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神と嫁

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初夜を迎えた翌朝。
やはりというかこらえ・・・は熱を出した。
無茶をし過ぎたのも大きいだろう。
二回戦目は流石に辛かっただろうと思うが、それでもやり直して良かったとは思う。
「溜まっていた穢れを一気に引き受けたのもある、か」
「今日松茸ご飯だったのに」
食欲があるのはいい事だと苦笑してしまう。
初日ほど酷くはないからまだ良い方だろう。
もしかしたら穢れよりは本当に無茶させただけかもしれない。
木霊はやれやれと言わんばかりに看病をしている。
お粥と作った薬を飲ませて寝かせる。
「にがい」
「明日良くなったらお作りします」
口直しに摩り下ろした果物を口に含ませる。
美味しいと不機嫌そうにしながらも呟く。
「ごちそうが遠のく」
「腐るものではないのだから、我慢しなさい。そちらのほうが美味しいだろう」
頭を撫でれば、こらえ・・・はふくれっ面ながらも大人しくする。
本当は襖越しのほうが良いだろうが、隣にいるのが心地よい。

こらえ・・・が見つめてくる。
「山神様」
「うん?」
「願いを聞いてもらったあとですが一つ、ワガママいいですか?」
こらえ・・・にしては珍しい。
恐る恐る頭を撫でながら続きを促す。
幾らでも力が及ぶ限り尽力を尽くすだろう。
「この熱が伝染るものじゃなければ、今日から一緒に寝てくださいませんか?移るのならば治ってからでもいいのですが」
熱が出ると心も弱くなると聞いたがそれかと悩む。
一緒に寝る分の最大の原因はこらえ・・・には問題ないのだ。
いや。もしかしたら時間経過で発狂するかもしれない。
それでもその誘いに魅力を感じる。
その上捨てた願いの中にあったことで、叶えたいとも思う。

ただ風邪が治った後も一緒というのは何故だろうと考える。
「たまに眠れなくなることがあるんです!雪が降る日とか、家族のいない時とか、寂しくて。だから、お布団並べて隣にいてほしいです」
「あぁ。夜に起きるのはそういうことか」
だってと顔を赤くしている。
十六の男がそんな願いをするの恥なのだと思っているらしい。
だが可愛さが増す。
「そうだな。こらえ・・・が寝れなくて焚き火に倒れ込むのは困るよな。木霊」
激しく頷く木霊。
なんだかんだで木霊も心底心配していたぐらいだ。
心から嫌がるだろう。
こらえ・・・はだってと呟く。
「それにこらえ・・・は己を見ても発狂しないからな。一緒に寝るぐらい 容易い。接触するだけでも穢れもなくなりやすい。後は見えない場所で発狂するよりはいいかもしれん」
こらえ・・・の顔が明るくなる。
顔を近づける。
「ただ、体が良い日に抱かれるかもしれぬぞ」
耳元で囁かれたこらえ・・・は甲高い声を上げる。
「あっ。そ、それは、覚悟の上です。それに山神様はお優しいです。優しく抱いていただけました」
こらえ・・・は赤くなった耳を押さえて等々布団で顔を覆う。
夜のことを思い出したのか今の耳元の声か、原因は判断がつかないが。
「それは良かった。じゃあ、今度から布団は二枚だな。今後は都合がいい部屋で寝るとしよう」
頬を撫でればこらえ・・・は擽ったそうにする。

「木霊もこれからも頼むぞ」
「はい。承っております」
木霊は嬉しそうに頷く。
「あ、木霊君が昼間一緒に寝てくれたら」
こらえ・・・?嫉妬に狂って激しくしてほしいならやりなさい」
笑顔の山神にこらえ・・・はやっぱりいいです。と諦める。

このままこらえ・・・が発狂しませんようにと心から願いながら恐る恐る頬に触れる。
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