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第6章

悪魔の子 ナスターシャ ★

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 ユウキ達の様子を見ていたメーデイアは、無理をして神の槍を放った反動で身体中から滝のような汗を流していた。
「おのれ……、エリーナぁ~!! 裏切り者の分際で最期まで私の邪魔をしおって~。
身体中の力が抜けていく……。今、成瀬なるせユウキに襲われたらマズい……。ここは逃げるしか……」
 メーデイアが焦るように周りを見渡し、ベルヴェルクを見つけて、思念の伝達て撤退を伝えた。
 ベルヴェルクがメーデイアの側に降り立ち、ユウキ達が悲しみに暮れている間に急いでこの場を離れようとした時だった。

「あぁああ~~!!!!」
 アンナが頭を押さえながら悲しみと怒りで我を忘れて叫び出した。

「!!? な、なんだあの女……。エリーナをやられて気でも触れたか!?」
 メーデイアが呟き、呆れたような表情を浮かべ、ユウキ達に背を向けてこの場を去ろうとした瞬間、メーデイアはアンナの中から特殊な鼓動を感じる。

 ドクンっ!!

 アンナの方をすぐに振り返るメーデイア。
「!!!? なっ!! まさか!!!!
そんな馬鹿な!! なぜ、ここに!!」


 頭を激しく押さえるアンナが心配になり、ディアナがアンナを押さえる。
「ルナ様!! 落ち着いて……!! 頭を痛めてしまいます!!」

 アンナが狂ったように頭を押さえる仕草を見て、メーデイアはミナト達と戦った日の事を思い出していた。
 ミナトと 忘却の巫女ぼうきゃくのみこユナが次元の狭間に消える直前、ソフィアはユナに手を伸ばして少しの間、2人の指先が掴み合うように触れる。
「ソフィア……! 未来は貴方に託すわ!!」
 ユナがそう叫び、ユナとソフィアの身体が輝いた後、ミナトとユナは次元の狭間に飲み込まれた。
疑問が確信に変わったメーデイアは笑って叫んだ。
「ははははは!! まさか! まさか、ここにいたなんて……!! 
そうか! あの時、忘却の巫女ぼうきゃくのみこユナは、ソフィアに自身の巫女の力を継承したのだ!!」

 メーデイアの笑い声を聞いたユウキが立ち上がり、怒りの表情で叫んだ。
「てめぇ……、いい加減にしろよ?
何を笑ってやがる。もう……、逃さねぇ!!」

「逃げる……? 私がか? もう逃げる必要はなくなったのだ!! 私が長年、探し求めていたものが見つかったのさ!」
 メーデイアが微笑んで話す。

 メーデイアの不気味な笑みに危険な企みを感じたアリシアが叫んだ。
「メーデイア! 貴方の暴挙もここまでです!」

 リィィィーーーーン!!

 アリシアが創造の力そうぞうのちからを発動し、メーデイア達の上空に隕石を出現させる。
 慌てたようにメーデイアが叫んだ。
「ベルヴェルク! なんとかしろ!!」

 巨大な隕石に斬りかかるベルヴェルク。隕石とベルヴェルクの剣が衝突し、凄まじい衝撃波が広がる。
 暫く耐えていたベルヴェルクだったが、隕石の勢いに押され始める。
 それを見たメーデイアが背後から叫んだ。
「それでも8大災厄ヴォーセミ・ディザスター最強の男か! 本気を出せ、ベルヴェルク!!」

 メーデイアの叫びを聞いたベルヴェルクの眼光が鋭く光り、雄叫びをあげた瞬間、隕石が弾け飛ぶ。
 しかし、隕石の勢いまでは殺せず、砕け散った隕石がメーデイア達に降り注いだ。

「あれを……! 砕いただと……!?」
 アレンが驚くように話す。

 ボロボロになったベルヴェルクとメーデイアは立ち上がり、オリヴィアとショロトルは虫の息状態となっていた。

 アリシアがユウキを見て叫ぶ。
「ユウキ! 今がチャンスです! 私の神技では倒せませんでしたが、今のメーデイア達なら貴方1人でも容易く倒せる! お願いします!! エリーナ様の仇の為、世界の平和の為、メーデイアを倒してください!」

 ユウキが剣を構え、メーデイア達に斬りかかろうとした時だった。
 メーデイアが微笑んだまま、話し始めた。
「何度言わせれば気が済むのだ……。私達の勝ちは動かない」

「この状態でも、私達に勝てる何かがあると言うの……?」
 アリシアが冷や汗を流して尋ねると、すぐにユウキが口を開いた。
「アリシア、ハッタリだ! 俺が今から倒してやる」

「ふふ、ハッタリではないさ……。アリシア、悪魔の子の事は知っているか?」
 メーデイアが不気味に笑って尋ねた。

「悪魔の子……。確か、10年以上前に世界を震撼させた魂を吸い取る恐ろしい力を秘めた子供のこと……。それが今のこの状況と何が関係が……?」
「では、その悪魔の子が今、どうなっているか知っているか?」
「……知らないわ。悪魔の子の噂はある日を境にパタリと止んだから」
「ふふ、お前は……、いや、世界中の人間は知らないわけではない。忘れているだけなのだ! 誰が悪魔の子だったのかを!!」
「……どう言う……こと…………?」
「私は私と8大災厄ヴォーセミ・ディザスターの封印を解き、この世界を私の代わりに滅ぼしてくれる存在として、我が子であり、闇の終焉の巫女しゅうえんのみこ、ナスターシャの魂を生み出し、下界に解き放った。
後にお前達が悪魔の子と呼ぶ存在だ。
ナスターシャの魂は自身を入れる器として、その負荷に耐え得るだけの器を探し出し、その器の魂を侵食して乗っとる予定だった。
ナスターシャの転生は成功し、お前達が知っての通り、世界に発信できる程の思念の伝達で世界中に自身の存在を知らせ、恐怖のどん底に陥れた。
恐怖などの負の感情を感知できるナスターシャは、それを利用して、感知した者の魂から生命エネルギーを吸い取り、他人を殺す事が出来る。
その能力を世界に発信するだけで世界は震え上がった。
しかし、すぐにその噂が消えてしまう。
なぜなら、ソフィアが忘却の巫女ぼうきゃくのみこの神技、忘却の力ぼうきゃくのちからを使い、世界中の人々の記憶から悪魔の子の存在を消してしまったからだ」
「なぜ、ソフィア様がそんな事を!?
それにソフィア様は先読みの巫女さきよみのみこ! 忘却の力ぼうきゃくのちからなんて、使えない筈でしょう?」
「確かにソフィアは先読みの巫女さきよみのみこだが、啓示の日けいじのひの戦いで、私がミナトと忘却の巫女ぼうきゃくのみこユナを元の世界セインツに飛ばす際に、ユナがソフィアに巫女の力を継承していたのだ。
苦し紛れのユナの最後の抵抗だったのだろうが、ソフィアにとって後に大いに役立つ力となったようだな」
「……だから、なぜ、ソフィア様はわざわざ世界中の人々の記憶から悪魔の子の記憶を消すようなことをしたのですか!?」
 アリシアがその台詞を尋ねた瞬間、メーデイアはこの日1番の不気味な笑顔を浮かべて応えた。
「その答えは簡単だ。愛する我が子が悪魔の子になってしまったという記憶を世界中から消したかったからだよ!」

 エリーナの死の影響で頭痛が続いて頭を押さえていたアンナが顔を上げて驚いた表情で尋ねた。
「貴方は何を言っているの……?」

 メーデイアが微笑んだまま応える。
「まだ分からないか? 悪魔の子ナスターシャの魂の器は……、ルナマリア、お前だったのだよ」

「!!!!?」
 ユウキ達が全員、驚愕の表情を浮かべてアンナを見つめた。

 アンナが頭を片手で押さえたまま叫んだ。
「嘘よ! 私は一度も他人の魂を吸った記憶なんてないわ!!」

「それは、お前の記憶の中では魂を吸っていないだけの話だ。
ナスターシャはお前の身体を器に選び、お前の魂を侵食し、乗っとる際になぜか、お前の魂を侵食しきれなかった。
だから、お前の身体の中にはお前自身の魂とナスターシャの魂の2つが存在しているのだ。ナスターシャの人格が表に出た時に世界の人々の魂をお前は吸っていたのだ。それに対応する為に、ソフィアはお前の中のナスターシャの魂だけを封印したという訳だ。
お前の今の頭痛……。それは人格封印の術式が解けようとしている証拠! 恐らく、これまで、両親の死や過酷な運命を背負う心労が重なり、トドメに愛するエリーナの死によってお前の精神が極度に弱った影響で封印の術式が解けかかっているのだ」
 メーデイアがアンナを指差して応える。

 ユウキがアンナを助けるように口を挟む。
「お前の話は嘘だ! 俺はルナのことを元の世界セインツから飛ばされてきたばかりの頃からずっと知っているが、一度も人格が変わるような事はなかった!」

「なるほど……! お前は異世界の住人だったのか!
異世界の住人、成瀬なるせユウキよ! それでは逆に問おう! ルナマリアが何歳の頃にお前達は出逢ったのだ?」
「俺とルナが7歳の頃、約14年前だ!」

 その瞬間、何かに気づいたようにアリシアがユウキを見つめる。
 それに気づいたユウキがアリシアに尋ねる。
「なっ……、なんだよアリシア?」

 メーデイアがニヤリと微笑んで呟いた。
「アリシア、お前はもう気づいたようだな……! そう、悪魔の子の噂が突然消えたのは約14年前! ソフィアはその時期に世界中の人々の記憶からルナマリアが悪魔の子である記憶を消した。その後、ナスターシャの人格を封印し、そして、その異変に気付いて私が使者を使い、ナスターシャの魂の気配を探って探しに来ることを恐れたソフィアは、異世界時空転送魔法を使い、幼いルナマリアを元の世界セインツに飛ばし、愛する我が子を隠したのだ!
1つ疑問が残るとすれば、私でも長年莫大な魔力を貯めて使用可能な究極の魔法、異世界時空転送魔法をなぜ、ソフィアが使えたのかだが、まあ、それは今はどうでも良いこと……。
今、ここで、ナスターシャの魂を解放し、ナスターシャにお前達を抹殺してもらう! ナスターシャの強さは8大災厄ヴォーセミ・ディザスターを超える強さ、お前らが束になっても勝てない……。安心して死ぬがいい!!」

 アンナが更に酷くなった頭痛を押さえながら叫んだ。
「貴方の話が本当だったとしても、私がみんなを殺す訳ないわ! 私は私の人格を失わない!」

「なぁに、ナスターシャの人格を呼び覚ます事は簡単だ。世界中の人々の記憶からお前が悪魔の子であった記憶を戻し、その声をお前に聞かせればいい! ナスターシャが目覚めればお前の意思などで抗えない程、ナスターシャの魂は強大なのだ。
ソフィアの忘却の巫女ぼうきゃくのみこの力は世界単位だからその力を解除するのは、中々、私にも負担がかかるが、その結果、我々の封印が解け、この場でお前らを殺せるなら安いものだ」
 そう言ったメーデイアは、上空に浮かんで何かを唱え始めた。
「世界の記憶を呼び覚ます!」

 アレンが焦ったようにユウキに叫んだ。
「ユウキっ! メーデイアを倒すんだ!!」

 ユウキが間髪入れずに剣を構えて飛びかかった瞬間にメーデイアが呟いた。
「もう、遅い! 
記憶消失化解除魔法ムネモシュメ・リリースメント!!」
 メーデイアが叫んだと同時にメーデイアを中心に帯状に光が広がり、その光は世界中に広がった。
 暫くして夜空を照らす輝きは消え、メーデイアがユウキ達を見て、ニヤリと笑う。

 なぜならユウキを除く、全ての仲間がアンナを見て驚愕の表情を浮かべていたからである。

 アンナが頭を押さえたまま、震えた声で話す。
「み……、みんな? どうしたの? 私を見て怯えたような顔して…………」

 アリシアが驚いた表情のまま、口を開く。
「そ……、そんな! ルナマリアが本当に悪魔の子だったなんて! なんで、こんな大事な事を忘れていたの!?」

 アリシア以外のユウキとディアナを除く仲間たちもアンナの正体に驚き、警戒するように後ろに一歩下がった。

 その光景に心を痛めたアンナは更に頭痛が酷くなり、頭を押さえる。
「あぁああー!!」

 ディアナがすぐに身体を心配する様に背中に手を当てる。
「ルナ様! しっかり!!」

 ユウキもアンナの元に駆け寄り、声をかける。
「ルナ! あいつの言いなりになるな! お前ならそのナスターシャって奴にも負けねぇ! 今までだって、大丈夫だったんだ!!」

 ユウキの声に落ち着きを取り戻し、少し頭痛が治って、顔を上げ、汗を流しながらもユウキに笑顔を見せるアンナ。
 それを見てユウキも微笑んで応えた。
「よし! それでこそお前だ!!」

 しかし次の瞬間、アンナの頭の中にナスターシャの力の影響で世界中のアンナに対する声が聞こえ始める。


「赤毛のあの女が悪魔の子だったのか!」
「化け物だ!」
「怖い! 気持ち悪い!」
「なんで、まだ生きているんだ!」
「死んでほしい」
「この世界からいなくなれ」
「嫌だ! 死にたくない!」
「世界を騙して生きていたのか!」
「卑怯な女だ!」
「怪物だ」
「殺される」
「くたばってくれ」
「世界のゴミのくせに!」
「………………」
「…………」
「……」

 世界中、数十億人の負の感情を一斉に聞いてしまったアンナは、精神を壊され、頭を押さえて叫んだ。
「いやぁああ~~~~!!」
 その瞬間、アンナから発せられた衝撃波でユウキとディアナは後方に吹き飛ばされ、アンナの身体を黒い霧のようなものが覆い始めた。

「アンナっ!!」
 ユウキが思わず真名を叫ぶ。

 黒い霧が晴れ、アンナが姿を見せ始める。
 先程まで膝をついて頭を押さえていたアンナは、霧が完全に晴れると、何事も無かったかのようにその場を立ち上がっていて、全身の服の至る所が薄黒く染め上げられていた。
 黒いアンナは瞳をゆっくり開け、ユウキを見つめる。

「アンナ……?」
 ユウキがアンナの真名を呼ぶと、一瞬で黒いアンナはユウキの目の前に移動し、ユウキの首の後ろに腕を回し、額がつきそうな位置で囁くように話しかけた。
「あぁ……。私の愛しのノエル。久しぶりに会えて嬉しいわぁ。これからはいつも一緒よ」

「あっ、アンナ!?」
 ユウキが顔を赤くして黒いアンナを引き離そうとした瞬間、黒いアンナがユウキの唇を奪う。


 それを見ていたフィオナが顔を真っ赤にして、少し怒るように黒いアンナに叫んだ。
「ルナマリアっ!?」

 黒いアンナはフィオナに見せつけるように舌を絡ませてユウキにキスをする。

「ルナ様!?」
 ディアナが黒いアンナに向かって叫ぶと、ユウキの唇を離した。
 全ての力が抜けたようにその場に倒れるユウキ。

「!!!!?」
 アレン達がユウキの異常な倒れ方を見て驚く。
「ルナマリアっ! 貴方、ユウキお兄ちゃんに何をしたの?」
 フィオナがユウキに駆け寄り、怒るように黒いアンナを睨みつけて話した。

「生気を吸ったのよ……。ノエルがこれから私のする事に抵抗した場合、私が殺しちゃうかもしれないから、死なない程度にね。
魂の弱い人間の生気は恐怖の感情で支配した時点で世界中のどこにいても吸い取る事が出来るけど、貴方たちのように魂が強い人間の生気は直接口づけしなければ吸い取る事が出来ないからね」
 黒いアンナが指を舐めるような仕草をしながら話した。

「ルナマリア……、貴方、何をしているか分かっているの?」
 フィオナがユウキに回復魔法をかけた後、アンナを再び睨んで話した。

「ルナマリアぁ? 私の名前はナスターシャ。
悪魔の子ナスターシャよ。本当は気付いているんでしょう、フィオナ? ルナマリアの人格は、もう完全に消えたことは」
 ナスターシャが微笑みながら話した。
 ナスターシャが横に手をかざし、魔法で細剣を創り出す。

「フィオナ様! そいつから離れてください!!」
 アレンが焦るように叫んだ瞬間、ナスターシャがアレンの視界から消え、アレン、フィオナ、アリシアの3人を一瞬で斬り捨てた。

「あはははは!! いいぞ、我が娘ナスターシャよ! その黒髪の男と獣人族の女も殺してしまえ!!」
 メーデイアが笑いながら叫ぶ。

 メーデイアの方を向いてナスターシャが微笑みながら話す。
「嫌です、お母様」
「!!? なっ……なんだと? なぜ私の命令を拒否する!!」
「ノエルは私の運命の人……。ディアナは私が小さい頃、悪魔の子だと知っていても遊んでくれた大切な人……。それ以外の人間は全てどうでもいいけど、ノエルとディアナだけはいくらお母様の命令でも傷付ける事なんてしたくないですわ」
「その男が運命の男……? その男に何をしてもらったというのだ?」
「それは、私とノエルのひ・み・つ♡
……そんなに睨まないでよ、お母様。今からお母様達にかけられた封印を解いてあげるから」
 ナスターシャがそう応えるとメーデイアの目の前まで一瞬で移動する。

「……まあ、いいだろう。全く、この時を本当に待ちわびたぞ」
 メーデイアがため息を吐いて、両手を広げる。

「ナスターシャ! やめて! 取り返しがつかなくなる!!」
 ディアナが悲痛な表情を浮かべて叫んだ。

 ディアナの方を振り返り、申し訳なさそうにナスターシャが口を開く。
「ディアナごめんね……。お母様の命令は基本的に絶対。ディアナを殺さないだけでも本当はあり得ない事なんだよ?」
 そう話したナスターシャは、細剣を構えて呪文を唱えた後、メーデイアの胸に向けて細剣を突き刺した。

 ドスっ!!

 ナスターシャの細剣の剣先がメーデイアの胸に減り込み、その部分が黒く淀み始める。
 ナスターシャは次に細剣をゆっくり引き抜き始めるとメーデイアの身体から左翼をつけたもう1人の黒髪の女性が引きずり出されるように飛び出した。
 右翼をつけたメーデイアの身体はその場に倒れる。
 それを見て微笑んだナスターシャが、引きずり出された女性に声をかける。
「ようやくアンジェラの身体から出られたね、お母様……」

 左翼をつけた本物のメーデイアが眼を開け、口を開く。
「ああ、本当に煩わしい身体だった……。
しかし、これで私の封印も解けた!! 今は先ほどの戦闘で深く身体が傷ついたせいで奴らに手が出せないが、暫くすれば本来の力を出せるようになるだろう……」

 ナスターシャがメーデイアの身体を見つめた後、話した。
「ん~、傷は魔法とかですぐに治せると思うけど、封印の期間が長かったからね……。多分、本来の力が戻るのは、2~3年後かな」

 メーデイアが自身の身体を確かめるように見つめて応えた。
「2~3年後……。結局、アンジェラが先読みした約束の日やくそくのひが私たちの力が戻る日となりそうだな。
死ぬほど憎い奴だが、その力は認めねばなるまい」
 メーデイアが先程、自身が入っていた身体の本来の持ち主、アンジェラを見つめた。

 ナスターシャが今度は細剣を空に向かって掲げ、話した。
「さあて、今度は戦神達の封印を解かなくちゃね。みんな~、出ておいで~」
 ナスターシャが呪文を唱えると、細剣の剣先から空に向けて光の柱が放たれ、空に大きな黒い塊ができ、そこから数匹の獣が出てくる。
 炎に包まれた巨大な鳥、黒い巨大な龍、歪な形をしたの巨大な蛇が出現し、黒い龍はベルヴェルクの上空に、歪な形の蛇はオリヴィアの側に移動した。

 メーデイアがニヤリと笑って口を開いた。
「ベルヴェルクが使役している黒神竜ニーズヘッグ!
オリヴィアの生み出した伝説の蛇ヨルムンガンド!
燃える不死鳥フェニックスはアテナ……奴らの呼び名ではエリーナか、奴に私が用意した戦神だったが、奴は私達を愚かにも裏切った。
ナスターシャ、お前がフェニックスを使役するのだ」

「はーい、お母様。
……ところで、お母様、フェンリルがいません。何かあったのでしょうか?」
 ナスターシャが尋ねる。

「フェンリルは、獣人族の一部の一族が神器を使って身体に封印しているのだ。
元々、フェンリルは闇の彼方やみのかなたに隠していたのだが、このショロトルがまだ普通の獣人族の頃に封印を解いて、自分を馬鹿にしてきた者を抹殺する為、フェンリルをその身に宿そうとしたのだ。
フェンリルを宿す儀式は失敗に終わったが、ショロトルのその封印を解いた知識と、自分を馬鹿にしてきた者を何がなんでも殺して見返すという情熱が気に入った。私は奴に力を分け与えて、8大災厄ヴォーセミ・ディザスターの1人に加えてやったのだ。
それ以降、闇の彼方やみのかなたから解き放たれたフェンリルを定期的に封印する為に、獣人族の武族と呼ばれる一族が身を投げ打ってきたというわけだ」
 メーデイアがショロトルを見て話した。

「それじゃあ、その獣人族を探し出して、身体の中から出してあげないといけないわけかぁ、面倒だなぁ」
 ナスターシャが頭をポリポリかいて応えた。

「メーデイア! 今の話は本当か!? ショロトルが一番最初に封印を解いた、隠族の獣人族なのか!?」
 ディアナの側まで駆けつけていたフレイヤが肩を押さえながら叫んだ。

「貴様、生きていたのか……。まあ、いい。
冥土の土産に教えてやろう。今さっき私が話した事は全て真実。このショロトルこそ、闇の彼方やみのかなたに封印されていたフェンリルを解き放った張本人だ」
 メーデイアが真剣な表情で応えた。

「あいつが……! あいつのせいで武族の者は長い間、虐げられ、宿す者ヴァイスによる多くの犠牲者が増え、大長老様も命をおとしたというのか……!!」
 フレイヤが怒りの表情でショロトルを睨んだ。

「そうか……! 貴様、ショロトルと同じ村の出の獣人族だな! これは面白い! お前達の村の武族の一族を陥れた張本人と対面するとはな。さぞショロトルのことが憎かろう。
だが、残念だったな。ナスターシャが覚醒した時点でお前達の勝ちは消えた。貴様ら武族の獣人族は一生ショロトルに復讐することが出来ずに人生を終えるのだ!」
 メーデイアが笑いながら話した。

「ふざけるなっ!!」
 フレイヤが我慢できずにメーデイアに飛びかかる。

「ナスターシャ……」
 メーデイアが呟いた次の瞬間、ナスターシャがフレイヤを一瞬で斬り伏せる。

「フレイヤっ! ……なんてことをするのナスターシャ!」
 ディアナが悲痛な表情で叫んだ。

 フレイヤを斬り伏せたナスターシャが、何か引っかかるような表情をして倒れているフレイヤを振り返る。
「あれ……? お母様、この獣人族の中からフェンリルの気配がするわ」

「!!!? なにっ? まさか……、そうか! お前が現在の宿す者ヴァイスだったのか! なんて運がいいんだ私は!! 半分諦めていたフェンリルの解放が今日、この場で叶うとはな! やはり、地上に降り立ったのは正解だったようだ」
 メーデイアが笑いながら話した。

「じゃっ、そういう事だから、やっちゃうね~」
 ナスターシャが倒れて動けなくなったフレイヤの背中を細剣で突き刺し、白銀のフェンリルを引きずり出した。

「あれれ? この子、魂が薄れてる……。もしかして分裂した後に封印されたのかな?」
 ナスターシャが白銀のフェンリルを見つめて話した。

「!!? 本当かナスターシャ。
……確か、フェンリルは番いの命つがいのいのちだったな……。光の神レナが私の勢力に対抗する為に作り出していた光の番いの命つがいのいのちを真似して私が創り出した戦神だ。本来は白銀のフェンリルの方が戦い、万が一の時の為に、黒いフェンリルが次元の狭間に隠れているのだが、封印される際に追い詰められて黒いフェンリルも姿を見せたのかもしれんな……。信じられんが、その時、両方のフェンリルは倒されて、白銀のフェンリルはこのフレイヤが、黒いフェンリルを別の獣人族が封印したのかもしれん……」
 メーデイアが唇を噛むようにして話した。

「えぇ~~! 結局、その獣人族も探さないといけないの~」
 ナスターシャが面倒臭そうに話した。

 メーデイアとナスターシャの会話を聞いていたフレイヤが、緊張した表情に変わる。
 それを見逃さなかったナスターシャが倒れているフレイヤの髪を掴んで顔をあげさせて話した。
「あら? まさか貴方、もう片方のフェンリルを封印した奴を知ってるんじゃないの?」

「……例え知っていたとしてもお前らなんかに教えるものか!」
 フレイヤがナスターシャを睨んで応えた。

「ふぅ~ん、やっぱり、知ってはいるんだ。
それだけ分かれば十分。私が調べるからさ」
 ナスターシャはそう言うと、フレイヤの眼を見つめて呟いた。
「マインドダイブ!」

 フレイヤはナスターシャが自分の心の中にするりと入り込む感覚を感じた。その感覚はすぐに戻り、目の前のナスターシャが微笑んで口を開く。
「これはびっくり! まさかディアナが貴方の実の妹で、幼い頃にフェンリルを封印する器になってたなんてね……」
 
「!!!!?」
 フレイヤとディアナが同時に驚き、ディアナがフレイヤの顔を見つめる。
 細剣を握りしめてディアナに向かい始めたナスターシャを見て、フレイヤが叫んだ。
「頼む! 妹にはなにもしないでくれ! お願いだ」

 ディアナが驚きながら話した。
「どう言う事なんだ……、フレイヤ。私がお前の実の妹……? それに……、私の身体も封印の器だったなんて、そんな事……」

 ディアナの前に移動したナスターシャが耳元まで顔を近づけて話した。
「ディアナは、フレイヤが小さい頃に行き別れた実の妹。三カ国会談の時に行き別れる前に持ってた槍を見てフレイヤはその事に気づいたんだよ」

 ディアナは三カ国会談の時のフレイヤの表情や、フィオナ城でフレイヤが突然、ディアナの槍について尋ねてきた時のことを思い出していた。

「思い当たる節があるみたいね……。小さい頃、ディアナがフェンリルを封印した時の影響で次元の狭間に飲み込まれてそれを助けられなかった事をフレイヤはずっと後悔していた。フレイヤがディアナに出逢ってからずっと側を離れなかったのは、小さい頃に救えなかった貴方を今度こそ側で守ると決めたから……。
でも、フレイヤは今度もディアナを助けられない」
 ナスターシャがフレイヤに微笑を浮かべながら、見せつけるようにディアナの胸を細剣で刺した。

「うわぁああ~!!」
 怒りの表情で涙を零して叫ぶフレイヤ。

 ナスターシャが黒いフェンリルを引き抜くとディアナは何もなかったようにフレイヤを見つめた。
 フレイヤが驚いた表情でディアナを見つめる。

「あはははは! だから私がディアナを殺すわけないでしょう? 冗談よ。私はフレイヤ、貴方の悲しむ顔が見たかっただけ……」
 冷笑を浮かべてナスターシャがフレイヤを見つめた。

 両手を広げてメーデイアが口を開く。
「これで全ての8大災厄ヴォーセミ・ディザスターが揃った! 後は憎きアンジェラを始末するだけ! ナスターシャ、私にはもう少しも力が残っていない。今、この場でお前がアンジェラを殺すのだ。気を失っている今が最大の好機だ!」

「わかったわ、お母様。今すぐに殺してあげる」
 ナスターシャはそう応えると細剣構えて、アンジェラの心臓を狙って突いた。

 次の瞬間、ディアナがアンジェラの身体を抱き抱えてユウキの側に移動する。

「!!? ……もう、ディアナ。その身体で無理しないで。どちらにしろ、その人を殺す事は確定事項なの。早く、こっちに渡して」
 ナスターシャがため息を吐いて話した。

「ナスターシャ様! いえ……、ルナ様! 目を覚ましてください! エリーナ姉様を殺したそいつの言いなりにならないで!!」
 ディアナが必死な表情で叫んだ。

 ナスターシャがため息吐いて応えた。
「だから、ルナマリアの心は私の中で消えちゃったわよ……。2度と表に出れないように心の深淵まで落としてあげたもの」

 最後の力を振り絞るようにユウキが叫ぶ。
「アンナ! そんな奴に負けんな!! そんなお前を見てエリーナがどう思う? お前ら3姉妹はどんな敵にも負けねぇ最強の姉妹なんだろうが!!」

「だから、ルナマリアは……」
 ナスターシャが呆れた表情で応えようとした瞬間、異変が起きる。

 ドクンっ……!!

「あぁああ……!! くそっ! ルナマリアめ! まだ心の深淵に沈んでいなかったのか!! なぜ!?」
 ナスターシャが頭を押さえて苦しみだす。

「どうしたのだ、ナスターシャ!?」
 メーデイアが驚くように尋ねる。

 ナスターシャの身体中から、エリーナが亡くなった際に舞っていた光の粒が再び舞い始める。
 それを見て、ディアナが涙を零して叫ぶ。
「エリーナ姉様……!!」

「メーデイア、ナスターシャ! エリーナのルナに対する愛を舐めんな!! あいつは死んでもなお、お前らの手からルナを守れるんだよ!!」
 ユウキがそう叫んだ瞬間、ナスターシャの身体が輝き出し光に包まれた。
 光が収まると、アンナの姿に戻り、眼を開けてアンナが空に向かって細剣を振る。

「なっ!? 何をするつもりだ、貴様!!」
 ナスターシャの支配からアンナが戻った事を悟り、メーデイアが慌てて叫んだ。

 アンナが上空に黒い塊を作り、戦神達を吸い込んでいく。
「もう一度、貴方達を封印する!! ナスターシャが本来の力を解放した今、私にもそれくらいの事は出来る……!!」
 戦神達を完全に黒い塊に吸い込み、封印に成功するアンナ。
 アンナは次にユウキ達の方を振り返り、ユウキ達に向かって手をかざし、詠唱を始めた。

「何してんだ、アンナ! 敵はメーデイア達だろ?」
 ユウキが驚くように叫ぶ。

「戦神達はもう一度封印したけど、一度、門を開いたからすぐにまた出てきてしまう……。それに、今はエリーナのお陰でこの身体の支配を取り戻せたけど、そう長くは保たない。私はすぐに悪魔の子、ナスターシャになってしまう……。だから、ユウキ達をこの場から安全な場所に飛ばす! お願い、ユウキ、ディアナ! 生き延びて必ず戦神達を倒して!! そして、約束の日やくそくのひに完全な力を取り戻したメーデイア達もユウキ達で倒すの!!」

「何言ってやがる……!! お前が何度ナスターシャになっても俺がお前に戻してやる!! だから馬鹿な真似はやめろ!!」
 ユウキが叫んで止めようとするが、アンナは両手を下げる事はせず、ユウキ達の足元に巨大な魔法陣を作る。

 アンナが涙を零してユウキに呟いた。
「ユウキ……私からの最後のお願い……。私は……、貴方が倒して……」

 アンナの涙を浮かべた笑顔を見て、ユウキは叫んだ。
「アンナぁああ~~!!」

 バシュンっ!!

 ユウキ達がその場から消失する。


 暫くして、メーデイアが口を開いた。
「よくもやってくれたな……先読みの巫女さきよみのみこルナマリア!」

「メーデイア、引きなさい。今の私なら貴方達を殺す事は容易い。今、それをしないのは、貴方達を倒す際に力を使う事でより早くナスターシャの心に支配されてしまうから。そうなってしまえば、すぐにでも、戦神達が解き放たれて、世界に大きな被害を及ぼすから……。
つまり、今ここで私と貴方達が争うのはどちらにも損しかないって事。だから、今は引いてちょうだい」

 少しの沈黙の後、メーデイアが口を開いた。
「……良かろう。貴様の最後の提案に乗ってやる。どちらにしろ、先程、貴様が言ったように戦神達は順次、次元の狭間から出てくる。約束の日やくそくのひまでの間、人間どもを苦しめる事が出来る。
貴様もすぐにナスターシャの支配に落ちるだろう。良かったのか? 最期は愛する者の目の前で消えたかっただろう?」

 それを聞いたアンナが顔を伏せ、少ししてから顔を上げて応えた。
「愛する人の側に最期までいるよりも、愛する人に私が悪魔の子になる最期の光景を見られる方が嫌だもの……」

 それを聞いたメーデイアは、暫くの間、アンナを見つめた後、何も言わずにアンナに背を向け叫んだ。
下級時空間転移魔法ゲート!!」
 メーデイアは風魔法で倒れていた8大災厄ヴォーセミ・ディザスターを全てゲート内に集め、アンナの方を振り返って叫んだ。
「さらばだ、ルナマリアよ!」

 バシュンっ!!

 メーデイアがアンナの前から消える。
 1人取り残されたアンナは壊れたルナマリア城に向け歩き出した。


 ルナマリア城跡地に着いたアンナは瓦礫の山を掻き分け、地下への階段を発見する。
「エリーナの記憶にあった、お母様が隠していた地下道……、ここなら私の発見も遅れるはず」
 そう呟いたアンナは地下への階段を降り始めた。

 アンナは地下道の最奥の部屋にたどり着く。
 そして、暫くユウキやディアナとの思い出を思い出した後、涙を零して呟いた。
「ありがとう、ユウキ……、ディアナ……。
とても幸せだった……」
 そう呟いたアンナは自身の足元に氷の禁呪魔法を放ち、自分自身を氷漬けにしていく。
「これで……、ナスターシャに意識を乗っ取られても暫く時間を稼げる……。あとは……ユウキ達がなんとかしてくる……」

 バキバキバキ……!

 アンナの全身を巨大な氷が覆い、アンナは動かなくなった。
 氷の中で最後にアンナが心の中で呟いた。


(あとは任せたよ、ユウキ……、みんな………………)
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