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第一話 異母妹は悪役令嬢である

03-7.

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 私にはアリアを救う方法はないというのに。

「お世辞なんて口にしたことはありませんわよ」

 知っている。

 アリアは貴族社会では必要な世辞の一つも言えないような子だった。

「お姉様、わたくしはお姉様に憧れておりましたのよ。お父様たちには生きる場所が違うのだと何度も言い聞かせられても、その背を目で追わなかった日は一度もございませんわ」

 疎ましく思ったことはあっても、嫌いになったことは一度もない。

 彼女が私を嫌っていると思っていたのだ。

「お姉様と話をして未練がましく思ってしまったことができてしまいましたわ」

「未練? なんだ。正直に言え」

「ええ、ありがとうございます。お姉様。これだけは言っておかなければ死に損ねてしまいそうですわ」

 恨み言だろうか。

 どんな言葉でもいい。

「そうなってしまえば、お姉様は困ってしまうでしょう?」

 それが彼女の最後の願いならば、叶えてやりたい。

「わたくしが生きていては困るのはお姉様ですものね」

 悪戯をする時のような顔をしている。

 アリアは、私が思いつかない行動をする。

 それがおかしくて、楽しくて、私は何度も大笑いをしてしまった昔の出来事を思い出してしまう。

「わたくし、ローレンス様の事が大好きでしたの。愛していましたわ。ローレンス様の婚約者でいられた間は幸せでしたわ」

 恨み言さえも言わないのか。

 どうして、幸せそうな顔をするんだ。

「お父様もお母様もローレンス様の婚約者のわたくしを愛してくださったでしょう?」

 連れて逃げてしまおうかと考えている私の考えなどお見通しだと言わんばかりに、あの子は笑って語り始めた。

「だから、わたくし、勘違いをしてしまいましたの。ローレンス様に縋り付いてしまって、お姉様に身分を剝奪されて、それで牢屋に閉じ込められてようやく分かりましたの。……ふふっ、なにもかも遅いですわよね」

 それは恨み言でもなく、幼い頃、何度も父と義母の眼を盗んで繰り返してきたやり取りだった。
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