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第二話 【あやかし喫茶】は縁を結ぶ
01-7.
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「睡蓮坊ちゃんが人の世話をしてるんですかー? ええー、無理でしょー? だって、あの睡蓮坊ちゃんですよー? 若葉でも手こずるのにー」
若葉はありえないと言わんばかりに笑い出した。
その言葉に伊織は苦笑いをする。
……全員、同じことを言うんだな。
噂を聞いた者は、全員、同じことを口にした。
実際、人の道を歩んでいる半妖の姪を鬼頭自警団に預けようとした姿を思い出すと、世話ができているのか、心配になるほどである。
「まあ、でも、それなら納得できますねー」
「は?」
「怖い顔をしないでくださいよー」
若葉はすべてを理解したといわんばかりの顔をした。
……嫌な予感がする。
話の流れで睡蓮の話をしたのがいけなかったのだろう。若葉の中では同じような境遇に陥っている恩人を助ける為に、努力をしようとしているのだと勝手に解釈されてしまっていた。
「坊やの面倒を見ることができればー、睡蓮坊ちゃんの子育ての手伝いができるからでしょー? 自警団の若衆とはいえ、伊織さんはまだまだお子ちゃまですからねー。そういうのを任せられるのも貴重な経験になりますよー」
若葉の視線が優しいものに変わった。
それならば、協力を惜しむわけにはいかないと言いたげな顔だった。
「いや、ちが――」
「最初からそう言ってくれたらよかったのにー。若葉だって、睡蓮坊ちゃんには世話になってますからねー。それなら、それでちゃんと協力しますってー」
若葉は伊織の言葉を最後まで聞かなかった。
それから風呂敷を抱きしめたまま、歩き出す。協力すると決めたのならば、荷物を届ける為に現世に向かうのだろう。
……勘違いしてるな。
しかし、伊織はそれを訂正しなかった。
……坊やが人の道を外れてしまえば、姪御様の遊び相手にされるか。
睡蓮が頭を抱えているのを知っている。
偶然、再会をしたらしい姉に託された姪はすべてを諦めような目をしているらしい。その経緯を睡蓮は酒を飲みながら、伊織に愚痴をこぼしていた。その間、人見知りが激しい姪を鬼頭自警団に預けてきたのだから、睡蓮に子育ての才能がないのは誰もが知ることになってしまった。
若葉はありえないと言わんばかりに笑い出した。
その言葉に伊織は苦笑いをする。
……全員、同じことを言うんだな。
噂を聞いた者は、全員、同じことを口にした。
実際、人の道を歩んでいる半妖の姪を鬼頭自警団に預けようとした姿を思い出すと、世話ができているのか、心配になるほどである。
「まあ、でも、それなら納得できますねー」
「は?」
「怖い顔をしないでくださいよー」
若葉はすべてを理解したといわんばかりの顔をした。
……嫌な予感がする。
話の流れで睡蓮の話をしたのがいけなかったのだろう。若葉の中では同じような境遇に陥っている恩人を助ける為に、努力をしようとしているのだと勝手に解釈されてしまっていた。
「坊やの面倒を見ることができればー、睡蓮坊ちゃんの子育ての手伝いができるからでしょー? 自警団の若衆とはいえ、伊織さんはまだまだお子ちゃまですからねー。そういうのを任せられるのも貴重な経験になりますよー」
若葉の視線が優しいものに変わった。
それならば、協力を惜しむわけにはいかないと言いたげな顔だった。
「いや、ちが――」
「最初からそう言ってくれたらよかったのにー。若葉だって、睡蓮坊ちゃんには世話になってますからねー。それなら、それでちゃんと協力しますってー」
若葉は伊織の言葉を最後まで聞かなかった。
それから風呂敷を抱きしめたまま、歩き出す。協力すると決めたのならば、荷物を届ける為に現世に向かうのだろう。
……勘違いしてるな。
しかし、伊織はそれを訂正しなかった。
……坊やが人の道を外れてしまえば、姪御様の遊び相手にされるか。
睡蓮が頭を抱えているのを知っている。
偶然、再会をしたらしい姉に託された姪はすべてを諦めような目をしているらしい。その経緯を睡蓮は酒を飲みながら、伊織に愚痴をこぼしていた。その間、人見知りが激しい姪を鬼頭自警団に預けてきたのだから、睡蓮に子育ての才能がないのは誰もが知ることになってしまった。
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