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第三章
裏会議③
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〈父:フリッツィSide〉
「では、話を戻して、邪神教の事を語ろうか」
シロガネ殿の言葉に、サロンの空気が張り詰める。
「さて、諸君らは聖神国の事は知っておるな?」
「ええ。もちろんよん。聖神国は人間主上主義の国よねん。あたくしやバメイの様な者は迫害対象になんわん。
表では人間だけの安泰国家と言われているけど、裏では獣人やエルフなどの種族を迫害し、奴隷として扱ってるわん…」
シロガネ殿の問いかけに、エミリーがギュッと拳を握りしめながら答える。
「そのとおりだ。エアネスト様は地上に住まう、生きとし生けるもの全てを平等に愛し、見守ってくださっている。
それなのに聖神国の愚か共は、エアネスト様の顕現されたお姿が人間の姿だった事から、人族が一番偉いのだと勘違いした」
シロガネ殿がやれやれと言わんばかりにため息をつく。
「次に邪神の事だが、諸君らは邪神の好物は何か知っておるか?」
「邪神の好物…、『怒り』『憎しみ』『悲しみ』といった負の感情でしょうか?」
息子のウィルフリードが、顎に手を当てながら自分の考えを述べる。
「正解だ。そういった負の感情といった点で、ヤツにとっては聖神国は最も過ごしやすい場所だったのであろうな。
ヤツは自分の力と勢力を伸ばす為、聖神国の教会に入り込んだのだ。聖神国の教会内部は、治癒魔法の使える子どもたちを強制的に教会に仕えさせ奴隷化、無料で働かせ、治癒を受ける者からは大金をせしめるといった感じに腐りきっておったからの。赤子の手をひねる様に簡単だっただろうよ」
「でも、どうやって入り込んだんだ?」
バルドリックがシロガネ殿に尋ねる。
「恐れ多くもエアネスト様の御遣いを名乗り、神託と言う名で悪事をそそのかした」
「悪事ってなんだ?」
「不老不死という名の禁術、反魂の術じゃよ。人間は何故か不老不死に憧れがあるようだからの」
「でも、シロガネ様。その…反魂の術とは本当にありえますの?」
自然の摂理に反する禁術。そんな物が本当にあるのかと、ルイーザが尋ねる。
「ある。だが、何を犠牲にすると思う?」
「えっ…?」
シロガネ殿の問に戸惑うルイーザ。
「もしかして…、他人の命…ですか?」
戸惑うルイーザの代わりに答えるウィルフリード。
「そうだ。命を延ばす禁術だからの。他人の命が代償となる。
そして、その代償になるのは何時だって力の無い幼い子ども達だ。
奴らはな、魔力量の多い子どもたちを攫い、その魔力を使い反魂の術を行うんだ…。たったひとりの老いぼれの命を延ばすのに、何人の子どもたちを犠牲にすると思う?10人以上の子どもたちが反魂の術の度に死んで行くんだっ!!」
「そんな…っ!!」
シロガネ殿はギリギリと歯を噛み締め、ルイーザはシロガネ殿の答えに絶句する。
そうだ、あの聖神国は何の役にも立たない、無能な老害の権力者の命を延ばす為だけに、誘拐を繰り返していた。それは自国だけではない、エルフや獣人、魔族や人族の他国までに及んでいた。
幸い我が国は海を挟んで離れている事、我が一族が取り締まっている事もあり、犠牲は出でいない。
「奴らはな、その誘拐の罪を魔族の国に擦り付けた。魔族が食料の代わりに子どもたちを喰らっていると吹聴したのだ。そのせいで、聖神国と魔族の国で戦争が勃発しようとしていた。
戦争が起こってはより多くの命が失われる。事の重大さにエアネスト様は心を痛め、魔王の協力の元、邪神を討伐した…」
「でも、邪神は封印されたのですよね?」
ルイーザが不安げに尋ねる。
「あぁ…、ある女性の命を犠牲にしてな…」
そう語るシロガネ殿の黄金の瞳は悲しみに満ちていた。
「では、話を戻して、邪神教の事を語ろうか」
シロガネ殿の言葉に、サロンの空気が張り詰める。
「さて、諸君らは聖神国の事は知っておるな?」
「ええ。もちろんよん。聖神国は人間主上主義の国よねん。あたくしやバメイの様な者は迫害対象になんわん。
表では人間だけの安泰国家と言われているけど、裏では獣人やエルフなどの種族を迫害し、奴隷として扱ってるわん…」
シロガネ殿の問いかけに、エミリーがギュッと拳を握りしめながら答える。
「そのとおりだ。エアネスト様は地上に住まう、生きとし生けるもの全てを平等に愛し、見守ってくださっている。
それなのに聖神国の愚か共は、エアネスト様の顕現されたお姿が人間の姿だった事から、人族が一番偉いのだと勘違いした」
シロガネ殿がやれやれと言わんばかりにため息をつく。
「次に邪神の事だが、諸君らは邪神の好物は何か知っておるか?」
「邪神の好物…、『怒り』『憎しみ』『悲しみ』といった負の感情でしょうか?」
息子のウィルフリードが、顎に手を当てながら自分の考えを述べる。
「正解だ。そういった負の感情といった点で、ヤツにとっては聖神国は最も過ごしやすい場所だったのであろうな。
ヤツは自分の力と勢力を伸ばす為、聖神国の教会に入り込んだのだ。聖神国の教会内部は、治癒魔法の使える子どもたちを強制的に教会に仕えさせ奴隷化、無料で働かせ、治癒を受ける者からは大金をせしめるといった感じに腐りきっておったからの。赤子の手をひねる様に簡単だっただろうよ」
「でも、どうやって入り込んだんだ?」
バルドリックがシロガネ殿に尋ねる。
「恐れ多くもエアネスト様の御遣いを名乗り、神託と言う名で悪事をそそのかした」
「悪事ってなんだ?」
「不老不死という名の禁術、反魂の術じゃよ。人間は何故か不老不死に憧れがあるようだからの」
「でも、シロガネ様。その…反魂の術とは本当にありえますの?」
自然の摂理に反する禁術。そんな物が本当にあるのかと、ルイーザが尋ねる。
「ある。だが、何を犠牲にすると思う?」
「えっ…?」
シロガネ殿の問に戸惑うルイーザ。
「もしかして…、他人の命…ですか?」
戸惑うルイーザの代わりに答えるウィルフリード。
「そうだ。命を延ばす禁術だからの。他人の命が代償となる。
そして、その代償になるのは何時だって力の無い幼い子ども達だ。
奴らはな、魔力量の多い子どもたちを攫い、その魔力を使い反魂の術を行うんだ…。たったひとりの老いぼれの命を延ばすのに、何人の子どもたちを犠牲にすると思う?10人以上の子どもたちが反魂の術の度に死んで行くんだっ!!」
「そんな…っ!!」
シロガネ殿はギリギリと歯を噛み締め、ルイーザはシロガネ殿の答えに絶句する。
そうだ、あの聖神国は何の役にも立たない、無能な老害の権力者の命を延ばす為だけに、誘拐を繰り返していた。それは自国だけではない、エルフや獣人、魔族や人族の他国までに及んでいた。
幸い我が国は海を挟んで離れている事、我が一族が取り締まっている事もあり、犠牲は出でいない。
「奴らはな、その誘拐の罪を魔族の国に擦り付けた。魔族が食料の代わりに子どもたちを喰らっていると吹聴したのだ。そのせいで、聖神国と魔族の国で戦争が勃発しようとしていた。
戦争が起こってはより多くの命が失われる。事の重大さにエアネスト様は心を痛め、魔王の協力の元、邪神を討伐した…」
「でも、邪神は封印されたのですよね?」
ルイーザが不安げに尋ねる。
「あぁ…、ある女性の命を犠牲にしてな…」
そう語るシロガネ殿の黄金の瞳は悲しみに満ちていた。
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