切なさを愛した

林 業

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お墓参り

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当麻はタクマとお墓に手を合わせる。
その後ろにはソウマと高橋がいる。


手を合わせるのを止めていき、帰宅を促す。
「そういえば、タクマの墓参りはいいのか」
「昨日済ませてしまいました」
「そうか」
同じ命日であっても別の墓だと少々困る。
と当麻は思い直す。
次は自分も誘ってくれと言葉を告げる。

「そういえば今度被害者遺族の会をするそうですよ」
「あぁ。連絡きたな」
「裁判も終わってますし、犯人も刑務所です。お互いの現状報告のようなものらしいですね」
「行くのか?」
「あまり遠出したくないので悩み中ですね」
「そうだなぁ」
「そちらは?」
「行く予定でいる」
「せっかくなので行きましょうか」
ずきりと傷が傷んだ気がして体を擦る。
「大丈夫か?」
「えぇ。雨でも降るんですかね」
時々雨が降ると痛む古傷。

「今日はもう予定はないな?」
「えぇ」
「家まで送ろう」
「助かります。あ、そうだ」
思い出したようにソウマと高橋を見る。
「本日お二人はお仕事はありますか?」
「いえ」
「じゃあ、一昨日家の掃除をしていたら物置から発掘した人の一生ゲームというのをやりませんか?」
「いっしょう?」
「あぁ。すごろく」
「多分妻のだと思うんですけどね。せっかくなので」
「やろう」
当麻が即答する。
「いや。それとってうちに行こう。そんで他の暇そうなやつを誘うぞ」
「いえ。そこまで」
「それでうちに泊まれ」
当麻がよしそうしようと半ば強引に車へと急ぐ。


後を追いかけつつ、気づかれたかと内心で申し訳無さとありがたさが浮かぶ。

命日であると自覚すればするほど、二人を助けれなかった悔しさに眠れない。
息が苦しくなる。

忘れたくも、忘れたくはないとも、相反する気持ちに板挟みになる。

何時まで苦しむのかわからない。
心機一転頑張ろうとしているのに進むことができないでいる。

そんな弱音を、同じような傷を抱えている彼に早々話せるはずもなく。
彼ならゆっくりでいいと言ってくれる。
甘えたい気持ちで話したくとも、甘えてはいけないという気持ちが芽生えて相談し辛い。
本当に辛いときは口にするだろうが今はまだその時ではない。


ボードゲームも今年こそ遺品整理しようとして、けれど触れず諦めかけた時に見つけたものだ。


「タクマ。急ぐぞ。時間は有限だ。遊ぶ時間がなくなる」
「はいはい。待ってください」

あえて明るく努めてくれているのか、急がせる当麻に返事を返す。

「親父、車回してくるからゆっくり来てくれよ」
「一番を取ってさすがと、タクマに喜んでもらう」
「嫉妬か!それに子供か!やだやだ」
ソウマは呆れながらも車へと急ぐ。

とりあえず足を止めてタクマが来るのを待ってから共に向かう。
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