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人生の先は谷底
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しおりを挟む「 ────10」
やっと二桁になった! と思った途端、「11」と続く。
「12」と続けられて……会場がしんと水を打ったように静まり返った。
それぞれの人が息を吸う音すら聞こえるような中で、二人の数字を告げる言葉だけが掛け合いのように聞こえ続ける。
「17」
「20」
ザワ と人々が騒ぎ出す。
会場すべての人間が二人のやり取りに固唾を飲み……そして男が手を下げた瞬間「あぁ!」と溜息のような声を上げた。
張りつめていた空気が緩んで、客席を縫うように一人の背の高いフードの人物が歩み寄ってくる。
オレが籠に詰められているせいで、視界が地面に近いって言うこともあるんだろうけれど、それを抜きにしてもそのフードの人物は大きく見えた。
肩幅ががっしりとしているのがフードの上からでも見て取れたが、それ以外はすべてフードの下で謎に包まれている。
声からしたら……多分、女。
少しハスキーな感じもしていたから、もしかしたら声の高めの男かもしれなかったけれど、どうせ買われるなら希望として女性に買われたいと思うのが男心だ。
「おめでとうございます」
「ああ」
そう言うとフードの人物は手袋をはめた手で宝石のあしらわれた木札を司会の男に手渡す。
司会はそれを矯めつ眇めつ見つめ、宝石部分をルーペで覗き込んでから小さく頷いて、籠の鎖を持った男に運ぶようにと指示を出した。
ずりずりと引っ張られていく最中に顔が見れないものかとフードの中身を覗き込もうとしてみたが、オレから見れたのはすっきりとした顎のラインだけだった。
とは言え、その柔らかそうな丸みを見て女だなってほっとしたのだけれど。
応接間はこじんまりとしていた。
狭いと言っても過言じゃない。
そこに無理やり応接セットを詰め込んだかのような部屋の造りで、やはり建物はボロボロなのにその応接セットだけは高級感を出そうとしているのかピカピカしていた。
「では、こちらでお支払いになります」
「ああ」
最終的に20……円。
駄菓子屋の商品かなぁ……なんて思いながら、そう言えばオレの前のトカゲは幾らで売れたんだろうかと思考を変える。
鳴き声がちょっとアレだったけど、それでも虹色に見える金色のウロコは綺麗だったし、同じ色の瞳は愛嬌があって可愛かった。
なんでだか意思の疎通もできていたみたいだから、傍にいたら話し相手とかになってくれそうな雰囲気だったと思う。
「それでは、20億ギーになります」
「ああ。今、使い魔に取りに行かせている。さすがに持ち歩く金額ではないからな」
「さようでございますね、ではお茶をお持ちしても?」
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