3 / 14
第二章 雷雲
しおりを挟むごろごろぴっかーん。
遠くの方から聞こえてくる雷鳴。
遠くの空には、真っ黒な雲、徐々にこちらへと向かってくる。
とってもよくない予感。
「どこか、雨宿りできる場所を探さないと。」
ごろごろぴっかーん。
再びとどろく雷の音。
さっきのものより大きく、より近い。
そして、サッーと急に降り出す雨。
「地上まではあともう少しのはずだけど…。」
地図とコンパスを見て、確認するマリア。
地図にはポツポツと雨のシミ。
既に天界は遥か空の上、後戻りはちょっときびしい。
「地上で雨宿りできそうな場所を探すしかないね。先を急ごう。」
暗い雲の中を進んでいく私たち。
時折、雷で黄色く光る雲。
いつの間にか雷雲の中に入ってしまったみたいで、ものすごい雨と風が吹きつけてくる。
当然、羽衣もバタバタと揺れる。
周りのトンネルみたいな雲からは雷。
ものすごい風で雲の中に吸い込まれていく私たち。
ごろごろどっしゃーん。
再び大きな雷鳴。
真っ暗な雲の中でフラッシュする視界、びりッという音。
視界がまっ黄色になったあと、あたしたちは意識を手放した。
☆☆☆
ザザザザザっー。
頬にあたるものすごい量の雨。
徐々に目を開けると遥か上空にある黒い雲。
そこから降り立つ、おびただしい数の水滴たち。
頬をパチンとし、目を覚まさせるアタシ。
手には土の感触。
下にあるのは紛れもなく…地面だった。
「そっか…、着いたんだ。」
バシャバシャと羽についた水滴を振り払い、周囲を見渡すと…。
遠くの方にうっすらと建物の影。
「マリアー。」
親友の名前を呼ぶアタシ。
すると、近くの茂みから声。
「私は大丈夫。」
頭についた葉っぱをとりながら茂みから出てくるマリア。
「それより、羽衣は?」
落ちてきた真上を見上げるあたしたち。
そこにはビリビリに破け、木に引っかかった羽衣があった。
ごろごろどっしゃーん。
視界が真っ黄色に染まるような稲光。
そして相変わらずの大雨。
唖然とする私たち。
雨が目に染みる。
もう一度頬をバチんとするあたし。
「ま、なんとかなるでしょ。」
雨の中、えっへんと胸を張るあたし。
「それもそうね。まずはこの雨のほうが問題ね。」
天を仰ぎ、暗い空と雨粒を見つめるマリア。
「それなら問題なしだよ。向こうに建物が見えたの。ついてきて!」
「ちょっ…。」
マリアの手をつかみ、走り出すアタシ。
「ほら、いそぐよ☆」
☆☆☆
ザッーと雨の降る中、森の中を走って行く私たち。
ぬかるんだ、地面をブーツで蹴り上げ、前に進んで行く。
「見えた!!」
雨粒のシャワーの先にあったのはおおっきな三角屋根の建物。
夜だからよく見えないけどけっこう大きな感じがする。
雨の中、急いで駆け込む私たち。
中は真っ暗。
ひとまず、カバンを下ろすあたしたち。
「まずは、火ね。」
入り口は明るいけど、中は暗め。
明るい火をたいて、あとついでに危険なものがないか確かめるのだ。
「じゃ、わたしは料理でも作ろっかな。」
地面にカバンをおくと、大きなお鍋を取り出すマリア。
「お水はたくさんあるし、スープでも作りましょうか。」
「具材も、いくつか天界から持ってきたやつがあるし…。」
といって干し肉とジャガイモとかを取り出す。
「じゃ、あたしは火の準備ね。」
あたしはその辺に落ちていたまだ、濡れていない乾いた枝を集める。
そして同じくその辺に落ちていた石を積み上げ…。
「じゃっ、じゃーん。」
かまどの完成‼
そこに、お水の入ったお鍋を置くマリア。
「うん、イイ感じ‼」
あとは沸騰させて。
その間に…。
その辺に落ちていた手ごろなサイズの木と…。
余ってた布を巻いて…。
油をしみこませれば特製のトーチの完成‼
火打石で火をつけて…。
アチッ。
「いざ、冒険の旅へ‼」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~
紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの?
その答えは私の10歳の誕生日に判明した。
誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。
『魅了の力』
無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。
お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。
魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。
新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。
―――妹のことを忘れて。
私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。
魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。
しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。
なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。
それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。
どうかあの子が救われますようにと。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【中間選考残作品】医大生が聖女として異世界に召喚されましたが、魔力はからっきしなので現代医術の力で治癒魔法を偽装します!【3章終】
みやこ。@他コン2作通過
ファンタジー
♦️カクヨム様で開催されたコンテストで中間選考に残った作品です。
元医療従事者によるちょっぴりリアルな異世界転移ラブコメディ♡
唱える呪文はデタラメ、杖は注射器、聖水ならぬ聖薬で無垢な人々を欺き、王子を脅す。突然異世界に飛ばされても己の知識と生存本能で図太く生き残る......そんな聖女のイメージとはかけ離れた一風変わった聖女(仮)の黒宮小夜、20歳。
彼女は都内の医科大学に特待生として通う少しだけ貧しい普通の女の子だったが、ある日突然異世界に召喚されてしまう。
しかし、聖女として異世界召喚されたというのに、小夜には魔力が無かった。その代わりに小夜を召喚したという老婆に勝手に改造されたスマートフォンに唯一残った不思議なアプリで元の世界の医療器具や医薬品を召喚出来る事に気付く。
小夜が召喚されたエーデルシュタイン王国では王の不貞により生まれ、国を恨んでいる第二王子による呪いで国民が次々と亡くなっているという。
しかし、医者を目指す小夜は直ぐにそれが呪いによる物では無いと気が付いた。
聖女では無く医者の卵として困っている人々を助けようとするが、エーデルシュタイン王国では全ての病は呪いや悪魔による仕業とされ、治療といえば聖職者の仕事であった。
小夜は召喚された村の人達の信用を得て当面の生活を保障して貰うため、成り行きから聖女を騙り、病に苦しむ人々を救う事になるのだった————。
★登場人物
・黒宮小夜(くろみやさよ)⋯⋯20歳、貧乏育ちで色々と苦労したため気が強い。家族に迷惑を掛けない為に死に物狂いで勉強し、医大の特待生という立場を勝ち取った。
・ルッツ⋯⋯21歳、小夜が召喚された村の村長の息子。身体は大きいが小心者。
・フィン⋯⋯18歳、儚げな美少年。聖女に興味津々。
・ミハエル・フォン・ヴィルヘルム⋯⋯20歳、エーデルシュタイン王国の第二王子。不思議な見た目をしている。
・ルイス・シュミット⋯⋯19歳、ミハエルの護衛騎士。
⚠️ 薬や器具の名前が偶に出てきますが、なんか薬使ってるな〜くらいの認識で問題ございません。また、誤りがあった場合にはご指摘いただけますと幸いです。
現在、ファンタジー小説大賞に参加中です。応援していただけると嬉しいです!
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる