言えない言葉

Kokonuca.

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言えない言葉

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 篠突く雨が、遣らずの雨になってくれるかと願いながら煙草を飲む。 

 それと同時に、出そうになった言葉も飲み込んだ。 

「…近頃吸い過ぎのように思えますが」 
「…。ストレスが酷くて」 

 そう突っ慳貪に言ってやったが、ネクタイを締め直す嘉納 章(かのう あきら)はどこ吹く風だ。 
 オレ、谷 翔希(たに しょうき)は殊更大袈裟に煙を吐いた。 

「あまり吸わないで頂けるとありがたい」 

 体を心配してくれたのかと思ったが、相変わらずの平淡な声が続く。 

「臭いが移ると困るので」 

 あ…そ。 

 まぁそんな所だよな。 

「分かった」 

 そう言いつつも立て続けに二本目を咥える。 

 嘉納はただ顔をしかめただけでそれ以上は何も言わなかった。 
 情事痕の残る部屋から章が無言で出ていく。軽く入り口で振り返るのは…挨拶のつもりなのかどうなのか。 

 何回見送ってもオレには分からない。 


 幾度も奴に組伏せられても…あいつが何を考えているか分からない。 



 オレとあいつは…つまりはその程度の間柄だ。 



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