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白蛇
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必死におにぎりを握る幼子。
「ぎゅーぎゅー」
木霊とこらえはその様子を眺めながらお弁当の用意を済ませる。
トウジはその横でお茶の用意。
「こらえ君って料理できるんだね」
「姉と父と三人ぐらしでしたから。姉が嫁ぐときに、お父さんは当てにならないからって教えていただきました。でないとまともなもの食べないからって」
「あー。そうなんだ」
「まぁ、忙しいし体調崩すから家ではあまり作りませんでしたね。兄弟子たちが手伝ってくれました」
「お母さんいなかったんだ」
「そうですね。既に鬼籍に入っていました。病気だったとかで」
「そっかぁ。寂しいね」
「えぇ。でも」
出来た!とおにぎりをお弁当箱に押し込む幼子にこらえは手伝う。
「山神に食べてもらう!」
「そう、ですね。そうしてもらいましょうか」
苦笑するこらえにある意味、毒味だとトウジは理解する。
だがそれに対して突っ込むのはやめる。
「こらえ。そろそろ出発するのだが」
「神子様。じゃあ手を洗いましょうか」
「はーい」
手を洗っている間にお弁当を包み、山神に渡す。
「お気をつけて」
「あぁ。行くか」
「んっ」
「足元に注意して行ってらっしゃい」
幼子に声をかけたこらえに、幼子は満面の笑顔。
トウジも水筒とお弁当を森神に渡す。
「気をつけろよ」
「はい。行ってらっしゃいませ」
ポチを含めた三人が出かけてからこらえに聞く。
「あのさ。普通にお弁当に押し込んでたけど止めなくて良かったの?」
「味で死ぬことはないとご本人がおっしゃっていたので、むしろ神子様が作ってくれたことを喜ぶと思います」
「味、大丈夫なのかな」
「大分べっとり塩をつけてましたから塩辛いのでは?」
「うわぁ」
心より無事であることを願う。
二人で話をしてから部屋へと戻る。
「こらえ君は何かすることある?」
「いえ。特には」
「じゃあ、適当に、模様の話でもする?」
「いいですね。そうしましょうか」
職人気質な二人は紙を取り出して話し合う。
山神は森神と幼子とお弁当を食べる。
押し込まれたようなおにぎりを見て幼子を見てから口に運ぶ。
期待したような瞳で見てくる幼子。
じゃりじゃりとした食感に、塩辛さが増す。
「疲れた体には染みるな」
嬉しそうな幼子の頭を山神は撫でる。
「えへへ。オレが作ったんだよ」
えっへんと誇らしげな幼子に山神は微笑む。
もう一つはこらえが作ったのだろう。
好みの塩加減であることに少し安堵する。
「そういえば、そろそろなんの神になりたいか決まったか?」
森神が、おにぎりを食べ終えつつ、次代の神が何かを気にしている。
場合によっては森神にも関わるかもしれないということだろう。
「なんとなく、一番惹かれるのはあるよ」
「なら、大人になるとその知識入ってくる。あまり気負うな」
「うん!」
「性別はどうだ?」
「うーん。できたら男かなぁって。母様みたいな神も惹かれるけど、山神のようなかっこいい姿もいいなぁってこらえさんみたいなお嫁さんもらいたい」
山神が乱暴に頭を撫でてくる。
食べ終わり、帰るかと山神は立ち上がる。
だが伝わってきた殺気に周囲を見回す。
「森の具合が可笑しい。山の。付き合え」
「あぁ。だが」
眠そうな幼子を抱き上げる。
一度帰るべきだと示せば、森神はそうだったと幼子の頭を撫でる。
「ぎゅーぎゅー」
木霊とこらえはその様子を眺めながらお弁当の用意を済ませる。
トウジはその横でお茶の用意。
「こらえ君って料理できるんだね」
「姉と父と三人ぐらしでしたから。姉が嫁ぐときに、お父さんは当てにならないからって教えていただきました。でないとまともなもの食べないからって」
「あー。そうなんだ」
「まぁ、忙しいし体調崩すから家ではあまり作りませんでしたね。兄弟子たちが手伝ってくれました」
「お母さんいなかったんだ」
「そうですね。既に鬼籍に入っていました。病気だったとかで」
「そっかぁ。寂しいね」
「えぇ。でも」
出来た!とおにぎりをお弁当箱に押し込む幼子にこらえは手伝う。
「山神に食べてもらう!」
「そう、ですね。そうしてもらいましょうか」
苦笑するこらえにある意味、毒味だとトウジは理解する。
だがそれに対して突っ込むのはやめる。
「こらえ。そろそろ出発するのだが」
「神子様。じゃあ手を洗いましょうか」
「はーい」
手を洗っている間にお弁当を包み、山神に渡す。
「お気をつけて」
「あぁ。行くか」
「んっ」
「足元に注意して行ってらっしゃい」
幼子に声をかけたこらえに、幼子は満面の笑顔。
トウジも水筒とお弁当を森神に渡す。
「気をつけろよ」
「はい。行ってらっしゃいませ」
ポチを含めた三人が出かけてからこらえに聞く。
「あのさ。普通にお弁当に押し込んでたけど止めなくて良かったの?」
「味で死ぬことはないとご本人がおっしゃっていたので、むしろ神子様が作ってくれたことを喜ぶと思います」
「味、大丈夫なのかな」
「大分べっとり塩をつけてましたから塩辛いのでは?」
「うわぁ」
心より無事であることを願う。
二人で話をしてから部屋へと戻る。
「こらえ君は何かすることある?」
「いえ。特には」
「じゃあ、適当に、模様の話でもする?」
「いいですね。そうしましょうか」
職人気質な二人は紙を取り出して話し合う。
山神は森神と幼子とお弁当を食べる。
押し込まれたようなおにぎりを見て幼子を見てから口に運ぶ。
期待したような瞳で見てくる幼子。
じゃりじゃりとした食感に、塩辛さが増す。
「疲れた体には染みるな」
嬉しそうな幼子の頭を山神は撫でる。
「えへへ。オレが作ったんだよ」
えっへんと誇らしげな幼子に山神は微笑む。
もう一つはこらえが作ったのだろう。
好みの塩加減であることに少し安堵する。
「そういえば、そろそろなんの神になりたいか決まったか?」
森神が、おにぎりを食べ終えつつ、次代の神が何かを気にしている。
場合によっては森神にも関わるかもしれないということだろう。
「なんとなく、一番惹かれるのはあるよ」
「なら、大人になるとその知識入ってくる。あまり気負うな」
「うん!」
「性別はどうだ?」
「うーん。できたら男かなぁって。母様みたいな神も惹かれるけど、山神のようなかっこいい姿もいいなぁってこらえさんみたいなお嫁さんもらいたい」
山神が乱暴に頭を撫でてくる。
食べ終わり、帰るかと山神は立ち上がる。
だが伝わってきた殺気に周囲を見回す。
「森の具合が可笑しい。山の。付き合え」
「あぁ。だが」
眠そうな幼子を抱き上げる。
一度帰るべきだと示せば、森神はそうだったと幼子の頭を撫でる。
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