22 / 57
第一話 異母妹は悪役令嬢である
03-7.
しおりを挟む
私にはアリアを救う方法はないというのに。
「お世辞なんて口にしたことはありませんわよ」
知っている。
アリアは貴族社会では必要な世辞の一つも言えないような子だった。
「お姉様、わたくしはお姉様に憧れておりましたのよ。お父様たちには生きる場所が違うのだと何度も言い聞かせられても、その背を目で追わなかった日は一度もございませんわ」
疎ましく思ったことはあっても、嫌いになったことは一度もない。
彼女が私を嫌っていると思っていたのだ。
「お姉様と話をして未練がましく思ってしまったことができてしまいましたわ」
「未練? なんだ。正直に言え」
「ええ、ありがとうございます。お姉様。これだけは言っておかなければ死に損ねてしまいそうですわ」
恨み言だろうか。
どんな言葉でもいい。
「そうなってしまえば、お姉様は困ってしまうでしょう?」
それが彼女の最後の願いならば、叶えてやりたい。
「わたくしが生きていては困るのはお姉様ですものね」
悪戯をする時のような顔をしている。
アリアは、私が思いつかない行動をする。
それがおかしくて、楽しくて、私は何度も大笑いをしてしまった昔の出来事を思い出してしまう。
「わたくし、ローレンス様の事が大好きでしたの。愛していましたわ。ローレンス様の婚約者でいられた間は幸せでしたわ」
恨み言さえも言わないのか。
どうして、幸せそうな顔をするんだ。
「お父様もお母様もローレンス様の婚約者のわたくしを愛してくださったでしょう?」
連れて逃げてしまおうかと考えている私の考えなどお見通しだと言わんばかりに、あの子は笑って語り始めた。
「だから、わたくし、勘違いをしてしまいましたの。ローレンス様に縋り付いてしまって、お姉様に身分を剝奪されて、それで牢屋に閉じ込められてようやく分かりましたの。……ふふっ、なにもかも遅いですわよね」
それは恨み言でもなく、幼い頃、何度も父と義母の眼を盗んで繰り返してきたやり取りだった。
「お世辞なんて口にしたことはありませんわよ」
知っている。
アリアは貴族社会では必要な世辞の一つも言えないような子だった。
「お姉様、わたくしはお姉様に憧れておりましたのよ。お父様たちには生きる場所が違うのだと何度も言い聞かせられても、その背を目で追わなかった日は一度もございませんわ」
疎ましく思ったことはあっても、嫌いになったことは一度もない。
彼女が私を嫌っていると思っていたのだ。
「お姉様と話をして未練がましく思ってしまったことができてしまいましたわ」
「未練? なんだ。正直に言え」
「ええ、ありがとうございます。お姉様。これだけは言っておかなければ死に損ねてしまいそうですわ」
恨み言だろうか。
どんな言葉でもいい。
「そうなってしまえば、お姉様は困ってしまうでしょう?」
それが彼女の最後の願いならば、叶えてやりたい。
「わたくしが生きていては困るのはお姉様ですものね」
悪戯をする時のような顔をしている。
アリアは、私が思いつかない行動をする。
それがおかしくて、楽しくて、私は何度も大笑いをしてしまった昔の出来事を思い出してしまう。
「わたくし、ローレンス様の事が大好きでしたの。愛していましたわ。ローレンス様の婚約者でいられた間は幸せでしたわ」
恨み言さえも言わないのか。
どうして、幸せそうな顔をするんだ。
「お父様もお母様もローレンス様の婚約者のわたくしを愛してくださったでしょう?」
連れて逃げてしまおうかと考えている私の考えなどお見通しだと言わんばかりに、あの子は笑って語り始めた。
「だから、わたくし、勘違いをしてしまいましたの。ローレンス様に縋り付いてしまって、お姉様に身分を剝奪されて、それで牢屋に閉じ込められてようやく分かりましたの。……ふふっ、なにもかも遅いですわよね」
それは恨み言でもなく、幼い頃、何度も父と義母の眼を盗んで繰り返してきたやり取りだった。
1
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語
京衛武百十
ファンタジー
<メイトギア>と呼ばれる人型ホームヘルパーロボット<タリアP55SI>は、旧式化したことでオーナーが最新の後継機に買い換えたため、データのすべてを新しい機体に引継ぎ、役目を終え、再資源化を迎えるだけになっていた。
なのに、彼女が次に起動した時にいたのは、まったく記憶にない中世ヨーロッパを思わせる世界だった。
要人警護にも使われるタリアP55SIは、その世界において、ありとあらゆるものを凌駕するスーパーパワーの持ち主。<魔法>と呼ばれる超常の力さえ、それが発動する前に動けて、生物には非常に強力な影響を与えるスタンすらロボットであるがゆえに効果がなく、彼女の前にはただ面倒臭いだけの大道芸に過ぎなかった。
<ロボット>というものを知らないその世界の人々は彼女を<救世主>を崇め、自分達を脅かす<魔物の王>の討伐を願うのであった。
悪役令嬢ですが最強ですよ??
鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。
で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw
ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。
だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw
主人公最強系の話です。
苦手な方はバックで!
悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!
飛鳥井 真理
恋愛
入園式初日に、この世界が乙女ゲームであることに気づいてしまったカーティス公爵家のヴィヴィアン。ヒロインが成り上がる為の踏み台にされる悪役令嬢ポジなんて冗談ではありません。早速、回避させていただきます!
※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。
※連載中も随時、加筆・修正をしていきますが、よろしくお願い致します。
※ カクヨム様にも、ほぼ同時掲載しております。
特典付きの錬金術師は異世界で無双したい。
TEFt
ファンタジー
しがないボッチの高校生の元に届いた謎のメール。それは訳のわからないアンケートであった。内容は記載されている職業を選ぶこと。思いつきでついついクリックしてしまった彼に訪れたのは死。そこから、彼のSecond life が今始まる___。
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
死に戻り公爵令嬢が嫁ぎ先の辺境で思い残したこと
Yapa
ファンタジー
ルーネ・ゼファニヤは公爵家の三女だが体が弱く、貧乏くじを押し付けられるように元戦奴で英雄の新米辺境伯ムソン・ペリシテに嫁ぐことに。 寒い地域であることが弱い体にたたり早逝してしまうが、ルーネは初夜に死に戻る。 もしもやり直せるなら、ルーネはしたいことがあったのだった。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる