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白蛇
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祓の神は生家に顔を出す。
「ただいまー」
「お帰り」
山神が顔を出す。
「あ、とーさま。何してるの?」
モリヒトが頭を下げているのに気付いてもういいよと声をかける。
「何って、今度会合だからそのときに持っていくものを吟味していたところだ」
モリヒトは、山神の髪の毛を見て首を捻る。
髪の毛は白とも銀とも取れる色。
そういえば今、冬だっけと父を眺める。
「なんだ?」
「いや。冬なんだなーって。父様の髪色が違うから」
「あぁ。お前は影響受けないんだったな」
「いや。祓いで影響受けるものは穢れぐらいだよ。それで俺は基本強いし」
「強くとも万能ではないだろう。己の穢れも一気に払えばお前が危うい。モリヒトに頼るときは頼りなさい」
「はーい」
こらえはのんびり奥から来る。
「山神様。あ、お帰りなさい。モリヒト君、ハライ様」
「ただいまー」
笑顔を向けて、モリヒトも朗らかに笑う。
「ってことは、ちょうどよかったですね」
「どうしたの?」
「おいなりさんを作っておりまして、大量に作ったのでおすそわけにでも出向こうかと」
「いなり?」
こらえは不思議そうな祓の神を見る。
「いなり寿司ですよ。食べたことありませんでしたっけ」
「寿司か。酢飯自体あまり好きじゃないから」
「そうでしたか。でもまぁ、モリヒト君が食べると思いますから持って帰ってください」
「あ、父様。相談があるんだけど。っていうか本題はそっちで」
「ん。じゃあ、部屋に行こう」
山神は部屋へと向かう。
「モリヒト君は、僕といなり寿司作りますか?」
モリヒトは、大きく頷く。
山神はなるほど頷く。
「つまりあまりに外界におりすぎて神力の影響が出ないかということか」
「最近神社が朽ちてるのをよく見るしね。穢れで穢れ過ぎた祟り神とか出てきそう。大神が確認してるとは思うから問題ないとは思うけど。後は人や村に影響を与えすぎてもダメだし」
「神力の名残は祟り神を呼ぶからな。雨神に告白を促すか諦めさせることはできないのか?」
「何度か話ししたんだけどね。断られる前提で、それでも諦めれないから友達でいたいって感じかな」
「ならば、人に堕とすか、無理やり人を嫁として連れてくるかだな」
「父様は人の世界に住みたいって思ったことある?」
「あるぞ。この穢くて痛い体を捨てて人の世で生きたいぐらいにはな。ただそうなるとこらえに出会えなかったからなぁ」
惚気かと突っ込みたくなるのを耐える。
祟り神
信仰を失い、穢れ、消滅もできず生き残った元神のこと。
本来であれば大神が管理している神なのだが稀に取りこぼすことがあるらしい。
一応それの対応もできる知識は祓の神としてはある。
もちろん、他の神でも対処はできるだろうが、殺すしかできない。
その場合は土地の穢に繋がる。
神を鎮め、宥めて、穏やかにことができるのは自分だけである。
だが幸いなことに一度もお願いはされていない。
「そうなったときは僕が対処するのかな」
ぽつりと神力を溜めた己の手を見つめる。
「そういうときは父や先輩の神を呼べ。お前ではまだまだ経験が足りん」
「うん」
珍しく頼りになると眺める。
普段は親同士で仲良く過ごしたり、自慢を披露してくる程度の認識しかない。
「失礼なこと考えたな」
父の瞳に視線を反らす。
「ただいまー」
「お帰り」
山神が顔を出す。
「あ、とーさま。何してるの?」
モリヒトが頭を下げているのに気付いてもういいよと声をかける。
「何って、今度会合だからそのときに持っていくものを吟味していたところだ」
モリヒトは、山神の髪の毛を見て首を捻る。
髪の毛は白とも銀とも取れる色。
そういえば今、冬だっけと父を眺める。
「なんだ?」
「いや。冬なんだなーって。父様の髪色が違うから」
「あぁ。お前は影響受けないんだったな」
「いや。祓いで影響受けるものは穢れぐらいだよ。それで俺は基本強いし」
「強くとも万能ではないだろう。己の穢れも一気に払えばお前が危うい。モリヒトに頼るときは頼りなさい」
「はーい」
こらえはのんびり奥から来る。
「山神様。あ、お帰りなさい。モリヒト君、ハライ様」
「ただいまー」
笑顔を向けて、モリヒトも朗らかに笑う。
「ってことは、ちょうどよかったですね」
「どうしたの?」
「おいなりさんを作っておりまして、大量に作ったのでおすそわけにでも出向こうかと」
「いなり?」
こらえは不思議そうな祓の神を見る。
「いなり寿司ですよ。食べたことありませんでしたっけ」
「寿司か。酢飯自体あまり好きじゃないから」
「そうでしたか。でもまぁ、モリヒト君が食べると思いますから持って帰ってください」
「あ、父様。相談があるんだけど。っていうか本題はそっちで」
「ん。じゃあ、部屋に行こう」
山神は部屋へと向かう。
「モリヒト君は、僕といなり寿司作りますか?」
モリヒトは、大きく頷く。
山神はなるほど頷く。
「つまりあまりに外界におりすぎて神力の影響が出ないかということか」
「最近神社が朽ちてるのをよく見るしね。穢れで穢れ過ぎた祟り神とか出てきそう。大神が確認してるとは思うから問題ないとは思うけど。後は人や村に影響を与えすぎてもダメだし」
「神力の名残は祟り神を呼ぶからな。雨神に告白を促すか諦めさせることはできないのか?」
「何度か話ししたんだけどね。断られる前提で、それでも諦めれないから友達でいたいって感じかな」
「ならば、人に堕とすか、無理やり人を嫁として連れてくるかだな」
「父様は人の世界に住みたいって思ったことある?」
「あるぞ。この穢くて痛い体を捨てて人の世で生きたいぐらいにはな。ただそうなるとこらえに出会えなかったからなぁ」
惚気かと突っ込みたくなるのを耐える。
祟り神
信仰を失い、穢れ、消滅もできず生き残った元神のこと。
本来であれば大神が管理している神なのだが稀に取りこぼすことがあるらしい。
一応それの対応もできる知識は祓の神としてはある。
もちろん、他の神でも対処はできるだろうが、殺すしかできない。
その場合は土地の穢に繋がる。
神を鎮め、宥めて、穏やかにことができるのは自分だけである。
だが幸いなことに一度もお願いはされていない。
「そうなったときは僕が対処するのかな」
ぽつりと神力を溜めた己の手を見つめる。
「そういうときは父や先輩の神を呼べ。お前ではまだまだ経験が足りん」
「うん」
珍しく頼りになると眺める。
普段は親同士で仲良く過ごしたり、自慢を披露してくる程度の認識しかない。
「失礼なこと考えたな」
父の瞳に視線を反らす。
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