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第二章 人生やっぱり甘くない

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 こう言うのはぼそぼそと言うと信じてもらえない率が高いように思う。だからオレはできる限り胸を張って「服は取られた!」とはっきりと告げた。

「あ……追剥……ですか?」

 周りの森って状況と、ルーの服装から考えてみるに現代日本のような暮らしぶりではなさそうだ。
 だからと言ってラノベでよく見る中世ヨーロッパかと言われたらそうとも言えない。

 なぜならルーの着ている服がずた袋を使って作ったような貫頭衣だったからだ。

 そんな世界ならば盗賊もいれば追剥の一人や二人いるだろう。

「そうなんですね……でも。どうしてこんなところで?」
「それはわかりませんっ」
「え⁉︎」
「どうしてだか頭に靄がかかったようになっていて、まったくどうしてこんなところにいるのか思い出せないんです。まるで頭の中を石鹸できれいさっぱり洗い流してしまったかのようなんです」

 はきはきと言葉を挟む間も与えずに一気に言い切ると、ルーは「そうなんですね」と納得していない納得の言葉を返してくれる。

「追剥にあったことは覚えているのにですか?」
「そそそそそそれだけっ強烈な印象だったから……」
 
 おかしな部分をつつかれてびくぅと背筋が伸びた。

「じゃあ、どこにお住まいかも  ?」

 ルーは心底可哀そうなものを見るような目でオレの頭からつま先までじっくりと視線を動かす。

「生まれ……は……その    言うのも恥ずかしくなっちゃうくらいの田舎で……言ってもわからないと思いますし」

 これも王道だろう。
 まぁ田舎に住んでいるって言うのは間違えてないし、嘘を言っているわけじゃない。
 
「そうなんですか?」
「はい……」

 殊勝にしょんぼりとしてみせると、ルーは首を傾げながら「二ホン語を話しているのに?」ときょとんと返してきた。
 「は?」と出そうになった言葉を飲み込んで……恐る恐る「日本語?」と問いかける。

「ええ、共通語の二ホン語。綺麗な発音で使われているので貴族の方かと」
「貴族⁉︎」

 そんなものがあるのか⁉︎ ってことは、やっぱり中世ヨーロッパくらいの文明だって思っていいのかもしれない。
 でもそれよりも何よりも気にかけなきゃいけないのは、ルーが言った「二ホン語」のことだ。

 転移あるあるで普通に言葉が勝手にわかるようになっているのかと思っていたけれど、そう言うわけじゃないことが分かった。

「田舎にはまだ浸透してないところもあるって聞きますから」
「っ⁉︎」 

 思わずぱたんと口に手を当ててはみたが、出た言葉は元に戻らない。

 覆水盆に返らずとはよく言ったものだ。


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