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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

04-24.

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「アルバート」

 ブラッドはアルバートを睨みながら名を呼んだ。

「お前。最初から俺を嫁にする気でいただろ」

 ブラッドはついに気づいてしまった。

 ブラッドが侯爵家に売り飛ばされるように嫁ぐことになったのは、偶然ではない。元々、アルバートが秘密裏に進めていた話だったのだろう。

 しかし、ブラッドの両親が一向にブラッドの嫁入り話を了承しなかった。

 同性婚が認められているとはいえ、男性が子どもを産むのには女性の数倍以上の負担がかかる。それなりに愛情をもって育てたブラッドを危険に晒すとわかっていながら、両親は頷くわけにはいかなかったのだ。

 それがキャロラインの一件により、状況が大きく変わってしまった。

 伯爵家が生き残る為ならば、アルバートの提案を受け入れるしかなかった。

 そのことにブラッドは気づいてしまった。

「そうだが」

 アルバートはすんなりと認めた。

 それが当然であるかのように返事をした為、ブラッドはありえないと言わんばかりの表情になった。

「それなら、そうやって、最初から言えよ。このバカ」

 ブラッドは勘違いをし続けるところだった。

「俺は両親に売られたものだと思ってたんだぞ。しかも、よりにもよって、アルバートに売りつけやがったと」

「それも間違いではないが」

「最初から提案してあったなら話が違うんだよ!」

 ブラッドは頭を抱える。

 ……侯爵家の人たちが好意的なわけだ。

 アルバートの両親も了承の上で話が進められていたはずだ。

 だから、社交場で顔を合わせた時に、毎回のように友好的に接してきたのだろう。毎回、侯爵夫人にダンスを誘われていたのは将来の嫁として見られていたからだ。

「夫人を口説かなくてよかった。とんでもない恥をかくところだったじゃねえか」

「夫人とは?」

「お前の母親だよ。この鈍感変態野郎が」

 ブラッドはため息を零す。

 既婚者を口説くほどに女性に飢えていると印象を与える必要はなかった。だからこそ、ダンスに誘われた時だけ踊っていた。
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