龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業

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アレクサンドラはお城で養母様とお茶を楽しむ。
これも花嫁修業の一環だと養母様が呼んでくれる。
楽しい特訓。
社交会に出ないのに何が必要なのかと思ったが、旦那様が疲れたときに美味しいお茶を知っていることで淹れてあげれる。と言われたらやる気が上がる。
後お菓子が美味しい。
「!」
「あら。気に入った?アレク。絶対好きだと思ったのよ」
楽しそうに笑う養母様。
大きく頷くが、サンムーンは苦手だろうなぁとお茶を飲む。
「私は嫌い」
最近反抗気味の義妹。
最近は勉強や、礼儀作法などの勉強で忙しく、ストレスが溜まっているんのだろう。
だが本当に苦手な味だったらしい。
砂糖を入れようとしているので止めてミルクを足すよう促す。
こっちが合う。と。
先日養母様に教わったことだが彼女は素直に見ている。
そして一口、口に運び、これは好きとむくれながら飲んでいる。
「この間教えたことを復習していたのね。さすがね」
養母様に褒められて照れる。

そして素直ではないが優しい義妹の頭を撫でれば機嫌が良くなっていく。
今日も髪型が綺麗に整えられているのを褒めれば満面の笑顔。
「ねぇ、アレク兄様。たまに孤児院言っているけど楽しい?」
何度も縦に頷けば、そっかぁと呟く。
子供たちが可愛いと体も使ってアピール。
羨ましそうに呟かれて、養母様が先に釘を刺す。
「貴方行くにはもう少し竜化をコントロールできるようになってからよ」
「わかってるわよ」

竜人族は人と変わらぬ姿ともう一つ、竜になれる竜化という姿がある。
変化の魔法のような物らしいが、小さい頃からどちらでもなれるよう訓練するらしい。
早くて六歳。
遅くて十五歳までには訓練を終えるらしい。
彼女は今十歳。
そろそろ終えてもいいが、反抗期もあって感情に引っ張られてしまうらしい。
第一次成長期は、犬サイズの大きさへ。
第二次成長期で見上げるほどの竜に変化するらしい。
その兆候としては成長痛か、酷いと高熱が出るらしい。

万が一勝手に竜化してしまい、コントロールができないと、竜の力に引っ張られて暴走してしまう。
まだ見たことがないし見たくとも死ぬからやめとけと誰もが止める。
特に王族は力が強いので注意が必要なのだという。
サンムーンの竜化はかっこよく、養母様は美しく気高い。
義妹は養母様に近い雰囲気だが愛らしい。
本人が目指す養母様のようにはまだ先の話だろう。
竜人族の寿命は長く、養母様みたいになるにはまだ幼すぎる。

唐突に今度市場があるのを思い出す。
精霊たちが気に入りお土産を所望することもある市場。
サンムーンとのデートで行きたいと思っていたのだが、仕事が立て込むことが多い。
義妹たちと行くのもいいかと提案してみる。
「今度、一緒、に朝の、マルシェ、行く?」
「いいの!」
嬉しそうに立ち上がり、喋ってくれたと嬉しそうにしている。
こくこくと頷けば、約束と笑ってくれる。
だが養母様は不安げ。
「アレク。ちょっと危険じゃないかしら」
「養母様。ちょっと、だけ」
懇願するように告げれば、仕方がないわねぇと溜息。
「お母様はアレク兄様に弱いんだから」
そう言いながらも嬉しそうにしている。
服はどれにしようか、髪型は、と張り切る。
そして屋台に並ぶお肉の種類を呟いてどれがいいかと計算している。
最近はマナーも叩き込まれているらしいのだが淑女には遠そうな呟き。
「護衛を団長にお願いしないといけないわねぇ」
養母様に自分がすると胸を叩く。
不安そうな養母様だが、お願いしようかしら。と笑う。




お茶会を終えてすぐ義妹と手を繋ぎ、共に騎士団練習場に来る。
義弟が鍛錬中なのに気付き、その相手をサンムーンが行っている。
「あ」
義弟を転がしたかと思うとサンムーンがやってくる。
嬉しそうに抱きしめようとしてくるが、人の目があると抱きつけないと顔を赤らめつつ首を振る。
寂しそうにしながら視線を合わせてくる。
「アレク。どうしました?王女様も」
「こ、んど。マルシェ、に行こうと、思う。一緒に、護衛してくれる人、欲しいなって」
義妹の手を握りながら告げれば、なるほどとサンムーンが頷く。
「な。姉上。ずるい。僕もアレク兄上と行きたい!」
怪我なく、叫びながら走ってくる義弟に、義妹を見る。
彼女の息抜きなので彼女に判断を委ねる。
それに気づいたのか胸を張る。
蛇足だが彼女の胸については成長段階だろう。
ただそれを突っ込める存在は今はいない。

「あんたが私の荷物持ちごえいとしてくるなら許してあげるわよ」

悔しそうな義弟だがわかったとぼやく。
なんだかんだで一緒に遊べると喜んでいる。

「私が行くしかないんですね」
何処か嬉しそうなサンムーン。
彼を見上げれば金の瞳が狙っていたように輝く。
この国ではさほど珍しくない金の瞳と、成長段階で色が抜けたという銀色の髪色。
色が抜けるのは珍しくないがここまで抜けるのは早々無いらしい。

サンムーンが来てくれるならデートだと喜んでしまう。
何時も忙しい人だから、誘うのも申し訳なかった。
ただ、彼一人だけだとそんな雰囲気はないのはわかる。
「一人、だけ、は、危ない」
「わかってる。何人か連れていくよ」

優しく髪の毛にキスをしてくる。
可愛い弟妹たちを危険な目に合わせたくないと微笑む。

後でお出かけ用の書類を用意して、帰ったら精霊たちにも頼んでおこうと準備を整える。

弟妹たちは私達がアレク兄様を守るのよ。と張り切っている。
サンムーンは子供はいいですよねぇと暖かく見つめる。
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