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交流会
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山神は腕の中で動く愛しい嫁に気づいて目を開ける。
神は眠りを必要としない。
目を閉じて眠っているように見えるのは己が土地の具合を見ているからだ。
そして今も意識は人の世にあったがすぐに戻して彼の動きを見守る。
そして昨日も愛し合ったのを思い出す。
相変わらず美しい肌に綺麗な黒い瞳。
求めてくる声と、すがりつく手。
そんな可愛い嫁が起きたのかと思うが心地の良い場所を見つけたのか動かなくなるのでずれた毛布をかけ直す。
我が嫁こらえはとても愛らしい。
人の世では約五年は経過しているはずだ。
だがこの世界ではまだ一年も経っていない。
こらえが来てから多分、半年ぐらいになるのか。
時間の感覚はないので申し訳ないがそのぐらいとしか言えない。
しかし、こらえはその辺をどう思っているのかはわからない。
あまり気にしていないように思うが、いつか聞いてみたい。
朝ごはんの匂いに体を起こす。
「山神様」
甘えるような声に、頭を撫でる。
サラサラの髪の毛は指通りがいい。
「食事の時間だからな。身支度を整えてくる」
そう告げて布団から出る。
しばらく温もりを求めてかこらえが動く。
それから眠り直す。
それを見て昨日は無茶させたかと思う。
毎朝後悔している気もしないでもないが。
求めてくるこらえを見ると壊れそうとか、大切にしないと死ぬのではという思いが半分以上吹き飛ぶのだ。
ただただ愛したいとこらえの愛しさを感じる。
もちろん、負担にならない程度に、だが。
廊下に出て日が出ていない暗闇を見つめる。
こらえは基本明るくなり始める頃から起きるので普通のことかと歩く。
身支度を整えてから台所に行けば木霊がご飯を作っている。
「おはよう。今日は早いな」
「今日はこらえ様と一緒にお弁当を作ろうと思います。確かお出かけなさるとか」
「あぁ。外で散歩をな。今は丁度花見の時期だ」
己の、髪色に気づき、薄い桃色の髪の毛を示す。
山神など、司る土地の色合いが変わる場合、神達も影響を受ける場合がある。
山神や森神は髪色が、木の影響を受けやすい。
開花、新緑、紅葉、そして冬は銀の髪。
流石に木霊の色合いは樹木かと黄土色の目や髪を眺める。
そういえばと肌の色が変わる神も居たのを思い出す。
「そういえば、木霊」
背伸びをして道具を取ろうとするので手伝う。
「お前は何の樹だ?」
「榊です。人里付近に生えております」
「ほう」
それにしては若いと木霊を見ていればこらえがやってくる。
眠そうな瞳はなく嬉しそうに微笑んでくる。
「おはようございます」
「あぁ。おはよう」
夜明けかと思ったがまだ辛うじて光は差し込んでいない。
「今日はお弁当作りを楽しみにしてました」
楽しそうな二人に思わず水を刺す。
「今日は昼ぐらいから雨だ
先日風神が雨雲を連れてきてくれたからな。さっさと見てから帰る予定だぞ」
驚いたまま固まるこらえと木霊。
木霊はそれでも料理を作る手は止まらない。
遠足ではなく、少し散歩のつもりで声をかけた。
折角ならと少し欲が溢れてしまったが後悔はない。
嫁と散歩に行きたいと花を見たいと願った。。
先に立ち直った木霊に睨まれる。
必死に頭を回転させて打開策を考える。
「じゃあ、早めの昼食にして、それでも無理そうなら帰ってから一緒に食べようか。うちの庭を眺めながらもいいと思うのだが」
「そうですね!そうしましょう」
こらえが満面の笑顔で動き出す。
「山神様とお散歩」
嬉しそうなこらえに安堵。
「雨降るってわかってて誘ったんですか?」
「ちょっとそこまでっていう散歩のつもりだったのだがなぁ」
木霊がこっそり聞いてくるのでこっそり返す。
人と神のやり取りって慣れないとこうなりますよと警告されてしまった。
お前まだ若いだろうに。と思うが口にはしない。
木霊は自分を主としているが基本的にこらえの味方である。
だから庇うとしたらこらえを優先することは確かだ。
こればかりはこらえが大人の対応をしてくれることに感謝することにする。
神は眠りを必要としない。
目を閉じて眠っているように見えるのは己が土地の具合を見ているからだ。
そして今も意識は人の世にあったがすぐに戻して彼の動きを見守る。
そして昨日も愛し合ったのを思い出す。
相変わらず美しい肌に綺麗な黒い瞳。
求めてくる声と、すがりつく手。
そんな可愛い嫁が起きたのかと思うが心地の良い場所を見つけたのか動かなくなるのでずれた毛布をかけ直す。
我が嫁こらえはとても愛らしい。
人の世では約五年は経過しているはずだ。
だがこの世界ではまだ一年も経っていない。
こらえが来てから多分、半年ぐらいになるのか。
時間の感覚はないので申し訳ないがそのぐらいとしか言えない。
しかし、こらえはその辺をどう思っているのかはわからない。
あまり気にしていないように思うが、いつか聞いてみたい。
朝ごはんの匂いに体を起こす。
「山神様」
甘えるような声に、頭を撫でる。
サラサラの髪の毛は指通りがいい。
「食事の時間だからな。身支度を整えてくる」
そう告げて布団から出る。
しばらく温もりを求めてかこらえが動く。
それから眠り直す。
それを見て昨日は無茶させたかと思う。
毎朝後悔している気もしないでもないが。
求めてくるこらえを見ると壊れそうとか、大切にしないと死ぬのではという思いが半分以上吹き飛ぶのだ。
ただただ愛したいとこらえの愛しさを感じる。
もちろん、負担にならない程度に、だが。
廊下に出て日が出ていない暗闇を見つめる。
こらえは基本明るくなり始める頃から起きるので普通のことかと歩く。
身支度を整えてから台所に行けば木霊がご飯を作っている。
「おはよう。今日は早いな」
「今日はこらえ様と一緒にお弁当を作ろうと思います。確かお出かけなさるとか」
「あぁ。外で散歩をな。今は丁度花見の時期だ」
己の、髪色に気づき、薄い桃色の髪の毛を示す。
山神など、司る土地の色合いが変わる場合、神達も影響を受ける場合がある。
山神や森神は髪色が、木の影響を受けやすい。
開花、新緑、紅葉、そして冬は銀の髪。
流石に木霊の色合いは樹木かと黄土色の目や髪を眺める。
そういえばと肌の色が変わる神も居たのを思い出す。
「そういえば、木霊」
背伸びをして道具を取ろうとするので手伝う。
「お前は何の樹だ?」
「榊です。人里付近に生えております」
「ほう」
それにしては若いと木霊を見ていればこらえがやってくる。
眠そうな瞳はなく嬉しそうに微笑んでくる。
「おはようございます」
「あぁ。おはよう」
夜明けかと思ったがまだ辛うじて光は差し込んでいない。
「今日はお弁当作りを楽しみにしてました」
楽しそうな二人に思わず水を刺す。
「今日は昼ぐらいから雨だ
先日風神が雨雲を連れてきてくれたからな。さっさと見てから帰る予定だぞ」
驚いたまま固まるこらえと木霊。
木霊はそれでも料理を作る手は止まらない。
遠足ではなく、少し散歩のつもりで声をかけた。
折角ならと少し欲が溢れてしまったが後悔はない。
嫁と散歩に行きたいと花を見たいと願った。。
先に立ち直った木霊に睨まれる。
必死に頭を回転させて打開策を考える。
「じゃあ、早めの昼食にして、それでも無理そうなら帰ってから一緒に食べようか。うちの庭を眺めながらもいいと思うのだが」
「そうですね!そうしましょう」
こらえが満面の笑顔で動き出す。
「山神様とお散歩」
嬉しそうなこらえに安堵。
「雨降るってわかってて誘ったんですか?」
「ちょっとそこまでっていう散歩のつもりだったのだがなぁ」
木霊がこっそり聞いてくるのでこっそり返す。
人と神のやり取りって慣れないとこうなりますよと警告されてしまった。
お前まだ若いだろうに。と思うが口にはしない。
木霊は自分を主としているが基本的にこらえの味方である。
だから庇うとしたらこらえを優先することは確かだ。
こればかりはこらえが大人の対応をしてくれることに感謝することにする。
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