あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

文字の大きさ
上 下
51 / 58
第二話 【あやかし喫茶】は縁を結ぶ

01-11.

しおりを挟む
「若葉は婆さんも坊やも信用しませんよ」

 若葉は断言した。

 からかうような言葉も不安を煽るような言葉も、美香子には通用しない。それならば、本心のままに体当たりをするしかない。

「そりゃあそうだろうねぇ」

「婆さん。皮肉の一つも通じないんですか? 少しくらい怒ったらどうですか」

「おや、怒られたいのかい?」

 美香子は若葉に視線を向けた。

 ……怒らせて、もう来るなって言わせたいんですけどね。

 若葉の目論見に気づいているのだろうか。

「そうですよ」

 若葉は肯定した。

「二度と顔を見たくないって言わせる為に来たんです。それが伊織さんの為に若葉ができることですからね」

 若葉は堂々と宣言をする。

 ……どうせ、この人は伊織さんに言い付けないでしょうね。

 若葉が嫌な態度をとってきたと訴えることもしないだろう。それをされても、興味がないかのように美香子は笑顔で受けえ答えをする。

 ……変な人。

 若葉は居心地の悪さを感じていた。

「伊織の為かい」

 美香子は嬉しそうだった。

 それが若葉には理解ができなかった。

「嬉しいねぇ。伊織はこんな優しい子と友達になれたんだねぇ」

「友達ではなく家族です。若葉と伊織さんは種族は違いますけど、でも、立派な家族になったんです。それを勘違いしないでください」

「そうかい、そうかい。こんな可愛い子をお嫁にもらうなんて、伊織も抜け目のない男に育ってもんだねぇ」

 美香子は勘違いをしている。

 それに気づき、若葉は露骨に嫌そうな顔をした。

「冗談はやめてくれませんか?」

 若葉は伊織に対して恋愛感情を抱いていない。それは伊織も同じだ。

「伊織さんは若葉の弟になったんです。若葉は伊織さんの三倍は生きている成人の河童ですからね。赤ちゃん鬼の恋人なんて冗談でも言わないでほしいです」

 若葉は全力で否定した。

 自分たちの家族の在り方を勘違いされるのも否定されるのも嫌だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

処理中です...