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山神の子

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庭先で木の枝を使って砂に絵を書く。
家の中にいてもいいのだが今日は皆が遊びに来るので外で待つ。
空気の変化に振り返れば海神とその嫁がいる。

声をかけようと近づこうとして、海神はここに気配が。と襖を開ける。
何故か部屋から木片が飛ぶが海神は「見切った!」と避ける。
ドヤ顔に、なので飛びついて押し倒す。
「山の、の子。危ないよ」
海神は呆れたように、叱咤してくるがそれより重要なこと。
「めっ。めっなの。らーちゃんお着替え中だからめっ。なの」
「ご、ごめんなさい」
悪いからと言えば横から抱き上げられる。
「相変わらず山の、の子は元気だな」
森神と顔を合わせて、兄ちゃん!と抱きつく。
「森の兄ちゃんいらっしゃい」
父の友神たちの中で一番大好きな神。
物心付いたときから大好きだと識っているし、誰よりも可愛がってくれる。
「今日は一緒に遊べるの?」
「あぁ。ところで海の。なんで寝てるんだ?」
「いつも通り襖開けたら、子に怒られた」
「海神が悪い」
やれやれと海神の嫁が告げる。
何故何度もやられて懲りないのか。
後で父様に怒られればいいと頬をふくらませる。
「相変わらず山神様のお子はいい子ですね」
海神の嫁に頭を撫でられ、えへへと笑う。
それから出てきたこらえ・・・に飛びつく。
「らーちゃん。僕、めってできたよ。えらい?」
「えぇ。いい子ですね。でも海神様を倒すのはだめですよ。怪我をしてしまいます」
「はーい」
満面の笑顔を返せば微笑んでくれる。

「その怪我って俺含まれてると思う?」
海神の問いに誰も答えない。
「こんにちわー」
元気いっぱいの声。
同時に幼子の声。
「にちわ」
こらえ・・・と玄関へと行けば、川神とその嫁。
そしてドアを締めている森神の嫁。
「あか君。いらっしゃーい」
「あ、みこさまだ!」
満面の笑顔を返して、こんにちわとお互いに挨拶する。

「すまん。出迎え遅くなった」
エプロン姿の山神に、川神は眺めてから、抱き上げていた幼子を下ろす。
「食事を作っていたんですか?」
「いや。薬の調合だ。予備がなくなったんでな。川の、その嫁、森の、の嫁。それと川の、の子もよく来たな」
「川神様の御子様には久しぶりにお会いしますね。前に見たときは赤ん坊だったのに」
顔をこわばらせている姿に、川神の嫁の後ろへと隠れる。
こらえ・・・はその場に座って視線を合わせる。
「みこちゃん。ご挨拶しなきゃ」
川神の嫁が告げれば、一度顔を見てから背後から頭を下げる。
「にちわ」
恐る恐る声を出すため、こらえ・・・は微笑む。
その様子に嬉しそうに顔を赤らめる。
「こんにちわ。ようこそ。美味しいお菓子を色々と作ってありますから楽しんでいってください」
お菓子と聞いて瞳を輝かせて、川神とその嫁を見上げる。
「いい人、です」
「えぇ。いいお方ですよ」
川神が優しく頭を撫でる。
「なぁなぁ。川のとこの子。一緒に遊ぼうよ」
そんな姿に声をかけるが、やっと顔を隠してしまう。
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