11 / 113
第1話 赤い宝石 : 困っている人は放っておけない。そんな彼に手渡された赤い宝石。
4.一夜明けて(1/4)
しおりを挟む
翌朝、カーテンの隙間から差し込む朝日に照らされて目を覚ますと、フォルテとデュナはまだ寝ていた。
サイドボードに置かれた時計を見る。
ずっしりと重そうな台に、細かな彫り細工がされていて、その真ん中に、懐中時計ほどの大きさの時計が埋め込まれた形になっているそれは、今が朝の七時少し前だという事を教えていた。
えーと、昨日、ご飯を食べ終えて、部屋に通されたのが九時頃で……。
昨夜、この部屋に通され、この時計を初めて目にしたときの時間がそのくらいだった。
デュナは気付けばバタンと寝ちゃってて、フォルテもうとうとしてて、私はひとまずみんなの下着を洗濯したんだよね。
思い出しつつ、部屋の隅に干していた洗濯物を回収する。
明日が野宿にならないとも限らない生活をする上で、洗濯できるチャンスを逃さないことは大事だった。
手早く畳んで、振り返る。
いつも、長期の旅になるとスカイが背負わされている大きな縦長のリュックを視線で探すが……。
……あれ? 無い……?
ひとまず洗濯物をベッドに置くと、立ったりしゃがんだり、部屋の隅から隅まで確認する。
移動中は、スカイの背中が定位置のリュックだが、宿ではいつも私達の部屋にあるものだったし、現に昨日そこから全員分の洗濯物を取り出したのだ。
無いはずが無い。
デュナに聞こうにも、まだぐっすり寝ているし……。
脳裏にデュナの台詞が過ぎる
『寝すぎは時間の無駄よ無駄! 7時間も寝れば十分よ!!』
いつもそう言ってスカイを叩き起こしているデュナが、疲れていたとはいえ、こんなにいつまでも寝るものだろうか。
デュナは、まったくもって昨日のまま、寝返りすら打っていないのではないかと思うほどに、昨夜と同じ姿勢で、靴を履いたままベッドにうつ伏せている。
何かがおかしいという事に、私は、やっと気付いた。
「うーん……」
後ろで小さな声が上がる。
窓側のベッドで寝ていたフォルテが、眠そうに目をこすりながらやってくる。
デュナが息をしているか、確認しなくてはいけない。
その考えがどんな結果を可能性として想定したのか、気付いた瞬間、背筋が凍った。
「おはよぅ……ラズ」
ふにゃふにゃと、まだ回らない口から発された挨拶に返事が出来ないまま、私はデュナをじっと見つめていた。
立ち竦む私を不審に思ったフォルテが、私の視線の先にあるデュナを見る。
「デュナ、まだ寝てるの?」
おぼつかない足取りでデュナに近寄ろうとしたフォルテの目前に、昨日見かけた大気の精霊、あのパチパチした奴が姿を現す。
あの表情は、攻撃を仕掛けようとしている!!
力いっぱいフォルテの肩を引く。
フォルテはそのまま背中から私にぶつかり、ゴロンと2人で後ろに倒れた。
運悪く、ベッドの脚に背中が打ち付けられる。
が、フォルテは無傷のようだった。
よかった……。
ほっと胸を撫で下ろす。
「ど、どうしたの?」
驚いて目が覚めたのか、フォルテが大きなラズベリー色の瞳で私を覗き込んだ。
「うん、ちょっとね……いたたた……」
痛む背中を庇いながら、寄りかかる形になっていたベッドに座る。
大丈夫? とフォルテが心配そうにしている。
摩ろうかどうしようか迷っているようだったが、摩られると間違いなく痛い。
とりあえず、隣に座るように言って、何をどう説明しようかと考える。
サイドボードに置かれた時計を見る。
ずっしりと重そうな台に、細かな彫り細工がされていて、その真ん中に、懐中時計ほどの大きさの時計が埋め込まれた形になっているそれは、今が朝の七時少し前だという事を教えていた。
えーと、昨日、ご飯を食べ終えて、部屋に通されたのが九時頃で……。
昨夜、この部屋に通され、この時計を初めて目にしたときの時間がそのくらいだった。
デュナは気付けばバタンと寝ちゃってて、フォルテもうとうとしてて、私はひとまずみんなの下着を洗濯したんだよね。
思い出しつつ、部屋の隅に干していた洗濯物を回収する。
明日が野宿にならないとも限らない生活をする上で、洗濯できるチャンスを逃さないことは大事だった。
手早く畳んで、振り返る。
いつも、長期の旅になるとスカイが背負わされている大きな縦長のリュックを視線で探すが……。
……あれ? 無い……?
ひとまず洗濯物をベッドに置くと、立ったりしゃがんだり、部屋の隅から隅まで確認する。
移動中は、スカイの背中が定位置のリュックだが、宿ではいつも私達の部屋にあるものだったし、現に昨日そこから全員分の洗濯物を取り出したのだ。
無いはずが無い。
デュナに聞こうにも、まだぐっすり寝ているし……。
脳裏にデュナの台詞が過ぎる
『寝すぎは時間の無駄よ無駄! 7時間も寝れば十分よ!!』
いつもそう言ってスカイを叩き起こしているデュナが、疲れていたとはいえ、こんなにいつまでも寝るものだろうか。
デュナは、まったくもって昨日のまま、寝返りすら打っていないのではないかと思うほどに、昨夜と同じ姿勢で、靴を履いたままベッドにうつ伏せている。
何かがおかしいという事に、私は、やっと気付いた。
「うーん……」
後ろで小さな声が上がる。
窓側のベッドで寝ていたフォルテが、眠そうに目をこすりながらやってくる。
デュナが息をしているか、確認しなくてはいけない。
その考えがどんな結果を可能性として想定したのか、気付いた瞬間、背筋が凍った。
「おはよぅ……ラズ」
ふにゃふにゃと、まだ回らない口から発された挨拶に返事が出来ないまま、私はデュナをじっと見つめていた。
立ち竦む私を不審に思ったフォルテが、私の視線の先にあるデュナを見る。
「デュナ、まだ寝てるの?」
おぼつかない足取りでデュナに近寄ろうとしたフォルテの目前に、昨日見かけた大気の精霊、あのパチパチした奴が姿を現す。
あの表情は、攻撃を仕掛けようとしている!!
力いっぱいフォルテの肩を引く。
フォルテはそのまま背中から私にぶつかり、ゴロンと2人で後ろに倒れた。
運悪く、ベッドの脚に背中が打ち付けられる。
が、フォルテは無傷のようだった。
よかった……。
ほっと胸を撫で下ろす。
「ど、どうしたの?」
驚いて目が覚めたのか、フォルテが大きなラズベリー色の瞳で私を覗き込んだ。
「うん、ちょっとね……いたたた……」
痛む背中を庇いながら、寄りかかる形になっていたベッドに座る。
大丈夫? とフォルテが心配そうにしている。
摩ろうかどうしようか迷っているようだったが、摩られると間違いなく痛い。
とりあえず、隣に座るように言って、何をどう説明しようかと考える。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる