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山の麓で肌寒い季節。
雪が降っても可笑しくない。
ただし家の中で無ければ。
モリオンは吹雪く家の中を見て恋人の機嫌が悪いと一目で理解する。
「え、っと。セレスタイト」
せっかくいい肉が捕れたのに、このままでは解体する前に凍ってしまう。
名前を呼べば彼の尖った長い耳が動き、そして振り返ってくる。
透き通るようと表現できるほど美しい金髪碧眼に女性のような整った顔立ち。
だがその目には怒りと憎しみが籠もっており、手に持っていた包丁を片手にこちらを見据える。
それは美人を怒らせると恐いと言うのがわかるほど。
「せ、セレス?」
恐る恐る聞けば彼はゆっくり口を開く。
「浮気?こんなに遅くなって、他所の女囲ってるってこと?」
誤解だと必死に頭を左右に首を振る。
「じゃあ、なんでこんなに遅くなったの?なんで俺が髪の毛切ったの気づかないんだ!」
言われて彼の髪の毛を見る。
だが昨日の夜見たときと今朝見たとき、今見たときと思い出しても全く変わらない。
短髪の綺麗に切りそろえられた髪の毛。
だが切ったと怒っているのなら切ったのだろう。
というかその程度で浮気を疑うのは毎度止めてほしい。
家の中を吹雪かせるのはもっと止めてほしい。
モリオンの鬼人族は寒さに強い種類で、体力もあるが雪掻きはなかなかに重労働なのだ。
そしてお腹が空く。
とりあえず機嫌を直してもらうために言葉を紡ぐ。
「俺が髪の毛切ったの気づかないぐらい綺麗に揃えたってことか。相変わらず美人だったから気づかなかった」
それだけでぴたりと吹雪が止み、口元をわずかながら歪ませつつも告げる。
「気づかなかったのは許さないし、遅くなるなんて聞いてない」
単純などと口にしては翌朝まで機嫌を損ねることは間違いない。
持っていた二羽の兎を示す。
血抜きをして内蔵を取ったもの。
毛皮はこれから剥がして、肉は部位ごとに分ける予定である。
彼は瞳を輝かせて見てくる。
「リオン。凄い。立派なお肉だ」
今日は彼が用意してくれた罠に一匹だけ引っ掛かっていた。
再び同じ仕掛けをするのは苦労したために遅くなった。
もう一匹は何時もの狩りで捕まえれた。
運がいいともっと肉の部位が多い、森猪や、宝石鹿を捕まえれる。
森猪は巨大で、肉が大量。
毛皮もそこそこ使える。
宝石鹿はその角は美しい色合いの宝石で収集家も多い。
貴重な臨時収入である。
とはいえウサギの肉だけでも十分嬉しい。
彼は溜飲が下がったのか告げる。
「早速解体してくる?」
聞かれて頷き、外で肉を部位ごとに分ける。
そして今日使う分だけを残して他は食料保管庫へ、雪と共に放り込む。
もう一つは今日の晩御飯にしたほうが身のためだろう。
彼は氷の精霊に愛されている。
なので吹雪く中で裸でいたところで平気である。
精霊が彼の周囲の吹雪を抑えるから、山の中では吹雪いていることすら気づかないのが現状。
そのため不機嫌になると精霊が過剰反応し、家の中を雪だらけにする。
他人に与える危害を精霊はよくわかっているということだろう。
ただ本人は人族にとってはそれが当たり前と思っている。
絶対人族の見た目ではないが、それでも当たり前らしい。
モリオンも人族は彼しか知らないのでそういうものだと指摘はしたことはない。
雪掻きを終えて、出来上がったご飯を食べる。
美味しいとお肉を頬張るセレスタイトに明日も頑張ろうと気合を入れる。
雪が降っても可笑しくない。
ただし家の中で無ければ。
モリオンは吹雪く家の中を見て恋人の機嫌が悪いと一目で理解する。
「え、っと。セレスタイト」
せっかくいい肉が捕れたのに、このままでは解体する前に凍ってしまう。
名前を呼べば彼の尖った長い耳が動き、そして振り返ってくる。
透き通るようと表現できるほど美しい金髪碧眼に女性のような整った顔立ち。
だがその目には怒りと憎しみが籠もっており、手に持っていた包丁を片手にこちらを見据える。
それは美人を怒らせると恐いと言うのがわかるほど。
「せ、セレス?」
恐る恐る聞けば彼はゆっくり口を開く。
「浮気?こんなに遅くなって、他所の女囲ってるってこと?」
誤解だと必死に頭を左右に首を振る。
「じゃあ、なんでこんなに遅くなったの?なんで俺が髪の毛切ったの気づかないんだ!」
言われて彼の髪の毛を見る。
だが昨日の夜見たときと今朝見たとき、今見たときと思い出しても全く変わらない。
短髪の綺麗に切りそろえられた髪の毛。
だが切ったと怒っているのなら切ったのだろう。
というかその程度で浮気を疑うのは毎度止めてほしい。
家の中を吹雪かせるのはもっと止めてほしい。
モリオンの鬼人族は寒さに強い種類で、体力もあるが雪掻きはなかなかに重労働なのだ。
そしてお腹が空く。
とりあえず機嫌を直してもらうために言葉を紡ぐ。
「俺が髪の毛切ったの気づかないぐらい綺麗に揃えたってことか。相変わらず美人だったから気づかなかった」
それだけでぴたりと吹雪が止み、口元をわずかながら歪ませつつも告げる。
「気づかなかったのは許さないし、遅くなるなんて聞いてない」
単純などと口にしては翌朝まで機嫌を損ねることは間違いない。
持っていた二羽の兎を示す。
血抜きをして内蔵を取ったもの。
毛皮はこれから剥がして、肉は部位ごとに分ける予定である。
彼は瞳を輝かせて見てくる。
「リオン。凄い。立派なお肉だ」
今日は彼が用意してくれた罠に一匹だけ引っ掛かっていた。
再び同じ仕掛けをするのは苦労したために遅くなった。
もう一匹は何時もの狩りで捕まえれた。
運がいいともっと肉の部位が多い、森猪や、宝石鹿を捕まえれる。
森猪は巨大で、肉が大量。
毛皮もそこそこ使える。
宝石鹿はその角は美しい色合いの宝石で収集家も多い。
貴重な臨時収入である。
とはいえウサギの肉だけでも十分嬉しい。
彼は溜飲が下がったのか告げる。
「早速解体してくる?」
聞かれて頷き、外で肉を部位ごとに分ける。
そして今日使う分だけを残して他は食料保管庫へ、雪と共に放り込む。
もう一つは今日の晩御飯にしたほうが身のためだろう。
彼は氷の精霊に愛されている。
なので吹雪く中で裸でいたところで平気である。
精霊が彼の周囲の吹雪を抑えるから、山の中では吹雪いていることすら気づかないのが現状。
そのため不機嫌になると精霊が過剰反応し、家の中を雪だらけにする。
他人に与える危害を精霊はよくわかっているということだろう。
ただ本人は人族にとってはそれが当たり前と思っている。
絶対人族の見た目ではないが、それでも当たり前らしい。
モリオンも人族は彼しか知らないのでそういうものだと指摘はしたことはない。
雪掻きを終えて、出来上がったご飯を食べる。
美味しいとお肉を頬張るセレスタイトに明日も頑張ろうと気合を入れる。
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