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鎮る人

年末

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祓いの神は、モリヒトと実家を訪れる。
「ただいま」
「おかえりなさい」
庭からこらえ・・・が顔を出す。
「らーちゃん。掃き掃除中?」
「えぇ」
作務衣姿に、モリヒトは頭を下げる。
「こんにちわ」
「おかえりなさい。モリヒト君」
「あ、た、ただいま、です」
照れくさそうなモリヒト。
「今日はお泊まりですか?」
庭に招かれ、縁側に座る。

すでに焚き火の用意をしている木霊。
モリヒトは芋を古紙で巻いているのを見て、近づき、木霊に質問を繰り出す。
木霊は少し迷惑そうにしながらも受け答えをする。
「そのつもりだよ。明日はお餅を作るって聞いたからさ」
「そうなんです。最近納屋の整理をしましてあなたが生まれる前。僕が嫁いできた頃に使った臼が出てきまして。せっかくなのでお餅でも作ろうかとなりました。皆も呼んでいますが一番乗りですね」
「今までもらったものしか食べてなかったから。折角だし」
会合などで父がもらってくるか、自身がもらって来るか。

モリヒトが来てからは一切食べていなかった。
「モリヒト。お前、お餅って食べたことあるのか?」
お芋を両手に持って木霊の手伝いをしているモリヒトは首を捻る。
「オモチ、ですか?」
不思議そうな様子に、知らないやつだと理解する。
「明日食べれるってさ」
「なんと言って連れてきたんですか?」

こらえ・・・が不思議そうに聞いてくる。
「実家に遊びに行こうぜ。って。モリヒト、らーちゃんたち好きから、事情も聞かずに二言返事だった」
「モリヒト君の出生の影響もありますが、今度しっかりお話しましょうか。あなたに任せているとなぁなぁで流されて覚えそうですね」
楽でいいのにと少し考えてからその考えを振り払う。
それでは連れてきた頃の二の舞いになってしまう。

それではいけない。

目指すは両親のような夫婦関係なのだから。
「おや。もう来ましたか」


こらえ・・・が呟き、玄関へと向かう。
モリヒトが焚き火を楽しそうに見ているのを、眺める。

そして唐突に紙に模様を書き出す。
炎が揺らめくような美しき模様。
綺麗だと思いつつも自分を見た模様を作って欲しいとも思う。
まぁ、自分を示す模様はこらえ・・・から教わった邪気払いの紋様を蛇で囲ったもの。
なんで蛇かと聞いたら、なんとなくとこらえ・・・には不思議そうに答えられた。

そのうちモリヒトが新しいのを考えてくれないかなと楽しみにしている。

詞の神がその模様を見て引きつった表情をしていた。
詞の神は、どちらかというと蛇が苦手らしい。
子供の頃に色々とあったらしいが。

そんなことを考えていれば詞の神と嫁が来る。
「あ、姉さん」
モリヒトが嬉しそうに笑う。
「リヒト君」
嬉しそうに挨拶を酌み交わす姿は姉弟に見間違えそうになる。

「元気そうだな。祓いの」
「こと兄ちゃん。元気、元気」
「会合ぶりだけど、会合と雰囲気というか礼儀がぜんっぜん違うな」
「だってらーちゃんが会合ではしっかりしなさいって」
実家ぐらいいいじゃないかとふてくされればそうかと乱暴に頭を撫でられる。

ポチが背後から現れ、モリヒトに近づく。
鼻を鳴らす仕草に、モリヒトはポチを見て、変わらずかっこいいと褒め称えている。

「そうそう。明日は森の神も来るらしい」
「兄ちゃんも!やった」
「森の神好きだな」
「うん!こと兄ちゃんと同じぐらい好き」
「ところで山の神は?挨拶しとかないと」
「そういえば。らーちゃん。父様は?」
箒で落ち葉をかき集め始めたこらえ・・・は動きを止める。

「山神様でしたら、今、眷族の方と明日の準備をしております」
「ハライの。今から挨拶行くぞ」
「あ、はーい。ついでにお手伝い。モリヒト家の中にいるからな」
モリヒトは気づいていないのか熱心に焚き火を見ている。


こらえ・・・と詞の神の嫁が後で伝えておきますと言えば二人は中に入っていく。


しばらくして、周囲を見回してから、祓いの神がいないことに驚き、慌てる。
だがすぐにこらえ・・・が声をかけて、どこに居るかを伝えれば安堵して、再び焚き火を見る。
だが戻ってくると同時にモリヒトは祓の神へと急ぎ近寄る。

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