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第三章 人生やっぱり学びは大事
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しおりを挟む差し出されたのは茶色い円筒形のもので……ふと漂ってきた香りは老人がさせていたものと一緒だ。
ってことは……
「煙草 ですか」
なんて言ったか……無煙煙草? スヌー……ス? そんな感じのものだったと思う。
火を使わずに歯茎に沿わせておいて、唾液を飲み込んで胃でニコチンを吸収するとかなんとか? そんな話を聞いた気がする。
ただオレは喫煙の趣味は持ってなかったから、絶対に欲しいと言うものではなかった。けれど、煙草の話をしていただけにここで断るのもおかしいかと手を伸ばす。
「わっ」
手がすかっと空を切る。
「一つ。条件がある」
「は はい⁉︎」
思わずぴっと姿勢を正した。
そうすると教師に叱られた学生時代を思い起こさせて、いやな気分になってくる。
「条件も聞かんでいいのか?」
「は⁉︎ いや⁉︎ そのはいじゃなくて、さっきのは 」
くつ と老人の喉が音を立てたのを聞き逃さなかった。
やっぱりからかわれているんだ……と、背を向けてやろうとした時に「探すんだ」と声をかけられる。
視線を戻すと我の強い……いや、意志の強そうな黒い双眸がねめつけるように見上げていた。
「マリーン殿下を探してきてくれ」
「 ⁉︎」
思わずさっと眉間に皺が寄った。
「マリーン殿下は今、北との戦いに駆り出されている」
かさついた唇がくちゅりと音を立て、様子を窺うようにわずかに開く。
「北?」
「ははは、北だ。マリーン殿下は北のチオフィラ諸国の平定に向かわれた。もう4年前のことだ」
「……」
今までのマリーン殿下の活躍を聞いていたせいか、そのチオフィラの国々を平定するのに時間がかかりすぎていると思ったのはオレだけだろうか?
マリーン殿下なら馬に乗らずにスキップで戦場に駆けつけて、「あっごめーん! 遅刻遅刻」って言いながら敵を薙ぎ払ってひと月も立たずに終わらせてしまいそうだ。
爺の顔を見るに、オレの想像ほどではないにしてもそれくらいの勢いのはずだと言いたげだった。
「マリーン殿下は優秀な方だ」
「あ、ああ」
「それは誰もが認めるだろう。彼女の行った奇跡とも言えるような技術の普及や教育水準の引き上げ、圧倒的戦力の増強、……素晴らしいだろう?」
また老人の口がくちゅ と鳴るから、オレはそっちの方が気にかかってしまった。
「だがリヒトー陛下はそうは思わない」
「……あ、えと、マリーン殿下の……」
「自分より優れた妹は褒めたたえるべきか?」
尋ねかけられてふむと考え込む。
オレに「もう! お兄ちゃんたら! まーた口の周りにソースつけて……しょうがないなぁ! 拭いてあげるから……ちょっと目、閉じてて。開けちゃダメだからね」とか言ってくれる妹がいたら課金しまくるだろうけど、王様……この場合は皇帝か、その立場の人間なら……
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