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第四章

王都1日目⑫

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【精霊女王ラーレよ。お主は一体何をしに再び姿を現したのだ?】

わたしがウィルにぃとラーレの関係を妄想し、ひとりでにやにやしていると、シロガネがラーレの前にちょこんと座り問いかける。

《ほぇ??エルちゃんに会いに来たのなの》

〔はぁ??既に会ってるじゃん〕

ラーレの答えにペルルがツッコミを入れる。
ウィルにぃ達はそんなやり取りを静かに見守っている。
と言うか、ラーレとわたしは“はじめまして”な気がするんだけど、何処かで会っているんだろうか?

《違うのなの。眠ってるエルちゃんじゃあ無くて、起きてるエルちゃんに会いに来たのなの》

〔んで?今こうして起きているエルに会ったんだし、ラーレの紹介も終わった。もう他に用事は無いよね?早く森に帰りなよ〕

《むぅ…っ。ペルルが意地悪なの。ラーレはエルちゃんと一緒に食事をしながらいっぱいお話をするのなの。だからラーレはパンケーキを所望するのなの!!》

ラーレがどやぁっと胸を張り、パンケーキを所望する。
そんなラーレの態度にイラッとしたのか、シロガネが両前足でラーレの顔を挟み、ラーレのきめ細やかな頬に爪を立てる。

【ラーレよ。再度問うぞ。お主は本当に何をしに来たのだ?答えよ】

《NOぉ~~っ!!刺さってるぅ~っ!!シロガネの爪がラーレに刺さってるのなのぉ~っ!!
ラーレは本当にエルちゃんにお話があって来たのなのぉ~~っ!!》

ぴえぇぇ~んっ!!と泣くラーレに対して、すんっとした表現のシロガネ。
シロガネのぷにぷにな肉球に頬を挟まれるのは羨ましいけど、確かに爪は痛そう…。

【ほぅ??で??その話とはなんだ?今ここで聞いてやろう】

《うぅぅ…っ。その前に爪を離してなの…》

ラーレの懇願にシロガネが飛び出していた爪を肉球に収納する。しかし、未だに顔を挟む肉球を離さず、更に力を込めたのか、ラーレの顔がむぎゅっと潰れる。

【望みどおり爪を離したぞ。さぁ、話すのだ】

《むっきゅぅ~っ…。パンケーキ…パンケーキを食べたら話すのなのぉ~っ!!》

【ほぉ??もう一度爪を立てて欲しいとな?】

《NOぉぉぉ~っ!!やめてぇぇぇ~っ!!違うのなのぉ~~っ!!》

[シロガネ、ストップだよ]

シロガネとラーレのやり取りを見ていて、ラーレが不憫になったわたしは、シロガネにストップをかける。
なんだろう…。精霊女王ラーレってさ、そこはかとなくエアネスト様臭がするんだよね。
トップがアレだとその部下も似るのだろうか?
だからかもしれないけど、ペルルとシロガネの当たりが強い。

【むぅ…っ】

シロガネは渋々といった感じで両手を離す。

[精霊女王ラーレ、パンケーキはわたしと同じやつでもいい?]

《もちろんなのっ!!楽しみなのぉ~っ!!》

ラーレがキラキラと瞳を輝かせ、喜びを表現する。

[ウィルにぃ、勝手に決めちゃったけどいい??]

事後承諾を得る形になっちゃったけど、ウィルにぃにパンケーキを出していいかを確認する。

「ふふふっ。やっぱり僕のエルは優しいね。精霊女王も喜んでいるみたいだし、直にパンケーキを用意させよう。
アンヌルフ、厨房に居るバメイに甘いパンケーキをひとり分追加する様に伝えてくれ。
僕達の分はそろそろ出来ているはずだから、急いで伝えてくれ」

「かしこまりました」

アンヌルフが一礼をし、食堂から退室する。

「さて、パンケーキが届くまでまだ時間があるね。精霊女王ラーレ、その間に少しお話をしましょう。
エルはこちらへおいで」

そう言うとウィルにぃはわたしを膝の上に乗せ横抱きにし、

「エル、さっきは随分と面白おかしい想像をしていたみたいだけど、そんな事はあり得ないからね。僕にはエルシーアだけだよ。そんなエルには少しお仕置きが必要かな?」

と耳元でささやき、わたしの耳をそっと食む。そして、耳を食むついでにペロリと舐められたわたしは、

「ふみゅぅ~~っ!!!!」

と奇声を上げてしまう。

〔ウィルフリード、そこまでだ。それ以上は許さない。それにあの女に話があるんだろう?〕

「はぁ…わかりましたよ」

ペルルの静止に渋々といった感じで舐めていたわたしの耳を離すウィルにぃ。

「兄貴…」

「お兄様…」

「「それはない…」ですわ…」

とドン引きするバルにぃとルーねぇ。

「精霊女王ラーレ様、先程はありがとうございました。おかげで僕もエルシーアもゆっくり休む事ができました。
そして僕もラーレ様に伺います。何の為にわざわざ姿を現したのですか?エルの様子を確認する為だけならば、姿を現さずともよかったはずです。それなのに、あなたは皆の前にわざわざ姿を現した。ラーレ様、あなたの目的は何ですか?」

ウィルにぃは精霊女王ラーレから目を離さず質問をする。
するとラーレは一転、真面目な顔つきになる。

《話があるのは本当なの。起きているエルちゃんと、そして君達にも知っておいて欲しい事があるのなの。だから姿を現したのなの。
エルシーア、バルドリック、ルイーザ、改めまして。わたしはこの世界の全ての精霊を統べる者、精霊女王ラーレなの。ウィルフリードには訳あって先に会っていたのなの。
まず、一個目の話だけど、わたしがエルちゃんに与えた加護がちゃんと馴染んでいるか確認しに来たのなの。そして、加護はちゃんとエルちゃんに馴染んだみたいで安心したのなの》

〔ちよっ…、おまっ…、何を勝手な事してるんだよ!!〕

ラーレの言葉にペルルが噛みつく。
しかし、精霊女王の加護ですか…。いつの間に受けてたんだろうね?全然知らなかったや。
まぁ、ペルルが驚いてるし、精霊女王の気まぐれかな?

【精霊女王よ、何故エルに加護を与えた?そしてこの事はエアネスト様はご存知なのか?】

《何故?なんでそんな事を聞くのなの。
聖神国で新たな邪神が誕生し、そしてこの王都に潜伏しているかも知れない。現にカーラは被害にあったのなの。
邪神を封印しない限り被害は出続けるし、聖神国をどうにかしない限りエルちゃんは狙われ続けるのなの。
そして遠くない未来で、邪神とエルちゃんはぶつかる事になるのなの。
だって、邪神を封印できるのはエアネスト様かエルちゃんだけなの。だけど、エアネスト様は地上の理に干渉できない。先の邪神の封印だって、かなりの無理をしていたのなの。その反動は未だに癒えていないのなの。だから、今、邪神を封印できるのはエルちゃんだけなの。
そんなエルちゃんを護るためには加護はいくつあってもいいはずなの。だからラーレはエルちゃんに加護を与えたのなの。
もちろんエアネスト様もご存知なの》

「「「「は…????」」」」

あぁ~…っ。このぶっ込んで来る感じ、本当にエアネスト様そっくりだわ…。



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