええと、治療費は俺が全額払うよ……」
しどろもどろに答える新堂に、アキはビシッと言う。
「それは当然です。が、それだけじゃ足りませんっ」
「……俺に、何をしろって?」
新堂に半眼でじとりと見られても、アキは怯むことなくにっこり笑って言った。
「新堂さんには、ぜひ麗音さんに協力してもらいたいんですよねっ」
「協力……?」
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