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第三章 人生やっぱり学びは大事
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しおりを挟む偉業を成すことができたマリーン殿下なのだから、そこはきちんとカタカナと漢字も普及させておいて欲しかったと思う。
ちょっと大変だろうし、時間はかかるだろうけどさ。
「これならオレも書けそうだ」
苦笑いをしながら『あいうえお』と書いてみせると、ルーは驚いたような顔をしていた。
「記憶があるの?」
「あ……あー……いや、ほら、言葉は手続き記憶って言って記憶喪失じゃなくさない記憶なんだよ!」
うっすらとあったインチキ知識でまくしたてると、ルーは少し考え込むような雰囲気を見せて「お医者様だった?」と問いかけてくる。
ルーの目はちょっとキラッとしていたが、残念ながらその期待には応えてはやれない。
それだけの頭の良さがあったら就職活動で祈られることももっと少なかっただろうし、もっといい大学に行って在学中に起業とかしてもっとうまく世の中を渡って行っていたはずだ。
オレはただの、不器用で鈍感な一般人だ。
「違う違う、なんかちょっと覚えてただけ」
そう言うとルーは悲しそうな顔をしたけれど、オレにはルーの機嫌を取るために嘘を吐くことはできなかった。
念入りに頭に砂をかけて砂色にする。
ルーが食料の配給を受け取りに行っている間に試してみたいことがあった。
「今日はちょっとあっつくなりそうですねぇ」
そう言いながら、畑の縁に腰を下ろしていた年配の男性の隣に座る。
本来ならこの村にいてはいけないオレだから、できるだけ人目を避けて存在をひそめてはいたけれどそれでは現状をどうにもできない。
ルーはこの世界のことをいろいろと教えてくれたけれど、それはあくまでルーからのみの知識でしかない。
卓上の知識ばかりかもしれないのをわからないまま使うことはできなかった。
「あー?」
歯が黄色いのは喫煙か……嗜好品でコーヒーでもあるのか……もしくはワインか。
この男はそれらのどれか、もしくはすべてを嗜める地位にいたと言うことだ。
「こんな日は吸いたくなりますよねぇ」
ふと香ってきた臭いにピンときた。
「は! ここの人間全員が思っているだろうよ」
男の言葉はどこか投げやりで、ここからいつか出ていってやると言う気概もなければよりよい生活をしようとしているようにも見えない。
すべてを諦めている哀愁がこの男の皺に濃い影を落としている。
「ボクじゃ手の出ないようないいものを吸ってたんじゃないですか?」
「そりゃあ……わしを誰だと思っている」
チラと横目にオレを見た瞬間の眼光の鋭さに、世間話でもして情報を引き出せたらと思っていた安易さを殴り飛ばしたくなった。
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