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第二章 人生やっぱり甘くない
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しおりを挟む「すべてではありませんけれど、この世界のことを少しなら教えて差し上げることができると思います」
ルーは木々の間を縫って入る光に眩しそうに眼を細めながら、本当ならこっちから頭を下げて教えてくれと言わなければならないことを教えてくれるのだと言った。
髪から零れた砂が目に入って、思わずごしごしと乱暴に拭う。
そうすると目に入った砂は取れたけれど目の縁がじくじくと痛んで……失敗したな とオレに顔をしかめさせた。
オレの髪は今、埃色だ。
埃色。
オレを連れていくにあたって、ルーはいくつかの条件を出してきた、その一つが黒髪を隠すこと……だった。
染色専用の薬品なんて気の利いたもののないここでは、サラサラの砂を集めて頭からかぶってごまかすしかない。
でもよく乾いた白っぽい細かい砂を髪に絡めていると、よくよく見ない限りはそれっぽい色に見えるのだから不思議だった。
黒髪を隠されたのは、ココが『奴隷村』だったからだ。
聞かされた当初はなんてところに召喚されてしまったんだと思いもしたが、ルーの説明を聞いているオレが想像しているような『奴隷』よりははるかに待遇がいいことが分かった。
まず、衣服は支給される。
とは言えルーが着ていたような貫頭衣と、貫頭衣と同じ素材かもしくは毛皮の端で作られた袋状の靴と言うのもはばかられるような、きんちゃく型の袋だ。
女は胸と胴を紐でくくっていたが、男は腰だけを藁紐でくくる。
寝床は土壁ではあったけれど中にはベッド代わりの藁も薄いが毛布も支給されていて、屋根だけある小屋の中で雑魚寝と言うこともなかった。
『奴隷村』の中に住んでいる奴隷ははっきりと数えてはいなかったけれど中学校の一学年分くらいだろうか?
ひとりひとりを認識するにはちょっと数が多すぎる思える人数だ、よく話す相手もいるだろうけれど一生話をしない相手もいる くらいの人数だ。
だからオレも忍び込むことができたのだけれど……
ルーたちはここで日々、農業と手工芸を行っているのだと言う。
住人たちの年齢はそれぞれで、街中でランダムにクレーンゲームのクレーンで釣り上げてきた くらい多岐にわたった。
年寄りもいればルーよりも少し幼いと思える子供もいる、そしてオレンジの髪もいれば赤髪も緑も、金髪もピンクも……とにかくバラエティに富んでいる。
でも、黒髪の人間を見なかった。
「ルー、黒髪って、珍しいのか」
「うん……少しね。奴隷にはいないかな」
どうして? と尋ねる前に、ルーは畑の収穫をするために踵を返してしまった。
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