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第三章

サロンにて①

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〈父:フリッツィSide〉



「───うにゃぁぁぁ~~~っ!!!!」

ポスンッ!!!!

「「「「「エルっ!?!?」」」」」

悲鳴と共に現れたエルと、ペルル殿にシロガネ殿。
どうやら転移で戻って来たらしい。
急な事だったのだったのだろう。エミリーの横のソファーに落ちたエルは、くるくると目を回している。
(因みに、ペルル殿とシロガネ殿は、見事シュタッと着地を決めていた。)

「うにゅ~ぅ…っ」

エルが弱々しく起き上がり、ふるふると頭を振る。

「あらぁ、エルちゃん大丈夫かしらん?」

起きあがったエルを受け止め、おでこや首に手を当て、エルの様子を確認するエミリー。

「だいじょうび… にゃい…」

「あらぁ…。エルちゃん。冷たいお茶でもどうかしらん?」

「のみゅ…」

「セバス、今すぐエルに冷たいお茶と、よく冷えたタオルを」

エミリーの視線を受け、わたしが指示を出すと「かしこまりました」と一礼し、サロンから出ていくセバス。
セバスに任せておけば問題はない。

しばらくすると、ワゴンに冷たいお茶と冷やしたタオルを乗せたセバスが戻って来た。
どうやら冷たいお茶は全員分あるらしい。
エルが戻って来た事で、話が長くなると予想しての様だ。助かる。

「エル、こちらへおいで」

エミリーにもたれかかっていたエルを抱き上げ、自分のソファーに座る。
エルを膝に乗せ、お茶を飲ませ、冷えたタオルをおでこに当ててやる。

「ふにゅ~っ…」

おでこに当てたタオルが気持ち良かったらしい。
やっと落ち着いた様だ。

「ねぇ、エルちゃん、裏庭は楽しかったかしら?」

「どっきぃ~っ!!!!」

“裏庭”という言葉を聞いた途端、エルの目がうろうろと動き出し、そわそわと落ち着きがなくなる。
しかしエル…。ベタに「ドキっ」って言ったね。

「エルちゃん?」

妻がにっこり微笑むが、その目は全く笑っていない。

「あびゃびゃびゃびゃ…っ」

物凄くわかりやすく慌てるエル。うちの子、こんなにわかりやすくて大丈夫だろうか?

「エルちゃん、裏庭は楽しかったかしら?」

うぉ…。妻のダメ押しの2回目が怖い…。
我が妻なれど、あの笑顔は怖いのだ。

「ちゃ…ちゃのひかっちゃれすっ!!」

びしっ!!と敬礼をし、答えるエル。

「そう。よかったわ。で?裏庭でどんな遊びをしたのかしら?」

こてんと小首を傾げる妻。その姿は大変愛らしく美しい。
しかし、今のエルには逆効果だろう。

「あう…、あうあうあう…っ」

どこから話していいか迷っているのか、口を開けたり閉じたりパクパクしている。
そしてペルル殿やシロガネ殿にチラチラ視線を送り、助けを求めている。

「あ~。事後報告になって申し訳ないのだが、エルの話を聞いてやってくれ。
エル、インベントリの中から持ってきた物を取り出すのだ。現物を見せた方が話が早い」

しかし、裏庭から持ってきた物とは一体…。
何やらあまりいい予感がしないのは私だけだろうか…?


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