上 下
37 / 116
第5章

修練の日々

しおりを挟む
 「もう!
お兄ちゃん、またユウキさんの前で手掴みで食べてる! 恥ずかしいから、やめてって言ってるでしょ?」
「この食い方の方が美味いんだから、仕方ないだろ? それに、ユウキは食い方の1つや2つ気にしないさ。
なあ、ユウキ?」

「い、いや、俺に聞くなよ……。
ここでお前の食い方を認めたらアリスちゃんに後で怒られるのは、俺なんだぞ? 勘弁してくれ……」
 ユウキは、アレンとアリスの夕食の際のいつものやり取りを見て、ため息を吐いた。


 あの、女神討伐計画の会議から約一月と数日経ち、ユウキは、カレント領土内の王都サンペクルトにあるアレンの家にいた。
 王都サンペクルトは、アレンが王の剣となり、アリシアとアレンが国政の実権を握ったあと、たった3年で大きな発展を遂げていた。
 元々、創造の力そうぞうのちからや国の軍事力を自分達の為だけに使ってきた上役や大臣達を、アレン達の活躍で退けたお陰で、富裕層のみならず、一般市民や貧民街に住む者達に大きな恩恵をもたらしていた。
 特にここアレンの家がある元貧民街は、アリシアの創造の力そうぞうのちからを使い、住民の意見を取り入れた後、それぞれの家庭に立派な家が建てられた。これにより、家や財産を持たない者がいなくなった。
 また、アリシアが作り出す世にも珍しい鉱石や、素材、食材、薬剤は、軍事力の増大だけでなく、病気で苦しむ者達を助け、貧民街で空腹に困る者達を大いに救済する形となった。
 軍部の拡大と産業の発展により、職に溢れる者もいなくなり、王都サンペクルトは貧民街という概念自体が消え、建国以来最大の活気に溢れていた。
 人々は魔王アリシアと王の剣アレンの活躍を称え、カレント領土全土にその名が轟いていた。
 それにも関わらず、アレンの家は昔と何も変わりがなく、小さく、狭く、ボロ屋のままだった為、改築した周りの家と比較すると、元貧民街の中でも一番目立ってボロ家と分かるほど酷いものだった。
 王の剣となり、アリシアの伴侶となったアレンには莫大な資金が入り、アレンとリリスは、城への居住を薦められたが2人はこれを丁重に断わった。
 2人はアリスと共に過ごした想い出の家でそれからも住むことを迷わず決断し、今もこうしてこの家に住んでいる。

 女神討伐計画の会議の後、三ヶ国同盟が成され、これからについて皆で話し合った結果、女神討伐の為、一度それぞれの国に戻り国内の軍事力強化とそれぞれで修行を行う事となった。

 ユウキはアレンの勧誘により、カレント領土に残り、アレンの元で修行を積む事に。
 アリシアの護衛には、ミアを就けた。

 アンナとエリーナはアナスタス領土に戻り、国内の統治と修行を。
 アンナの護衛とエリーナとの共同魔法研究の為にワクールを就けた。

 フィオナはシュタット領土に戻り、アンナ達同様に国内の統治と修行を。
 フィオナの護衛には、ディアナとフレイヤを就けた。

 全ては約束の日の為に、それぞれで力をつけ、3年後にシュタット領土の首都ダンダレイトに合流し、残りの2年近くで、三ヶ国同時に作戦の準備を進める計画となった。

 話は戻り、アレンの家で食事を取るユウキは、この狭い家に自分とアレンとアリス、リリスのみならず、アリシア、その専属のメイドのクシャナ、ミアまでもが、毎日、食卓を囲んでいる状況に、この家を訪れた日から一月経った今でも落ち着かずにはいられなかった。

(まず、なんで、死んだはずのアリスちゃんまで普通に食卓を囲んでるんだよ!?
そして、なんで誰もそれに驚かず普通に接してんだよ!?
……確かアリシアの説明だと、ブレスレットに残った強い思念を元にアリスちゃんの魂がそこに居着いて、アリシアの創造の力そうぞうのちからで生前の姿を具現化することで、今では一日数時間、姿を保つことが出来るとかなんとか……。幽霊とお喋り出来るなんて本当になんでもアリだな……)
 心の中でそう呟きながら、ユウキは食卓を囲む皆を見渡した。

 アレンの両隣には、アリシアと7歳の姿のままのアリスが
 ユウキの隣には、いつも通りミアが座り、バクバクと勢いよく夕食を食べている。
 台所には、リリスとメイドのクシャナが次々と料理を作っていた。

「いつも、思うけど、この家の広さに比べて人多すぎだろ!?
寝るときも3部屋しかないから、それぞれの部屋でギュウギュウだし。
アレンはまあ、実家だから良いとして、なんでアリシアもクシャナもミアもこの家で寝泊まりしてんだよ!!」
 ユウキが突然叫ぶ。

「ごめんね~、ユウキ。
どうしても城よりこの家の方が落ち着くから城での仕事が終わるとここに来ちゃうのよ~」
 アリシアが微笑みながら応えた。

「私はアリシア様、専属のメイドだからアリシア様の食事等の世話を常にしなければならない。
つまり、この家でアリシア様が寝泊まりするなら、私もここで寝泊まりした方が都合が良いということだ。それを貴様にとやかく言われる筋合いはない!」
 クシャナがユウキを睨み言い返した。

「……ミアはなんでいんだよ?」
 ユウキが横をチラリと見る。

「リリスさんと、クシャナさんのご飯が美味しいからに決まってんじゃん! それに、ユウキの修行の手伝いとしてアレン様と私が交互に見てるんだから、ユウキの側にいる方が都合がいいだろ?」
 ミアは口に食べ物を含んだまま応えた。

「あら~、ミアちゃんはいつも嬉しい事を言ってくれるから、私、嬉しいわ~。
今日もいっぱい食べてね~」
 台所から、リリスが嬉しそうに話す。

「貴様もミア様のように、人が作った料理に対して"美味しい"の一言くらい言えんのか?」
 クシャナがユウキをまた、睨んで話した。

(なんか、知らんがコイツよく俺に敵意剥き出しで話しかけてくるな。俺が何したって言うんだ)
 ユウキがクシャナから目をそらす。

 しばらくして、リリスが台所をクシャナに任せて、ミアとは反対側のユウキの隣の席に座った。
ユウキは、またか! と思いながら目を少し伏せた。

「ふふふ、ユウキさんの隣はまた、お母さんが貰いましたよ。どさくさに紛れてくっついちゃいますよ~」
 リリスがユウキの腕を両の手で抱きながらいつものように胸を押し当ててきた。
 それを何事も無かったかのように食事を進めるユウキ以外の者達。

「……あ、あの、リリスさん?」
 ユウキがゆっくりと口を開く。

「はい、なんでしょう、ユウキさん」
 リリスが微笑みながら話す。

「胸がまた、当たってます……」
 ユウキが勘弁してくれと言う顔で話す。

「あら、あら、私とした事が、またやってしまいました。ごめんなさいね、ユウキさん」
 リリスが慌てたように腕組みを解き話した。

(絶対、ワザとだろ……。
いい加減、アレンも母親の暴走止めろよ。いくら40歳とはいえ、この人、20代前半かってくらい美人で若々しいから、どういう反応すればいいかわからんわ!!)
 ユウキがアレンを睨む。

「お母さん!  もう、ユウキさんにちょっかい出しすぎだよ! いくら、若いユウキさんの身体が気になるからって触りすぎ!」
 アリスが仕方ないとばかりに助け舟を出す。

「だから、謝ってるじゃない。アリスは、お母さんに厳しいわね。ユウキさんの反応が可愛いから、少しからかっただけじゃない」
 リリスが笑って応える。

「母さん、ユウキが嫌らしい妄想をして、母さんを変態だと勘違いしているから、いい加減、身体を調べる医療と調理の専門家だと話してやればいいのに……」
 アレンが布巾で口を拭きながら話した。

「誰も、嫌らしい妄想しとらんわ!! それに、お前の母親は筋金入りの変態だろうが! この前、俺の部屋に夜這いに来たぞ!」
 ユウキが突っ込みを入れる。

「ユウキ、貴様! アリスちゃんの前でそんな嫌らしい事を口にするな! 私の包丁で切り刻まれたいか!」
 クシャナがいつの間にか、ユウキの背後に立ち、包丁をユウキの喉元に当てた。

「クシャナ、やり過ぎ! 包丁を納めて」
 アリシアが慌てて止める。

「わかりました、アリシア様」
 アリシアの言うことは素直に聞くクシャナ。

 いつもの流れとはいえ、頭を抱えて冷や汗を流すユウキは、アンナと一緒にアナスタス領土に帰っていれば良かったと後悔していた。
(マジでこの家、居心地わりぃ……)

「あはははは!  やっぱりユウキさんがいると家が明るくなるわね!
……ユウキさん、私が少しエッチなのは認めるけど、いつもユウキさんの身体を触るのは、修行での疲れ具合や、身体の成長具合を確かめてるのよ」
 リリスがユウキを見つめて話した。

「疲れ具合と成長具合……?」
 ユウキが尋ねる。

「母さんは、親父と結婚する前まで、先程言った通り、医療と調理の専門家だったんだよ。
母さんは触れた人間の体調や、成長具合を瞬時に判断する事ができて、それに合わせた最適な食材を選定し調理する事ができる。
私が王の剣になれたのも、母さんの診断と料理のお陰でもあるんだ」
 アレンが肉を頬張りながら話す。

「……た、確かに!
言われてみれば、あれだけアレンとミアから修行でシゴかれているのに、食事後しばらくしたら、疲れが結構取れてるな……!!」
 ユウキが思い返して驚く。

「ようやく、気づいたの?
リリスさんの料理は疲労回復だけじゃなく、成長を促す特殊な素材で出来てるんだよ。日毎に変わってる料理はユウキ、君の体調と成長具合に合わせて作られてるんだ」
 ミアが得意げに話す。

「そ、そんなに凄い事、俺が知らぬ間にやってたのか!」
 ユウキが驚く。

「そうなんですよ! やっとユウキさんにわかってもらえましたか! 私が毎日ユウキさんの身体を触るのは、そういう理由があったんですよ?」
 リリスがまた、ユウキの腕を抱き寄せ胸を当ててきた。

「胸をわざわざ当てる理由も、夜這いをちょくちょくする理由も別に関係ないんじゃ…………」
 ユウキがリリスをジロリと睨みながら呟いた。
 ユウキとリリスのやり取りを見ていた周りの皆が笑い声を上げた後、しばらくして、全員が夕食を済ませた。


 夜が更けて皆が落ち着いた後、ユウキは、アレンの部屋を訪ねた。
 コンコン!
 ユウキがアレンの部屋のドアをノックすると中からアレンの声が響いてきた。
「ユウキか、入っていいぞ」

 ユウキがアレンの部屋に入ると、アレンが振り返って口を開いた。
「どうだ、少しは疲れは取れたか?」

「お前の母親のせいで、逆に気疲れしたわ! ……まあ、リリスさんやクシャナさんの料理とマッサージのお陰で身体的な疲れは大分マシになってると思う」
 ユウキがため息混じりに応えた。

「それは、良かった。……それでは、いつもの加護の修行に入ろう」
 アレンとユウキは、すぐに部屋の中で座禅を組み、目を閉じて精神を集中させ始める。

「ユウキ、集中力が乱れているぞ!」
 アレンが目を閉じたまま、ユウキを叱った。

「……そういうけど、この加護の力を感じ取って力を全身に巡らせる修行、かなりムズイぜ? 俺はどっちかっていうとやっぱり身体動かしている方が性に合うな……」
 ユウキが呟く。

「身体的な修行も大事だが、加護を持つ者にとって加護の力をコントロールする修行は、かなり重要な修行と言える。
勿論、友愛の加護ゆうあいのかご寵愛の加護ちょうあいのかごも巫女とその力を使う者の信頼関係などで、大きく力の差は生まれるが、それ以前に力を使う者が授かった力を完全に引き出せるようにトレーニングしていないと意味がない。
例えば、元々信頼関係が10で、力をコントロールする能力が10なら、加護の力をそのまま10使える。
その後、信頼関係が向上し、加護の力が20まで上昇しても、力をコントロールする力が10のままなら、結局加護の力は10の力しか使えないという事だ。
ユウキの中には、まだユウキが扱えていない力が膨大に眠っている。ユウキがその力をコントロール出来るようになれば、この私も越せる可能性が十分にあるんだ」
 アレンが解説する。

「何度も聞いたからわかってるよ……。
ん………………………………」
 ユウキはまた、目を閉じると暗闇の中に自分がポツンと立っているイメージが見えた。
 暗闇の中を先に進むと、少し先に直径30cm程度の光の玉があり、それに触れると、無数の光の粒に砕け、自身の周りをぐるぐる周り、力が漲る事を感じる。
 暗闇の中のイメージのユウキは、さらに奥に進む。
 しばらく歩くと直径が自身の背丈と変わらない程のオレンジ色の光の玉が目の前に現れ、それに触れると光の玉がユウキを飲み込み、ユウキの周りは光で溢れた。
 ユウキはその光の力をコントロールしようとするが、自身の中に受け止める事が出来ず、光の玉に弾かれ吹き飛ばされる。
 オレンジ色の光の玉に吹き飛ばされる直前、オレンジ色の光の玉の先に赤い色の光の玉を見つける事が出来た。
 しかし、赤い色の光の玉はボヤけて見え、正確な大きさは測ることが出来なかった。
 オレンジ色の光の玉に吹き飛ばされたユウキは、その衝撃で目を開けた。

「あ~~~~~、くそ!! いつも友愛の加護ゆうあいのかごの力をコントロールするところまでは上手くいくんだけど、その先の寵愛の加護ちょうあいのかごの力を探っている途中でいつも現実に戻される感じだ!!」
 ユウキは悔しそうに話す。

「それは、君が彼女達の想いを受け止めきれていない証拠だ。
完全に寵愛の加護ちょうあいのかごをコントロール出来るようになった時はイメージの中で光の玉が自身と同化するんだ」
 アレンが話した。

「……赤い光の玉が、ボヤけて見えるのは?」
 ユウキが尋ねる。

「……おそらくルナマリア様のものだろう。
まだ、ルナマリア様自身が君に巫女名みこなを伝える事を躊躇ためらっている。それは、ルナマリア様自身の問題でもあるが、君が原因でそうなっている可能性が高い。君は過去の彼女との記憶の中から、その理由を思い出し、知る必要がある」
 アレンが真剣な目で話す。

「……俺に原因が…………?」
 ユウキが呟く。

「ああ、そうだ。
……君が加護の力を封印し、その力に向き合う事は成長を促す上で遠回りに見えて、実は最短の近道だったようだ。
夜のこの修行で加護の力を最大限に引き出せるようにして、朝から夕方までの身体的な修行で、その土台を作る。
……ユウキには、その成果を試す場が必要だ!」
 アレンが話す。

「修行の成果を試す場……?」
 ユウキが尋ねる。

「ああ、君には明日から、王国騎士団見習いとして修練場に入隊してもらう。
普通なら正式な王国騎士団になるまで、修練場から帰れないが、ユウキは他の修行もあるし、母さんに健康面をサポートさせる為にも特別に帰宅を認めよう。
他にも、一月毎に隊員と試合を組むが、君には特別に毎日、色んな人と試合をしてもらう。日頃の修行成果を試す絶好の場だろう」
 アレンがニヤリと笑う。

「ちょっ……ちょっと待て! いつものお前との修行は?」
 ユウキが尋ねる。

「私との修行は、基本的に変わらない。
朝起きるのが少し、早くなるだけだ。
明日から4時半に起床。
着替えたら、すぐに私と剣の攻めや防御、回避の型を習得していき、
6時半に朝食。
8時から、12時まで王国騎士団修練場で試合を組み、
12時から13時まで昼食。
それから、15時まで魔法についての勉強をして、
15時から17時までミアとの攻撃に対する回避訓練。
そこから、帰宅し、18時に夕食だな。
あとは、いつも通り、風呂と着替えを済ませてから、20時から22時まで、加護の力をコントロールする修行で1日のスケジュールは、終了だ。
君にはこれを3年間実践してもらい、加護無しで、王国騎士団見習いから、正式な王国騎士団となるだけでなく、王国騎士団の中でも1番の強さを身につけてもらう!」
 アレンが話した。

「……それを、やり切れば、あんたみたいになれるのか?」
 ユウキが尋ねる。

「ハッキリ言って私が王の剣になった頃よりも、母さんのトレーニングに合わせた料理、マッサージ、それに、トレーニングメニューも格段に向上させている。
私は王国騎士団から、王の剣の強さを身につけるのに、7年かかったが、君には3年間でやってもらう! 君次第で私と同等か、それ以上の強さを身につけられるだろう!
どうだ、ユウキ。ワクワクしてこないか?」
 アレンが微笑みながら話す。

 ユウキはアレンの言葉を聞いて目を見開き、自身の両の掌を見つめた後、強く握り拳を作り、アレンを見つめて微笑み返して応えた。
「ああ、これから先が楽しみだ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

処理中です...