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空白
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しおりを挟む「なかったことに…できるわけない…んっ!!」
ガチンとぶつかり合った歯が鳴り、葉人は勢い良く床へと押し倒される。
「つっ…」
切れたらしい唇から、血の味がじんわりと広がる。
「昨日のことは忘れたくせにか!?」
食い込んでくる司郎の指の痛みにもがきながら見上げると、険しい目でこちらを食い入るように見ていた。
「っ…だって…」
「…本当に…覚えてねぇか?」
探るような瞳に罪悪感を覚えたが、思い出せないものを思い出したということは出来ない。
小さく首を振る葉人に、司郎は力ない笑みを浮かべて見せた。
「……ハクジョウなやつだな」
軽く口付けて、司郎は優しく髪を梳く。
「またあいつが暴走しないように、手は打ってある。それで…我慢してくれ」
言われている意味が分からないまま見上げていると、髪を梳いていた手が首筋へと下りてくる。
そこに刻み込まれたキスマークをなぞるように、その上を優しく撫ぜていく。
「ん…っせんぱ…」
「1限目は空いてるんだろ?」
「だからって…ぅんっ……止めて…」
ボタンを外しながら下りていく指を掴んで首を振る。
「…オレ、もう…無理です……。さっき言ったみたいに、先輩のことも、やっぱり許せないから…」
「…」
「ズルズル流されて…こんなことしてて、先生を傷つけたくないんです」
今朝、車の中で握られた手の温もりを思い出し、それに勇気付けられて言葉を続ける。
「恋人って言ってくれる先生の傍にいたいから」
はっきりとそう言って司郎を押しのけると、小さな達成感が葉人の胸を震わせる。
「…それは」
言い返された司郎の言葉に、先ほどの清々しさがかき消されるのを葉人は感じた。
「都合よく、逃げ込める先だからか?」
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