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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る
02-8.
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根本的に性格が合わない相手だとセシルは思っていた。
「王妃様のお子ならば間違いはないでしょう? 王子殿下には、一代限りの大公の爵位を授けても良いと王妃様はおっしゃっていましたわ。その子をセシルの婿養子として、我が家の分家のようにしてしまえばよろしいではありませんか」
アリシアの言葉を聞き、デズモンドは頭を抱えた。
アクロイド侯爵家はリリー王国の要だ。
デズモンドの宰相として腕は確かなものであり、国王夫妻もアクロイド侯爵家とは良好な関係で居続けたいと考えているのだろう。
だからこそ、アリシアの無茶苦茶な言い分も、国王夫妻は快く引き受けることだろう。
三男であるセシルが、侯爵家を継ぐ可能性は低い。
それなのにもかかわらず、アリシアが干渉をしやすいように婿養子として王子を差し出せと要求しているのだ。
それはルシアンとの婚約が成立していなければ、近い将来、現実のものとなっていたことだろう。
「陛下はそれでも良いとおっしゃられていた」
デズモンドは肯定する。
末っ子を溺愛する父親としては、アリシアのとんでもない要求を叶えてしまいたかった。国のことを後回しにすることができたのならば、デズモンドはハヴィランド辺境領に目を向けることもなかったはずだ。
「しかし、辺境の安定が先だ。宰相として、どちらが王国の為になるのか、選ばなければならなかった」
デズモンドは宰相として正しい道を選んだ。
それは、セシルのことを考え、選び抜いた道だった。
「なにより、セシルはルシアン・ハヴィランドと友好な関係だ。顔を見れば喧嘩をしているような王子よりも、親しい友人の方がまだ良いだろう」
デズモンドの言葉に対し、アリシアはついに口を閉じた。
セシルにとっての幸せを模索しているのは、アリシアも同じだ。
甘えたい盛りの末息子を溺愛し、傍にいたいと思うのは母親であるアリシアの我儘でしかないのだと、わかってはいたのだろう。
……ルシアンが言っていた相手って、まさか。
セシルは両親の話を聞き、先ほどのルシアンとのやり取りを思い出す。
ルシアンは、セシルの初恋を台無しにしたと嘆いていた。
初恋の相手との交友を台無しにするかのように、割り込んでしまったのだと自供していたことを思い出してしまった。
「王妃様のお子ならば間違いはないでしょう? 王子殿下には、一代限りの大公の爵位を授けても良いと王妃様はおっしゃっていましたわ。その子をセシルの婿養子として、我が家の分家のようにしてしまえばよろしいではありませんか」
アリシアの言葉を聞き、デズモンドは頭を抱えた。
アクロイド侯爵家はリリー王国の要だ。
デズモンドの宰相として腕は確かなものであり、国王夫妻もアクロイド侯爵家とは良好な関係で居続けたいと考えているのだろう。
だからこそ、アリシアの無茶苦茶な言い分も、国王夫妻は快く引き受けることだろう。
三男であるセシルが、侯爵家を継ぐ可能性は低い。
それなのにもかかわらず、アリシアが干渉をしやすいように婿養子として王子を差し出せと要求しているのだ。
それはルシアンとの婚約が成立していなければ、近い将来、現実のものとなっていたことだろう。
「陛下はそれでも良いとおっしゃられていた」
デズモンドは肯定する。
末っ子を溺愛する父親としては、アリシアのとんでもない要求を叶えてしまいたかった。国のことを後回しにすることができたのならば、デズモンドはハヴィランド辺境領に目を向けることもなかったはずだ。
「しかし、辺境の安定が先だ。宰相として、どちらが王国の為になるのか、選ばなければならなかった」
デズモンドは宰相として正しい道を選んだ。
それは、セシルのことを考え、選び抜いた道だった。
「なにより、セシルはルシアン・ハヴィランドと友好な関係だ。顔を見れば喧嘩をしているような王子よりも、親しい友人の方がまだ良いだろう」
デズモンドの言葉に対し、アリシアはついに口を閉じた。
セシルにとっての幸せを模索しているのは、アリシアも同じだ。
甘えたい盛りの末息子を溺愛し、傍にいたいと思うのは母親であるアリシアの我儘でしかないのだと、わかってはいたのだろう。
……ルシアンが言っていた相手って、まさか。
セシルは両親の話を聞き、先ほどのルシアンとのやり取りを思い出す。
ルシアンは、セシルの初恋を台無しにしたと嘆いていた。
初恋の相手との交友を台無しにするかのように、割り込んでしまったのだと自供していたことを思い出してしまった。
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