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交流会
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客間へ来て早々森神が山神を見る。
こらえは山神に誘われ、近づいている。
「とりあえず山の。その嫁」
隣に座るこらえを示す。
「一旦離れろ」
こらえは山神を見てから、木霊の座る場所へと下がる。
「で、木霊。お風呂の湯を持ってこい」
「は、はい」
「あ、木霊君。僕も手伝います」
こらえと木霊が出ていく。
それを見た森神が山神へと視線を戻す。
それからまじまじと顔を見つめ、マフラーを見る。
山神はチャンスと言わんばかりに嫁自慢をする。
「良いだろう。こらえが作ってくれたのだ」
「外せ。邪魔だ」
眼力に負けた山神は大人しく外す。
森神はマフラーの模様に首を捻る。
「何処かで見たような?」
「邪気祓いの模様だそうだ」
「あぁ。ならどっかの書物か。じゃあ脱げ」
思いを馳せると、すぐに怪我を見る。
手袋や服も脱がさせ、傷の具合を眺める。
「ふむ。確かに見た目は変化しているな」
服だけは着直すよう指示を受ける山神。
後ろの三人は世間話中。
嫁の惚気も入っているためそっちがいいとすら思う。
森神が最後だと山神の頬に触れる。
人差し指に少し触れただけの森神だが、その掌全てを黒い膜に包まれ、森神は思わず後ずさりをしながら座り込む。
「森の!」
「どこまでだ!」
川神が叫ぶが森神は叫び返す。
「前は肩口です」
川神は助けようとした体を止めて過去を思い出す。
助けようとして悪化したこともある。
今は少し制御もできてきたが。それでも手を出すのは良くはないだろう。
「何年前だ?」
「山神の前の嫁が来る直前ですので」
「人里で言う百十年前か」
山神が呟くと森神は掌を押さえ込んでいる。
「あいっ変わらずとんでもない暴れ馬だな」
苦しそうに呻く森神。
脂汗に誰もが助けられず、神妙な面持ちで眺める。
だが山神だけは、絵でも見ているように無感情に見下ろす。
「だが、確かに」
「あ、森神様!」
叫び声。
山神が止める暇もなく森神の手に触れるこらえ。
「今手当を」
こらえは懐から取り出した布で手を包もうとして山神に抱き寄せられる。
「こらえ。森のに触れるな」
「しかし、あれは火傷では?早く手当を」
こらえの目には穢れではなく火傷が見えるらしい。
木霊が慌ててお風呂のお湯の入った桶を森神に向ける。
それに手を入れてから森神が告げる。
「これは穢れだ。神力と山神の家のお湯で中和することで祓え、る?」
森神が不思議そうに手を見下ろす。
川神は安堵しながら木霊にタオルを持ってくるよう告げる。
「山神様のお風呂ってそんな効能が」
「大神の神力を溶かしている湯だからな。まぁゆっくりとだが」
こらえは安堵の表情を浮かべる。
「それに事情は話したか?」
森神が手を抜き、綺麗になった手を見る。
今回は早いね。と海神が喜ぶ。
「いや。言いにくくてな」
確かにと森神は戻ってきた木霊からタオルを受け取り手を拭う。
「穢れは素手で触るな。己の穢れが平気であっても、移った穢れまで大丈夫とは限らん」
「あれ?山神様って穢れをお持ちで?」
「そうか。そこからか」
森神は山神からこらえを睨むように見ながら首根っこを掴み、尻餅をつかせると胸倉を掴む。
「森の!己の嫁に何を」
「お前は、何者だ?」
森神は穢れた筈の手を見る。
驚き固まる山神。
「大神の力でも山神の穢れには応急程度にしかならん。今の穢れも、本来もっと時間がかかるものだが、一気に消えた。お前、何をした」
「森の、それは己の嫁だ。苦しんでいる。離せ」
眷属を呼び、応戦する構えを向ける。
「こいつが何者か白状させるが先だ!」
風神が、森神の手を掴み力を込める。
「落ち着け。首絞めてるぞ」
苦しそうに胸倉を掴む手を抑えているこらえ。
「ちっ」
山神に向かって放り投げ、山神は抱きとめる。
「すまない」
咳き込むこらえが無理矢理笑みを浮かべる。
息が整う前に居住まいを正そうとするこらえを山神は支える。
「教えろ」
「僕、は」
「なぁ、森の。その前に事情を教えてやったほうがいいと思うぞ」
風神に、こらえを睨む。
木霊が再び危険を感じ取ったのかこらえとの間に入って両手を広げる。
「こらえ様は何も知りません。教えてくださらないから主様の傷のことすらわかっていません。だから、いじめないでください」
怯えたながらも告げる木霊に森神は舌打ちをするとこらえの前に座る。
こらえは木霊を見て抱き寄せる。
「ありがとうございます。サカシバ」
呟きだが、嫉妬にこらえを奪うように抱き締める。
こらえは山神に誘われ、近づいている。
「とりあえず山の。その嫁」
隣に座るこらえを示す。
「一旦離れろ」
こらえは山神を見てから、木霊の座る場所へと下がる。
「で、木霊。お風呂の湯を持ってこい」
「は、はい」
「あ、木霊君。僕も手伝います」
こらえと木霊が出ていく。
それを見た森神が山神へと視線を戻す。
それからまじまじと顔を見つめ、マフラーを見る。
山神はチャンスと言わんばかりに嫁自慢をする。
「良いだろう。こらえが作ってくれたのだ」
「外せ。邪魔だ」
眼力に負けた山神は大人しく外す。
森神はマフラーの模様に首を捻る。
「何処かで見たような?」
「邪気祓いの模様だそうだ」
「あぁ。ならどっかの書物か。じゃあ脱げ」
思いを馳せると、すぐに怪我を見る。
手袋や服も脱がさせ、傷の具合を眺める。
「ふむ。確かに見た目は変化しているな」
服だけは着直すよう指示を受ける山神。
後ろの三人は世間話中。
嫁の惚気も入っているためそっちがいいとすら思う。
森神が最後だと山神の頬に触れる。
人差し指に少し触れただけの森神だが、その掌全てを黒い膜に包まれ、森神は思わず後ずさりをしながら座り込む。
「森の!」
「どこまでだ!」
川神が叫ぶが森神は叫び返す。
「前は肩口です」
川神は助けようとした体を止めて過去を思い出す。
助けようとして悪化したこともある。
今は少し制御もできてきたが。それでも手を出すのは良くはないだろう。
「何年前だ?」
「山神の前の嫁が来る直前ですので」
「人里で言う百十年前か」
山神が呟くと森神は掌を押さえ込んでいる。
「あいっ変わらずとんでもない暴れ馬だな」
苦しそうに呻く森神。
脂汗に誰もが助けられず、神妙な面持ちで眺める。
だが山神だけは、絵でも見ているように無感情に見下ろす。
「だが、確かに」
「あ、森神様!」
叫び声。
山神が止める暇もなく森神の手に触れるこらえ。
「今手当を」
こらえは懐から取り出した布で手を包もうとして山神に抱き寄せられる。
「こらえ。森のに触れるな」
「しかし、あれは火傷では?早く手当を」
こらえの目には穢れではなく火傷が見えるらしい。
木霊が慌ててお風呂のお湯の入った桶を森神に向ける。
それに手を入れてから森神が告げる。
「これは穢れだ。神力と山神の家のお湯で中和することで祓え、る?」
森神が不思議そうに手を見下ろす。
川神は安堵しながら木霊にタオルを持ってくるよう告げる。
「山神様のお風呂ってそんな効能が」
「大神の神力を溶かしている湯だからな。まぁゆっくりとだが」
こらえは安堵の表情を浮かべる。
「それに事情は話したか?」
森神が手を抜き、綺麗になった手を見る。
今回は早いね。と海神が喜ぶ。
「いや。言いにくくてな」
確かにと森神は戻ってきた木霊からタオルを受け取り手を拭う。
「穢れは素手で触るな。己の穢れが平気であっても、移った穢れまで大丈夫とは限らん」
「あれ?山神様って穢れをお持ちで?」
「そうか。そこからか」
森神は山神からこらえを睨むように見ながら首根っこを掴み、尻餅をつかせると胸倉を掴む。
「森の!己の嫁に何を」
「お前は、何者だ?」
森神は穢れた筈の手を見る。
驚き固まる山神。
「大神の力でも山神の穢れには応急程度にしかならん。今の穢れも、本来もっと時間がかかるものだが、一気に消えた。お前、何をした」
「森の、それは己の嫁だ。苦しんでいる。離せ」
眷属を呼び、応戦する構えを向ける。
「こいつが何者か白状させるが先だ!」
風神が、森神の手を掴み力を込める。
「落ち着け。首絞めてるぞ」
苦しそうに胸倉を掴む手を抑えているこらえ。
「ちっ」
山神に向かって放り投げ、山神は抱きとめる。
「すまない」
咳き込むこらえが無理矢理笑みを浮かべる。
息が整う前に居住まいを正そうとするこらえを山神は支える。
「教えろ」
「僕、は」
「なぁ、森の。その前に事情を教えてやったほうがいいと思うぞ」
風神に、こらえを睨む。
木霊が再び危険を感じ取ったのかこらえとの間に入って両手を広げる。
「こらえ様は何も知りません。教えてくださらないから主様の傷のことすらわかっていません。だから、いじめないでください」
怯えたながらも告げる木霊に森神は舌打ちをするとこらえの前に座る。
こらえは木霊を見て抱き寄せる。
「ありがとうございます。サカシバ」
呟きだが、嫉妬にこらえを奪うように抱き締める。
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