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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

04-17.

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「おい、この屑野郎。荷物を受け取ってねえんだけど」

 ブラッドは伯爵家の事情を考え、未だに準備ができていないだけと思っていた。両親の性格を考えると違和感があったものの、伯爵家の状況は良くはない。

 キャロラインの婚約破棄の影響は凄まじいものだ。

 スターチス侯爵家が借金の肩代わりをしたとはいえ、伯爵領の風評被害まではどうしようもないだろう。

 それを思えば、花嫁道具が届いていなくても不思議ではなかった。

 着の身着のまま、侯爵家に連れ込まれたとはいえ、ブラッドは不便をしていない。仕事に必要となる道具は問題なく準備されていた。なにより、騎士団の制服は騎士団のロッカーの中に予備品がしまってあるので問題はなかった。

 だからこそ、気づくのが遅くなってしまった。

「処分したわけじゃねえだろうな」

「処分はしていない。だが、あれはブラッドには相応しくない」

「お前が勝手に決めんじゃねえよ!」

 ブラッドはアルバートの後ろ脚を蹴る。

 送られていた荷物を隠されていたことが不満だったわけではない。ブラッドの意思を無視して決めつけられたのが、なによりも不快だった。

「俺の両親の悪趣味は俺だって知ってるけどな! でも、あの屑みたいな親でも俺の親なんだよ!」

 ブラッドは両親を敬愛しているわけではない。

 どちらかといえば、冷めきった親子仲である。

 それでも、彼らはブラッドの両親であることには変わりはない。

「それをアルバートが勝手な判断で決めつけるんじゃねえよ。俺はお前の嫁にはなってやったが、お前の所有物になったつもりはねえからな」

 ブラッドは言いたいことだけを言って、アルバートを脱衣場から追い出した。そのまま、アルバートの主張に耳を貸すこともなく、扉を閉めて鍵をした。

 ……偉そうになりやがって。

 対等な関係だと思っていたブラッドだけだったのだろうか。

 不安になってきた。元々身分差があり、口を開けば喧嘩ばかりの相手だ。偶然、両思いであっただけだ。それを自覚する前に強引に結婚させられてしまった。

 順番が滅茶苦茶だった。

 そのせいなのか。ブラッドはアルバートがなにを考えているのか、理解ができなかった。

 ……なにをしてもいいとでも思っていやがるのか。

 ブラッドはアルバートに大人しく従うつもりはない。

 結婚をしてもブラッドはブラッドである。それを変えるつもりはなかった。
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