悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

０４－１４．

　……本気で言ってやがるのか。

　ブラッドはアルバートの性格をよく知っている。

　ブラッドに対しては強い執着心を持ち、初恋を拗らせたような斜め上の発想をすることが多いものの、ブラッド以外の人に対しては公平な対応を心がける真面目な性格だ。

　だからこそ、監禁したいなどと冗談で口にするはずがない。

　……最悪だな。

　ブラッドは自己嫌悪をする。

　アルバートの監禁したいという本音を拒絶するべきであると頭ではわかっているのだが、その言葉を強烈な愛情表現として受け入れてしまっている自分自身に気づいてしまった。

　アルバートがブラッドに執着心を抱いていることを喜んでいる自分がいた。

　それを自覚してしまう。

「バカ」

　ブラッドはアルバートの肩を軽く叩く。

「それを受け入れるわけねえだろ」

　ブラッドは自分の心に嘘をつく。

　本音を口にするべきではない。ブラッドはアルバートとの婚姻を受け入れ、彼の愛情を受け入れた。

　しかし、アルバートを独り占めしたいわけではない。

「対処法を考えてやる。だから、少しの間、俺の代わりに仕事をしてこい」

　ブラッドは第二騎士団を好んでいる。

　大切な職場とかわいい部下たちを守る為には、適切な対処法を練らなくてはならない。なにより、アルバートに危害がいくようなことだけは避けたかった。

「無理だけはしないでくれ」

　アルバートは悲しげに囁いた。

　飼い主をひたすら待ち続ける忠犬のようだった。

　……大男のくせに。かわいいのは卑怯だ。

　ブラッドはアルバートの頭を撫でまわしたくなる衝動を堪える。

「お前にだけは言われたくねえんだけど。俺のことが大切なのはわかるけど？　だからって、アルバートが犠牲になるようなことだけはしてくれるなよ」

　ブラッドは素っ気なく言い切った。

　それから、さりげなくアルバートの体を押していく。

「なにがしたい？」

「は？　わかんねえの？　脱衣場から追い出そうとしてんだよ」

　ブラッドは当然だと言わんばかりに言葉を口にした。