197 / 303
おまけ 73
しおりを挟む
73
クラドがいい匂いだと言って体を嗅いでくるのとは比べ物にならない、目で見てわかる汚物を摂取されるなんてことに……
「やめっ やめてっ!」
必死に腕を動かしたせいで皮膚が擦り切れて痛みをもたらしたけれど、そんなことには構ってはいられない。
ただただ、自分の体から出た汚物に手を伸ばされると言うことに嫌悪感が湧いて喚くことしかできなかった。
「っ ぅ 」
白くなるほど力を込めたせいで小さくカタカタと腕が震える。
それでも、この傍らで動かなくなってしまった魔人からは逃げられず、思わず嗚咽が上がりそうになった。
魔人は……オレには触れなかった。
オレには、だ。
代わりに零れ落ちた涙、嫌悪感に吐き出したものを長い舌で舐めとり、さんざんもっと寄越せとわめき散らしてやがて電池が切れた玩具のようにぱたりと動かなくなった。
それはどこか突然寝落ちるようにも思えて、奇妙な感覚に胸をかきむしられる思いがする。
「 っ ふっ」
ぐぐ と力を込めてもう一度拘束している縄から腕を引っこ抜けないかと試し、右手よりも左手の方が少し緩みやすそうなことに気がついた。
とは言え、それもほんの気がする 程度だったけれど、それでも縋らないわけにはいかない。
傍らの魔人は呼吸音さえなくうずくまっているがいつまた起き出すかわからなかったし、その起き出した後もまだオレに触れないでいると言うことを我慢し続けることができるとは思えなかった。
この魔人は、まるで子供のようだから。
そう思ってしまうのは、オレにはヒロがいるからだろう。
欲しいものを欲しいと言って奪い、駄目と叱られて我慢はするも我慢しきれずに目を盗んでは悪さをする。
自分自身も通ってきた道だからわかる。
「 ────っ」
子供の我慢は長くは続かない!
がむしゃらに左手を引っ張り全身で力を込めると、手首や肩の中身がぎしぎしと聞いたこともないような音を立てて軋んだ。それでもこのままここにいた先のことを考えれば、痛いなんてことは言っていられなかった。
ぐっと息を詰めて引っ張った時、わずかに皮膚がずるりと動いた感触がした。
それは痛みだったけれど同時にここから抜け出せるかもしれないって言う希望でもあって、オレはそれに縋って痛みが増すことになんか頓着せずにただただ力を籠め続ける。
逃げ出すことができれば、ほんのわずかでもクラドの下に帰ることができる可能性が増えると信じて!
「 ふぅ っん」
がりがりと皮膚が削れる気配がしたけれどひるまずに力を込める。
一気に引き抜けてしまった時はもんどりうってしまって、あわや魔人に倒れ込むんじゃないかってなっていたけれど、寸でのところで堪えることができた。
クラドがいい匂いだと言って体を嗅いでくるのとは比べ物にならない、目で見てわかる汚物を摂取されるなんてことに……
「やめっ やめてっ!」
必死に腕を動かしたせいで皮膚が擦り切れて痛みをもたらしたけれど、そんなことには構ってはいられない。
ただただ、自分の体から出た汚物に手を伸ばされると言うことに嫌悪感が湧いて喚くことしかできなかった。
「っ ぅ 」
白くなるほど力を込めたせいで小さくカタカタと腕が震える。
それでも、この傍らで動かなくなってしまった魔人からは逃げられず、思わず嗚咽が上がりそうになった。
魔人は……オレには触れなかった。
オレには、だ。
代わりに零れ落ちた涙、嫌悪感に吐き出したものを長い舌で舐めとり、さんざんもっと寄越せとわめき散らしてやがて電池が切れた玩具のようにぱたりと動かなくなった。
それはどこか突然寝落ちるようにも思えて、奇妙な感覚に胸をかきむしられる思いがする。
「 っ ふっ」
ぐぐ と力を込めてもう一度拘束している縄から腕を引っこ抜けないかと試し、右手よりも左手の方が少し緩みやすそうなことに気がついた。
とは言え、それもほんの気がする 程度だったけれど、それでも縋らないわけにはいかない。
傍らの魔人は呼吸音さえなくうずくまっているがいつまた起き出すかわからなかったし、その起き出した後もまだオレに触れないでいると言うことを我慢し続けることができるとは思えなかった。
この魔人は、まるで子供のようだから。
そう思ってしまうのは、オレにはヒロがいるからだろう。
欲しいものを欲しいと言って奪い、駄目と叱られて我慢はするも我慢しきれずに目を盗んでは悪さをする。
自分自身も通ってきた道だからわかる。
「 ────っ」
子供の我慢は長くは続かない!
がむしゃらに左手を引っ張り全身で力を込めると、手首や肩の中身がぎしぎしと聞いたこともないような音を立てて軋んだ。それでもこのままここにいた先のことを考えれば、痛いなんてことは言っていられなかった。
ぐっと息を詰めて引っ張った時、わずかに皮膚がずるりと動いた感触がした。
それは痛みだったけれど同時にここから抜け出せるかもしれないって言う希望でもあって、オレはそれに縋って痛みが増すことになんか頓着せずにただただ力を籠め続ける。
逃げ出すことができれば、ほんのわずかでもクラドの下に帰ることができる可能性が増えると信じて!
「 ふぅ っん」
がりがりと皮膚が削れる気配がしたけれどひるまずに力を込める。
一気に引き抜けてしまった時はもんどりうってしまって、あわや魔人に倒れ込むんじゃないかってなっていたけれど、寸でのところで堪えることができた。
2
お気に入りに追加
477
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
生きることが許されますように
小池 月
BL
☆冒頭は辛いエピソードがありますが、ハピエンです。読んでいただけると嬉しいです。性描写のある話には※マークをつけます☆
〈Ⅰ章 生きることが許されますように〉
高校生の永倉拓真(タクマ)は、父と兄から追いつめられ育っていた。兄による支配に限界を感じ夜の海に飛び込むが、目覚めると獣人の国リリアに流れ着いていた。
リリアでは神の川「天の川」から流れついた神の御使いとして扱われ、第一皇子ルーカスに庇護される。優しさに慣れていないタクマは、ここにいつまでも自分がいていいのか不安が沸き上がる。自分に罰がなくては、という思いに駆られ……。
〈Ⅱ章 王都編〉
リリア王都での生活を始めたルーカスとタクマ。城の青宮殿で一緒に暮らしている。満たされた幸せな日々の中、王都西区への視察中に資材崩壊事故に遭遇。ルーカスが救助に向かう中、タクマに助けを求める熊獣人少年。「神の子」と崇められても助ける力のない自分の無力さに絶望するタクマ。この国に必要なのは「神の子」であり、ただの人間である自分には何の価値もないと思い込み……。
<Ⅲ章 ロンと片耳の神の御使い>
獣人の国リリアに住む大型熊獣人ロンは、幼いころ母と死に別れた。ロンは、母の死に際の望みを叶えるため、「神の子」を連れ去り危険に晒すという事件を起こしていた。そのとき、神の子タクマは落ち込むロンを優しく許した。その優しさに憧れ、タクマの護衛兵士になりたいと夢を持つロン。大きくなりロンは王室護衛隊に入隊するが、希望する神の子の護衛になれず地方勤務に落ち込む日々。
そんなある日、神の子タクマ以来の「神の御使い」が出現する。新たな神の御使いは、小型リス獣人。流れ着いたリス獣人は右獣耳が切られ無残な姿だった。目を覚ましたリス獣人は、自分を「ゴミのミゴです」と名乗り……。
<Ⅳ章 リリアに幸あれ>
神の御使いになったロンは神の子ミーと王都に移り住み、ルーカス殿下、神の子タクマとともに幸せな日々を過ごしていた。そんなある日、天の川から「ルドからの書状」が流れ着いた。内容はミーをルドに返せというもので……。関係が悪化していくリリア国とルド国の運命に巻き込まれて、それぞれの幸せの終着点は??
Ⅰ章本編+Ⅱ章リリア王都編+Ⅲ章ロンと片耳の神の御使い+Ⅳ章リリアに幸あれ
☆獣人皇子×孤独な少年の異世界獣人BL☆
完結しました。これまでに経験がないほど24hポイントを頂きました😊✨
読んでくださり感謝です!励みになりました。
ありがとうございました!
番外Ⅱで『ミーとロンの宝箱探し』を載せていくつもりです。のんびり取り組んでいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる