言えない言葉

Kokonuca.

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言えない言葉

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 父は母と別れた後しばらくして再婚し、子供もいる。 
 大手を振って「息子です」と言えないのは、そんな向こうに遠慮したからで… 
 だからオレと院長の関係を知ってる人間はいない。 

 親しく話しているのがそう見えたのだろう。 

「まぁまず男同士だしね」 

 言われてギクッとなる。 

 嘉納との事を言われた訳でもないのに、やましさからか目が泳いだ。 


 オレは、被害者なんだから負い目に感じる事なんてない筈なのに、共犯的罪悪感があるのはどうしてなんだろうか? 

「……」 

 嘉納に見られながらイった時の事を思い出して背筋にぶるりと震えが走った。 

 ふ…と漏れた息が熱い。 

「やっぱり具合悪いの?」 
「…え、……いや、大丈夫」 

 そう答えて、先程の震えは悪寒だと自分に言い聞かせた。 









 ロッカーに貼り付けられたメモに気付いて取り上げる。 
 堅く丁寧に書かれた文字は嘉納の仏頂面をそのまま現しているようで、ムカついて握り潰す。 

「誰が連絡するか!」 

 痛み止が切れたのか痛み出した腰を擦りつつ病院を後にした。 



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