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こうもりさんの家に向かっていると、くまさんはだんだんお腹が痛くなってきました。
さっきすいかを食べ過ぎたせいかなぁ。
くまさんは情けなくて、泣きたい気持ちになってきました。

その時、後ろから声がかかりました。
「あら、くまさん? こんなところでどうしたんですの?」
くまさんが振り返ると、こうもりさんがいました。
「やあ、こうもりさん。君の家に行こうとしていたんだよ」
「まあ、それはちょうどよかったわ。今帰るところでしたの」
こうもりさんは小さな羽をパタパタさせて、くまさんの近くの枝にぶら下がりました。

「最近調子はどうだい?」
「私は元気よ。……でもくまさんは元気がなさそうに見えますわ」
くまさんは、スイカの食べ過ぎがばれると恥ずかしいと思いました。
「いや、たいした事じゃないよ。気にしないで」
けれど、お腹がまたズキンとしました。
「あいたたた……」
「まあ大変ですわ。どこか痛みますの?」
こうもりさんは心配そうに覗き込んできます。
くまさんは「だいじょうぶだいじょうぶ」とごまかして、急いで家に帰りました。



くまさんは、家のベッドに潜りむと、背中を丸めてじっとしていました。
食べ過ぎくらい、しばらく横になっていれば治ると思っていました。

しかし、なかなかお腹の痛みはよくなりません。
それどころか、だんだん、ひどくなってきたような気がします。

このまま治らなかったらどうしよう。
くまさんはひとりぼっちで家にいるのが不安になってきました。



その時、くまさんの家の扉がノックされました。
もう夜だったので、くまさんはとっても驚きました。
「くまさん。大丈夫かい?」
この声はたぬきくんです。
こんな遅い時間に、一体どうしたんだろう。
くまさんはお腹が痛いのも忘れて答えました。
「どうぞ、入っていいよ」
たぬきくんは心配そうな顔で入ってきました。
「こうもりさんから、くまさんが病気かもしれないって聞いたんでねぇ。具合はどうだい?」
たぬきくんはお見舞いに、はちみつをくれました。
「ありがとうたぬきくん、ぼくは大丈夫だよ」

そこへ、またお客さんがきました。
「遅くにごめんなさい。くまさんが病気って聞いて、じっとしていられなくて」
ウサギさんは心配そうな顔で、花束をかかえています。
「ありがとうウサギさん、ぼくは大丈夫だよ」

そこへ、ねずみさんとリスさんが、風邪薬を持ってきました。
「くまさん。風邪なんだって?」
「大丈夫かしら、心配だわ」
「ありがとうねずみくんリスさん、大丈夫だよ」

そこへ、ビーバーさんがきました。
「くまさん。病気なんだって?」
そこへ、ふくろうさんもきました。
「寝込んでると聞いたぞ、大丈夫か?」
そこへ、こうもりさんもきました。
「大勢で押しかけちゃってごめんなさいね。くまさんが病気だって言ったら、みなさん今すぐお見舞いに行くっておっしゃって」
どうやら、みんなに言って回ったのはこうもりさんのようです。

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