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第6章
ユウキ VS リグル①
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ついにユウキとリグルの決闘の日が来た。
決戦の場は王都サンペクルトでアリシア城の次に大きな建物である中央闘技場で行われる事となっており、最大収容人数1万人の観客席が満員になるほどの盛り上がりを見せていた。
ユウキは戦士控え室で案内の女性から声をかけられて立ち上がり、控え室から闘技場までの長い通路を歩いていた。
ふと見ると、数十メートル先に7~10歳程度の金髪の女の子が立っているのが見えた。
ユウキは不思議に思った。何故なら、この通路は闘技場へ向かう戦士しか通れない決まりになっていて、ましてや子供が絶対入れないように警備を厳しく行っていたからだ。
(控え室からは誰も出入りしていない……。まさか闘技場の方から来たのか……?)
ユウキが少女に近づき、横目に通り過ぎようとした瞬間にそれは起こった。
ヒィーーーーーーーン!!
異世界時空転送時や、巫女の神技発動時の耳鳴りが聞こえ、ユウキの時間が止まる。
ユウキは身動きが取れないまま、闘技場の方から聞こえる歓声を耳にし、今、現状で聴覚だけが正常に働いている事に気付いた。
それと同時に横に立っている金髪の少女が呟くように口を開いた。
「嵐が来るよ……! 急いで!
これから先の選択を間違えると……、もうやり直せなくなる。
だから……、彼女の事をちゃんと見つけてあげて……」
少女が話し終えると同時に時間の感覚が戻り、少女の方を振り返るユウキ。しかし、そこには誰も立っていなかった。
ユウキは通路の窓から見える外の天気の状況を確認したが、夜空には満月がハッキリ見える程、雲1つない星空で、これから嵐が来るようには微塵にも感じられなかった。
ユウキは冷や汗を流し、暫くその場を動けず立っていたが、今までより大きな歓声を聞いて正気を取り戻した後、闘技場の方をゆっくり振り返り、迷いを振り切るように、その場を走り去った。
長い通路を抜け、星空が見える闘技場まで辿り着いたユウキは、先に闘技場中央で待ち構えていたリグルを眺めた。
ユウキに背を向けていたリグルが、ユウキの登場とともに大きくなった歓声に気づいて、ユウキの方をゆっくり振り返り、鋭い眼光でユウキを見つめた。そこで初めて2人の視線が合い、2人同時に闘気を高めた。
「!!!?」
「!!!?」
両者同様に驚く。
(これが、リグルさんの闘気か!
総量はアレンの方が上だが、闘気の洗練された流れはリグルさんの方が上だ!! あれなら頭で考えなくても瞬時に思うようにスキル発動が可能だろう……。本当にとんでもない人だ!!)
ユウキはアレンより闘気コントロールの優れたリグルの闘気を見て感動していた。
(これが闘気コントロールを初めて約2年の男のものだと言うのか!! 王の盾のミアやワクールと遜色ないレベルまで成長している!!
それだけではない! 身体つきや身に纏うオーラが初めて彼の戦う姿を見た時と明らかに違う。
これが現状のユウキ君の力か!)
リグルは微笑んでユウキの成長に驚いた。
少ししてアナウンスが入る。
「皆さま! 大変長らくお待たせしました!
ただ今より、王国騎士団団長 リグル対
王国騎士団10傑1位 成瀬ユウキの勝負を行います!!
王国騎士団団長リグルは、皆様もご承知の通り、3年前の団長就任以降、一度も試合で負けた事がなく、剣術において、あのアレン・アルバートに並ぶと呼ばれる実力者です。
対して、成瀬ユウキは、王国騎士団見習いとして入隊後、約半年で正式な王国騎士団に編入され、この2年であの王国騎士団10傑を全て倒し、団長への挑戦権を手に入れたアレン・アンバート以来の逸材です!
ルールは本来の木剣のみの打撃を相手に10回当てるポイント制を取り止め、相手が負けを認めるか、気絶するまでどんな攻撃も有効とする、バーリトゥードを採用しています。心行くまでお楽しみ下さい!!」
アナウンスが流れ終えると、2人同時に腰に差していた木剣を抜いて構えた。と同時に審判席から水色スライムがユウキとリグルの間に飛び出し、瞬時に少女の姿に変身した。
「やあ! ユウキ、緊張してるかい?」
少女に変身したミアが尋ねた。
「今日の審判はミアがしてくれるのか! よろしくな!!」
ユウキが笑顔で応えた。
ユウキの状態を見て、少し驚いた表情に変わり、ミアが口を開いた。
「ちぇっ! 緊張してたら、少しからかって緊張をほぐしてあげようと思ってたんだけどな……。
……どうやら、ユウキには不要のようだね」
「ミアちゃん、どうやらユウキ君は私達が想像していた以上に準備が出来ているようだ……」
リグルが不敵の笑みで話した。
「ええ、今日はあっさりリグルさんに負けちゃうと思ってましたけど、少し面白くなりそうですね」
ミアもユウキを見て微笑んで応えた。
ユウキとリグルの頭上に魔法により表示されていた数字が10を切った時、会場中がカウントダウンを叫び始めた。
「「10……! 9……! 8……! 7……! 6……! 5……! 4……! 3……! 2……! 1……」」
ドンッ!!
闘技場の四隅から火柱が天高く上がり、同時に魔法障壁が闘技場を覆った。
リグルはユウキの性格上、大事な場面ほど虚をつくような攻撃を好む事を理解していた。
リグルはユウキがカウトダウンと同時に木剣に闘気を集めていた事に気付き、開始の合図と同時にユウキが闘気を飛ばす闘飛剣か、接近して上段からの切り込みを予想していた。
しかし、開始の合図と同時に動いたユウキの行動にリグルと審判のミア、客席で観戦していたアレン、アリシア、アリス、リリス、クシャナ全ての人間が驚くことになる。
ユウキは闘飛剣を放つでもなく、接近して攻撃を行うでもなく、木剣そのものに闘気を纏わせて、木剣そのものをリグルに投げつけた。
予想外のユウキの攻撃に一瞬固まるリグルだったが、すぐに冷静になった。
(愚かな! 試合開始と同時に戦闘において重要な武器を自分で簡単に手放すとは!)
そう考えたリグルはすぐにまた驚く事になる。
飛んでくる木剣と同時に素早い動きで距離を詰め始めているユウキが視界に入った。
リグルはユウキがすぐに木剣を回収出来ないように後方に木剣を弾き、距離を詰めてきたユウキに振り下ろしで攻撃を行おうとした。
しかし、リグルが木剣を弾いた瞬間、ユウキの足場が爆発したように爆ぜ、一瞬でリグルとユウキの距離が縮まる。
リグルの振り下ろしの手をユウキが左手で止め、ユウキはすぐに右手に闘気を込めて、リグルの腹部を殴り飛ばした。
「!!!!?」
開始数秒の両者の攻防のレベルの高さと、王国騎士団団長就任後、試合では殆ど攻撃を受けた事がないリグルが、1人の青年に吹き飛ばされた姿を見て、会場は驚き、歓声が上がった。
ドォオオオ!!
リグルはすぐに立ち上がり、ユウキの姿を確認した。
ユウキはすでに木剣を回収していて、追撃を加えようとしたが、リグルが予想よりも早く立ち上がった為、追撃の足を止めた。
両者同時に冷や汗が出る。
(ユウキ君、君はなんて子だ!!
私が試合開始直後の攻撃を看破する事すら考慮して、木剣を投げ、それを囮にし、単純に近づいて攻撃するのではなく、私が木剣を弾いた瞬間に"脚に溜めていた闘気を爆発させ移動するスキル=瞬足"を使用し、私への攻撃を成功させた!
瞬足自体、他の10傑との試合では見せていなかった。つまりここ数日で新たに習得したという事だ。…………アレンやミアちゃんが何度も驚く訳だ)
(やっぱり、リグルさんは10傑と比べても桁が違うな……! 闘気を込めた攻撃を完璧にみぞおちに入れたと思ったのに、あの一瞬で闘気を腹部に集中させて防御した。更に攻撃の瞬間、後方に飛ぶ事で俺の攻撃の威力を半減させるなんて……。
闘気コントールは勿論、状況判断はアレン並みだな。
あとはミアが言ってたアレンを超える剣術スキルがどんなものなのか……)
2人の攻防を見て、アリスが話す。
「すごーい! ユウキさん、リグルさんと戦えてるよ!!」
それを聞いて、アレンが話す。
「まあ、今のユウキならあれくらいやるだろうな……。問題はこれからだ」
アレンの言葉に反応するアリシア。
「アレン、どういうこと?」
「リグルさんはとりあえず様子見で戦うつもりだったみたいだけど、ユウキの予想以上の成長を感じて、ここからは本気で戦うみたいだ。リグルさんの目つきが変わった」
それを聞いたクシャナが口を開く。
「あいつの活躍もここまでということですね」
クシャナの台詞に反応するリリス。
「わからないわよ、クシャナちゃん。
今のユウキさんの基礎体力はアレンが王の剣になった時と遜色ないレベルまで向上してるし、闘気コントロールレベルもかなり向上してるみたいだから、簡単に終わるとは思えないわ。私は面白くなるんじゃないかと予想してるわ」
アレンが早口になって皆に話した。
「どうやら、動くぞ!」
先に動いたのはリグル。
ユウキは先ほどのリグル同様に逆に驚く事になる。なぜなら、文字通りリグルが先ほどのユウキ同様にいきなり木剣に闘気を纏わせてユウキに投げつけてきたからだ。
ユウキはリグルの事を慎重で綺麗な型にハマった戦い方をするタイプだと分析していた為、絶対に選択しないであろう攻撃パターンに一瞬驚き、身体が硬直する。しかし、これまでアレンとの数え切れない試合を重ねた事により、すぐに冷静さを取り戻し、リグルの次の攻撃を予測した。
(木剣を弾いた後にどんな手段で俺に近づいても対応して反撃してやる! 弾いたリグルさんの木剣は俺が先に回収すれば、かなり優位に立てる!)
リグルが投げた木剣がユウキに近づき、ユウキが木剣を弾こうとした瞬間にそれは起こった。
リグルの投げた木剣はユウキに当たる直前に爆発したように闘気が周囲に拡散し、無数の闘気の玉がユウキに直撃する。
「ぐっ!!?」
リグルの木剣は、闘気が拡散した衝撃でリグルの方に戻り、リグルはそれをキャッチして、すぐに追撃に移行した。
ユウキは吹き飛ばされた瞬間にリグルが追撃の体制に入った事を視界の端に捉え、空中で後方宙返りを行い、体制を整えた。
リグルがユウキにすぐに追いつき、闘気を込めた振り下ろしを行う。
ユウキは無駄の無い動きで半身を横にするようにギリギリで躱し、振り上げでリグルにカウンターを狙った。
しかし、ユウキの攻撃がリグルに直撃したと思われた瞬間にユウキの振り上げはリグルの身体を空を切るように通過し、ヒットした感触がなかった。
「闘気の分身!!?」
ユウキが叫んだ瞬間、後方に瞬足で移動していたリグルが追撃を加えてユウキをまた、吹き飛ばした。
すぐにミアがユウキの元に駆けつけて、心配するようにユウキの状態を確認する。
「大丈夫かい、ユウキ!?」
「ああ……、かなりダメージは負ったがまだやれる! 前みたいに無理して気絶なんてしないから信用してくれ」
ユウキがミアを見つめて話した。
「そう言っても、アレン様との試合では前例があるから心配だよ……。私が本当にやばいと思ったら試合は止めるからね」
ミアが少しきつめの顔を作って話した。
「ああ、わかったよ。……わりぃな、心配かけて……」
そう言うとユウキは、リグルの方に向き直り木剣を構え直した。
(なるほどな……。これがアレンを超える闘気を完璧に操った剣術レベルか!! 木剣に闘気を込めたまま投げつけるだけでもかなり繊細な闘気コントールが必要なのに、それを手元から離した状態で、俺に木剣が当たる直前で闘気を拡散し、更にその拡散の衝撃をコントロールして、木剣を自分の手元に戻すなんてな…………。
更に、その後の追撃で見せた闘気の分身。あんなに瞬時に、しかも高速で動きながらあそこまで綺麗な分身を作れるものなのか!? 努力とか言うレベルを超えてんぞ。マジであのオッさん化け物かよ……!!)
ユウキがリグルに向き直るとすぐにリグルが口を開いた。
「今ので終わらせたかったが、流石ユウキ君だ。
後方に私が回り込んだ事を判断してあの一瞬で背中側に闘気を集中して防御するなんてね……」
それを聞いたユウキは苦笑いを浮かべた。
(単に、目の前のリグルさんが分身だったから、一番危ない背中側に一か八か闘気を集中させただけなんだけどな……。まあ、上手くいったし、ヨシとするか。……真剣勝負なら終わってたな……)
「まだまだ行くぞ、ユウキ君!!」
そう言うとリグルは木剣を地面を擦るように振り上げた。
するとユウキの足元から立ち昇るように闘気の衝撃が走り、ユウキは咄嗟にガードするも、闘気を集中する動作が間に合わず、深いダメージを負う。
「ぐうっ……!!」
リグルは攻撃の手を休めない。
振り上げた木剣を次は振り下ろし、叫んだ。
「はあっ……!!」
ユウキの頭上から闘気の弾丸が数十発降り注ぐ。
ユウキはなんとか全ての弾丸を躱した後、間髪入れずにリグルに突進した。
(ミアとの回避訓練がなければ、今の攻撃は躱せなかった!
遠距離戦では圧倒的にリグルさんが上だ! 近距離で勝負するしかない!!)
ユウキは素早くリグルに接近し、その勢いのまま縦横と数度木剣を振る。
リグルはユウキの全ての太刀筋を見抜き、完璧に捌ききった。
ユウキの連撃の隙をつくように水平に木剣を振るがユウキはこれを屈んで躱す。
(攻撃直後の隙をついても躱すのか……!!)
リグルが驚いたと同時にユウキが木剣を振り上げるが、リグルは後方に飛んで躱し、着地と同時に闘飛剣を放ってユウキを吹き飛ばした。
「ぐあっ!!」
距離が空いた事を確認したリグルが遠距離から更に闘気スキルで追撃を加えようと木剣を振り上げるが、地面から闘気の衝撃が立ち上る前にユウキは前方に移動してリグルの攻撃を躱す。
ユウキはリグルの闘気スキル発動後の隙を逃すまいとすぐに闘飛剣を放つ。
リグルから余裕の表情が消え、ギリギリで木剣に闘気を集中させて防御した。すぐに衝撃波が消え、リグルは前方を確認したが、ユウキの姿が消えていた。リグルは長年の経験から後方からのユウキの殺気を察知し、前方宙返りでユウキの水平切りを躱す。
「ちぃ……!!」
ユウキが舌打ちをして躱したリグルをすぐに追う。
リグルは前方宙返り中に身体を捻ってユウキの方を向き直り、体制を瞬時に整える。
休憩する暇を与えたくないユウキはリグルに先程同様連撃で切り込むが、リグルの驚異的な剣捌きの前に完全に防がれてしまう。
リグルはワザと先程の再現をするように、ユウキの連撃後の隙をついて水平に木剣を振る。
ユウキはこれを屈んで躱して、先程同様にすぐに木剣を振り上げるが、リグルは後方に飛んで躱した。躱す最中にリグルは微笑んだ。
(かかった!! 先程の闘飛剣程度では致命的なダメージを与えられないが、闘気を込めた突きの攻撃なら、殆ど隙を与えず、大ダメージを与えられる!!)
リグルは着地と同時に木剣に闘気を集中させ、鋭い突きを繰り出す。
その瞬間、観客席のアレンが呟いた。
「かかった」
ユウキは、その突きに合わせるように前方に移動しながら、リグルの突きを木剣の腹で滑らせるように攻撃のポイントをズラして、そのままカウンターの振り下ろしを行い、リグルの肩に完璧にヒットさせた。
「!!!!!!?」
アレン以外の観客や審判のミアも信じられないという表情で驚く。
この試合始めて、リグルは片膝をつくように崩れた。
決戦の場は王都サンペクルトでアリシア城の次に大きな建物である中央闘技場で行われる事となっており、最大収容人数1万人の観客席が満員になるほどの盛り上がりを見せていた。
ユウキは戦士控え室で案内の女性から声をかけられて立ち上がり、控え室から闘技場までの長い通路を歩いていた。
ふと見ると、数十メートル先に7~10歳程度の金髪の女の子が立っているのが見えた。
ユウキは不思議に思った。何故なら、この通路は闘技場へ向かう戦士しか通れない決まりになっていて、ましてや子供が絶対入れないように警備を厳しく行っていたからだ。
(控え室からは誰も出入りしていない……。まさか闘技場の方から来たのか……?)
ユウキが少女に近づき、横目に通り過ぎようとした瞬間にそれは起こった。
ヒィーーーーーーーン!!
異世界時空転送時や、巫女の神技発動時の耳鳴りが聞こえ、ユウキの時間が止まる。
ユウキは身動きが取れないまま、闘技場の方から聞こえる歓声を耳にし、今、現状で聴覚だけが正常に働いている事に気付いた。
それと同時に横に立っている金髪の少女が呟くように口を開いた。
「嵐が来るよ……! 急いで!
これから先の選択を間違えると……、もうやり直せなくなる。
だから……、彼女の事をちゃんと見つけてあげて……」
少女が話し終えると同時に時間の感覚が戻り、少女の方を振り返るユウキ。しかし、そこには誰も立っていなかった。
ユウキは通路の窓から見える外の天気の状況を確認したが、夜空には満月がハッキリ見える程、雲1つない星空で、これから嵐が来るようには微塵にも感じられなかった。
ユウキは冷や汗を流し、暫くその場を動けず立っていたが、今までより大きな歓声を聞いて正気を取り戻した後、闘技場の方をゆっくり振り返り、迷いを振り切るように、その場を走り去った。
長い通路を抜け、星空が見える闘技場まで辿り着いたユウキは、先に闘技場中央で待ち構えていたリグルを眺めた。
ユウキに背を向けていたリグルが、ユウキの登場とともに大きくなった歓声に気づいて、ユウキの方をゆっくり振り返り、鋭い眼光でユウキを見つめた。そこで初めて2人の視線が合い、2人同時に闘気を高めた。
「!!!?」
「!!!?」
両者同様に驚く。
(これが、リグルさんの闘気か!
総量はアレンの方が上だが、闘気の洗練された流れはリグルさんの方が上だ!! あれなら頭で考えなくても瞬時に思うようにスキル発動が可能だろう……。本当にとんでもない人だ!!)
ユウキはアレンより闘気コントロールの優れたリグルの闘気を見て感動していた。
(これが闘気コントロールを初めて約2年の男のものだと言うのか!! 王の盾のミアやワクールと遜色ないレベルまで成長している!!
それだけではない! 身体つきや身に纏うオーラが初めて彼の戦う姿を見た時と明らかに違う。
これが現状のユウキ君の力か!)
リグルは微笑んでユウキの成長に驚いた。
少ししてアナウンスが入る。
「皆さま! 大変長らくお待たせしました!
ただ今より、王国騎士団団長 リグル対
王国騎士団10傑1位 成瀬ユウキの勝負を行います!!
王国騎士団団長リグルは、皆様もご承知の通り、3年前の団長就任以降、一度も試合で負けた事がなく、剣術において、あのアレン・アルバートに並ぶと呼ばれる実力者です。
対して、成瀬ユウキは、王国騎士団見習いとして入隊後、約半年で正式な王国騎士団に編入され、この2年であの王国騎士団10傑を全て倒し、団長への挑戦権を手に入れたアレン・アンバート以来の逸材です!
ルールは本来の木剣のみの打撃を相手に10回当てるポイント制を取り止め、相手が負けを認めるか、気絶するまでどんな攻撃も有効とする、バーリトゥードを採用しています。心行くまでお楽しみ下さい!!」
アナウンスが流れ終えると、2人同時に腰に差していた木剣を抜いて構えた。と同時に審判席から水色スライムがユウキとリグルの間に飛び出し、瞬時に少女の姿に変身した。
「やあ! ユウキ、緊張してるかい?」
少女に変身したミアが尋ねた。
「今日の審判はミアがしてくれるのか! よろしくな!!」
ユウキが笑顔で応えた。
ユウキの状態を見て、少し驚いた表情に変わり、ミアが口を開いた。
「ちぇっ! 緊張してたら、少しからかって緊張をほぐしてあげようと思ってたんだけどな……。
……どうやら、ユウキには不要のようだね」
「ミアちゃん、どうやらユウキ君は私達が想像していた以上に準備が出来ているようだ……」
リグルが不敵の笑みで話した。
「ええ、今日はあっさりリグルさんに負けちゃうと思ってましたけど、少し面白くなりそうですね」
ミアもユウキを見て微笑んで応えた。
ユウキとリグルの頭上に魔法により表示されていた数字が10を切った時、会場中がカウントダウンを叫び始めた。
「「10……! 9……! 8……! 7……! 6……! 5……! 4……! 3……! 2……! 1……」」
ドンッ!!
闘技場の四隅から火柱が天高く上がり、同時に魔法障壁が闘技場を覆った。
リグルはユウキの性格上、大事な場面ほど虚をつくような攻撃を好む事を理解していた。
リグルはユウキがカウトダウンと同時に木剣に闘気を集めていた事に気付き、開始の合図と同時にユウキが闘気を飛ばす闘飛剣か、接近して上段からの切り込みを予想していた。
しかし、開始の合図と同時に動いたユウキの行動にリグルと審判のミア、客席で観戦していたアレン、アリシア、アリス、リリス、クシャナ全ての人間が驚くことになる。
ユウキは闘飛剣を放つでもなく、接近して攻撃を行うでもなく、木剣そのものに闘気を纏わせて、木剣そのものをリグルに投げつけた。
予想外のユウキの攻撃に一瞬固まるリグルだったが、すぐに冷静になった。
(愚かな! 試合開始と同時に戦闘において重要な武器を自分で簡単に手放すとは!)
そう考えたリグルはすぐにまた驚く事になる。
飛んでくる木剣と同時に素早い動きで距離を詰め始めているユウキが視界に入った。
リグルはユウキがすぐに木剣を回収出来ないように後方に木剣を弾き、距離を詰めてきたユウキに振り下ろしで攻撃を行おうとした。
しかし、リグルが木剣を弾いた瞬間、ユウキの足場が爆発したように爆ぜ、一瞬でリグルとユウキの距離が縮まる。
リグルの振り下ろしの手をユウキが左手で止め、ユウキはすぐに右手に闘気を込めて、リグルの腹部を殴り飛ばした。
「!!!!?」
開始数秒の両者の攻防のレベルの高さと、王国騎士団団長就任後、試合では殆ど攻撃を受けた事がないリグルが、1人の青年に吹き飛ばされた姿を見て、会場は驚き、歓声が上がった。
ドォオオオ!!
リグルはすぐに立ち上がり、ユウキの姿を確認した。
ユウキはすでに木剣を回収していて、追撃を加えようとしたが、リグルが予想よりも早く立ち上がった為、追撃の足を止めた。
両者同時に冷や汗が出る。
(ユウキ君、君はなんて子だ!!
私が試合開始直後の攻撃を看破する事すら考慮して、木剣を投げ、それを囮にし、単純に近づいて攻撃するのではなく、私が木剣を弾いた瞬間に"脚に溜めていた闘気を爆発させ移動するスキル=瞬足"を使用し、私への攻撃を成功させた!
瞬足自体、他の10傑との試合では見せていなかった。つまりここ数日で新たに習得したという事だ。…………アレンやミアちゃんが何度も驚く訳だ)
(やっぱり、リグルさんは10傑と比べても桁が違うな……! 闘気を込めた攻撃を完璧にみぞおちに入れたと思ったのに、あの一瞬で闘気を腹部に集中させて防御した。更に攻撃の瞬間、後方に飛ぶ事で俺の攻撃の威力を半減させるなんて……。
闘気コントールは勿論、状況判断はアレン並みだな。
あとはミアが言ってたアレンを超える剣術スキルがどんなものなのか……)
2人の攻防を見て、アリスが話す。
「すごーい! ユウキさん、リグルさんと戦えてるよ!!」
それを聞いて、アレンが話す。
「まあ、今のユウキならあれくらいやるだろうな……。問題はこれからだ」
アレンの言葉に反応するアリシア。
「アレン、どういうこと?」
「リグルさんはとりあえず様子見で戦うつもりだったみたいだけど、ユウキの予想以上の成長を感じて、ここからは本気で戦うみたいだ。リグルさんの目つきが変わった」
それを聞いたクシャナが口を開く。
「あいつの活躍もここまでということですね」
クシャナの台詞に反応するリリス。
「わからないわよ、クシャナちゃん。
今のユウキさんの基礎体力はアレンが王の剣になった時と遜色ないレベルまで向上してるし、闘気コントロールレベルもかなり向上してるみたいだから、簡単に終わるとは思えないわ。私は面白くなるんじゃないかと予想してるわ」
アレンが早口になって皆に話した。
「どうやら、動くぞ!」
先に動いたのはリグル。
ユウキは先ほどのリグル同様に逆に驚く事になる。なぜなら、文字通りリグルが先ほどのユウキ同様にいきなり木剣に闘気を纏わせてユウキに投げつけてきたからだ。
ユウキはリグルの事を慎重で綺麗な型にハマった戦い方をするタイプだと分析していた為、絶対に選択しないであろう攻撃パターンに一瞬驚き、身体が硬直する。しかし、これまでアレンとの数え切れない試合を重ねた事により、すぐに冷静さを取り戻し、リグルの次の攻撃を予測した。
(木剣を弾いた後にどんな手段で俺に近づいても対応して反撃してやる! 弾いたリグルさんの木剣は俺が先に回収すれば、かなり優位に立てる!)
リグルが投げた木剣がユウキに近づき、ユウキが木剣を弾こうとした瞬間にそれは起こった。
リグルの投げた木剣はユウキに当たる直前に爆発したように闘気が周囲に拡散し、無数の闘気の玉がユウキに直撃する。
「ぐっ!!?」
リグルの木剣は、闘気が拡散した衝撃でリグルの方に戻り、リグルはそれをキャッチして、すぐに追撃に移行した。
ユウキは吹き飛ばされた瞬間にリグルが追撃の体制に入った事を視界の端に捉え、空中で後方宙返りを行い、体制を整えた。
リグルがユウキにすぐに追いつき、闘気を込めた振り下ろしを行う。
ユウキは無駄の無い動きで半身を横にするようにギリギリで躱し、振り上げでリグルにカウンターを狙った。
しかし、ユウキの攻撃がリグルに直撃したと思われた瞬間にユウキの振り上げはリグルの身体を空を切るように通過し、ヒットした感触がなかった。
「闘気の分身!!?」
ユウキが叫んだ瞬間、後方に瞬足で移動していたリグルが追撃を加えてユウキをまた、吹き飛ばした。
すぐにミアがユウキの元に駆けつけて、心配するようにユウキの状態を確認する。
「大丈夫かい、ユウキ!?」
「ああ……、かなりダメージは負ったがまだやれる! 前みたいに無理して気絶なんてしないから信用してくれ」
ユウキがミアを見つめて話した。
「そう言っても、アレン様との試合では前例があるから心配だよ……。私が本当にやばいと思ったら試合は止めるからね」
ミアが少しきつめの顔を作って話した。
「ああ、わかったよ。……わりぃな、心配かけて……」
そう言うとユウキは、リグルの方に向き直り木剣を構え直した。
(なるほどな……。これがアレンを超える闘気を完璧に操った剣術レベルか!! 木剣に闘気を込めたまま投げつけるだけでもかなり繊細な闘気コントールが必要なのに、それを手元から離した状態で、俺に木剣が当たる直前で闘気を拡散し、更にその拡散の衝撃をコントロールして、木剣を自分の手元に戻すなんてな…………。
更に、その後の追撃で見せた闘気の分身。あんなに瞬時に、しかも高速で動きながらあそこまで綺麗な分身を作れるものなのか!? 努力とか言うレベルを超えてんぞ。マジであのオッさん化け物かよ……!!)
ユウキがリグルに向き直るとすぐにリグルが口を開いた。
「今ので終わらせたかったが、流石ユウキ君だ。
後方に私が回り込んだ事を判断してあの一瞬で背中側に闘気を集中して防御するなんてね……」
それを聞いたユウキは苦笑いを浮かべた。
(単に、目の前のリグルさんが分身だったから、一番危ない背中側に一か八か闘気を集中させただけなんだけどな……。まあ、上手くいったし、ヨシとするか。……真剣勝負なら終わってたな……)
「まだまだ行くぞ、ユウキ君!!」
そう言うとリグルは木剣を地面を擦るように振り上げた。
するとユウキの足元から立ち昇るように闘気の衝撃が走り、ユウキは咄嗟にガードするも、闘気を集中する動作が間に合わず、深いダメージを負う。
「ぐうっ……!!」
リグルは攻撃の手を休めない。
振り上げた木剣を次は振り下ろし、叫んだ。
「はあっ……!!」
ユウキの頭上から闘気の弾丸が数十発降り注ぐ。
ユウキはなんとか全ての弾丸を躱した後、間髪入れずにリグルに突進した。
(ミアとの回避訓練がなければ、今の攻撃は躱せなかった!
遠距離戦では圧倒的にリグルさんが上だ! 近距離で勝負するしかない!!)
ユウキは素早くリグルに接近し、その勢いのまま縦横と数度木剣を振る。
リグルはユウキの全ての太刀筋を見抜き、完璧に捌ききった。
ユウキの連撃の隙をつくように水平に木剣を振るがユウキはこれを屈んで躱す。
(攻撃直後の隙をついても躱すのか……!!)
リグルが驚いたと同時にユウキが木剣を振り上げるが、リグルは後方に飛んで躱し、着地と同時に闘飛剣を放ってユウキを吹き飛ばした。
「ぐあっ!!」
距離が空いた事を確認したリグルが遠距離から更に闘気スキルで追撃を加えようと木剣を振り上げるが、地面から闘気の衝撃が立ち上る前にユウキは前方に移動してリグルの攻撃を躱す。
ユウキはリグルの闘気スキル発動後の隙を逃すまいとすぐに闘飛剣を放つ。
リグルから余裕の表情が消え、ギリギリで木剣に闘気を集中させて防御した。すぐに衝撃波が消え、リグルは前方を確認したが、ユウキの姿が消えていた。リグルは長年の経験から後方からのユウキの殺気を察知し、前方宙返りでユウキの水平切りを躱す。
「ちぃ……!!」
ユウキが舌打ちをして躱したリグルをすぐに追う。
リグルは前方宙返り中に身体を捻ってユウキの方を向き直り、体制を瞬時に整える。
休憩する暇を与えたくないユウキはリグルに先程同様連撃で切り込むが、リグルの驚異的な剣捌きの前に完全に防がれてしまう。
リグルはワザと先程の再現をするように、ユウキの連撃後の隙をついて水平に木剣を振る。
ユウキはこれを屈んで躱して、先程同様にすぐに木剣を振り上げるが、リグルは後方に飛んで躱した。躱す最中にリグルは微笑んだ。
(かかった!! 先程の闘飛剣程度では致命的なダメージを与えられないが、闘気を込めた突きの攻撃なら、殆ど隙を与えず、大ダメージを与えられる!!)
リグルは着地と同時に木剣に闘気を集中させ、鋭い突きを繰り出す。
その瞬間、観客席のアレンが呟いた。
「かかった」
ユウキは、その突きに合わせるように前方に移動しながら、リグルの突きを木剣の腹で滑らせるように攻撃のポイントをズラして、そのままカウンターの振り下ろしを行い、リグルの肩に完璧にヒットさせた。
「!!!!!!?」
アレン以外の観客や審判のミアも信じられないという表情で驚く。
この試合始めて、リグルは片膝をつくように崩れた。
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