43 / 50
第六話「彩香のバレーサークル入部問題」彩香side story
6-4
しおりを挟む
どうしてこうなったー!
あ、でも、逃げ出すチャンスじゃないかな?
「せ、先輩方、そろそろ私行きますねー……」
そろりそろりと、彩芽に近寄るために鍛えた忍び足で扉に向かう。
あとは扉の前で「やっぱりサークル入るのもう少し考えますー!」って伝えれば大丈――
「あ、彩香さん!」
「はひゃいっ!」
唐突に呼ばれて扉の前で背筋がビクッと跳ねた。
「か、彼氏、連れて来てくださいね」
「……え」
一旦帰宅。
彩芽に泣きついてよしよししてもらう。
「彩芽ぇ……どうしよぉ……」
「自業自得じゃない?」
「うぇええん……だって、あのタイプの人間に出くわしたことなかったんだもーん……」
「はいはい」
彩芽の膝の上で頭を撫でてもらいながら至福のひと時。
「どうすればいいかなー……むふっ……♪」
「知らないわよ、そんなこと。あと、変な声出さないで」
「彩芽、ついてきてよー……」
「嫌よ、そんな人たちの所行きたくない」
「んじゃ、私どうすればいいのさー……」
「そうね……」
彩芽の撫でる手が止まった。
「その……あれよ、銀治にでも頼めばいいんじゃない?」
「え……」
撫でてくれている彩芽の顔を見つめる。
「他に頼める人いないでしょ」
「でも、銀治君は彩芽のことが好きだろうし、それに彩芽だって銀治君のこと好――」
「それ以上言ったらコロス……コロス……!」
「あ、あははー……」
彩芽の目が本気で怒ってるのでやめておこう。
がるるぅ……って唸りながら威嚇されてるけど、それもまた可愛いなぁ。
「で、でもさー、銀治君だって迷惑かもしれないしー」
「あの変態紳士なら喜んでついてきてくれるわよ。彩香のこと女神とか言ってたし」
「女神?」
「うん」
よく分かんないな……。
「とりあえず、頼めばついてきてくれるわよ。あいつ、なんだかんだ言って……」
「うん?」
「ううんっ! なんでもない! と、とにかく来てくれるわよっ」
なんか照れてる気がするけど……。
「彩芽だったらそうかもしれないけどさー」
「わ、私は関係ないでしょ!」
「そんなこと言ってー……、お姉ちゃんには全てお見通しだよー♪」
「うっ……ぅうううう……がうぅぅ……!」
「あ、彩芽……?
あれ、もしかして怒らせたかな……。
「うがぁああ!」
「ひゃぁ⁉」
――彩芽に五分間こしょばされ続けた……。
うぅ……脇腹が弱いの知ってて……彩芽のやつー……。でも、じゃれ合えたから満足……。
「ふんっ、バカ……」
「わ、笑い死ぬかと思ったよー……ん?」
すんすん……。
「なに嗅いでるのよ……」
「彩芽の布団良い匂いするなーと」
「はぁ……、そんなこと言ってないで結局どうすんのよ」
「んー、彩芽を連れて行く?」
「却下よ、却下」
「彩芽をおんぶして行く?」
「頭突くわよ……」
「う、嘘だよっ」
すでに構えているのでちょっとだけ距離を空けておこう……。
「まー、銀治君しか居ないよねー。ミー君も昨日ご飯食べたあと帰っちゃったし」
「メールしたら?」
「うーん」
メール……打つの面倒臭いなー……。
「……よいしょっ」
「どこ行くの?」
「隣だし、直接行ってくるよー」
「あっそ」
「一緒に行く?」
「い、行かないわよ!」
「フッフッフー、んじゃ、ちょっと銀治君借りるねー」
「べ、別に私に言うことじゃないし!」
「照れてる照れてるー」
「がうぅぅう……!」
「う、嘘、嘘だから! よしよーし……いい子いい子~」
頭を撫でて彩芽を落ち着かせる。
「ふんっ……」
ちょっと言い過ぎたかなー……、帰りにアイス買って帰ろう……。
「んじゃま、行ってくるねー」
「……いってらっしゃい」
――ということで、銀治の玄関の前だけども……。
ピンポーン♪
「……」
なんだかそわそわしてしまう……い、意外と、男の人の家に訪れるというのは、なんというか、緊張するかも……。
「あ」
開いたっ。
「ん……、あれ、彩香さん?」
ぼさぼさの頭でいかにも寝起きだなー。
「やっほーい」
とりあえず笑顔で手を振ってみるけど。
「おはようございます……」
反応が薄い……。
「それで、どうしたんですか?」
「そう、よく聞いてくれたよ銀治君っ! 実は――」
かくかくしかじか……。
話し始めて「彼氏の振り」というワードが出た瞬間にすごい喜んでくれたんだけど、なんか申し訳ないな……。振り、だからねー。
「その話、喜んでお引き受けいたします」
「いいの? 面倒臭いよ?」
「むしろこちらからお願いしたいです」
なんか、勢いがすごいな……。
「言っておくけど、ほんとの彼氏じゃないからね?」
「ええ、もちろんです。そんな恐れ多い……彼氏の振りで十分です。満足です。むしろご褒美です」
「あー、あははー……それは良かったー……」
ふむふむ、ミー君と話す時と違って敬語なの、ちょっと距離を感じるなぁ……。
「んじゃ、今から準備しますんで少しだけお待ちを」
「はーいっ、お待ちしてますっ」
……五分後。
「お待たせしました」
「早いねー」
「着替えるだけなので、いつもこんな感じですよ」
カッターシャツにネクタイ無し、黒いパンツ。
程よい筋肉でスラっとしてるし、銀治君で正解かもしれないなー。
「あ、そうだ。敬語だと怪しまれるから友達みたいに気楽にお願いします!」
「分かりました」
「それ! それだよっ!」
「あ……、そうか……」
顎に手を添えて悩み始める銀治君。
そんなに悩むことかな?
「……名前も彩香さんだとマズいですかね?」
「んー、念のため呼び捨てでいこっかー」
「では……ちょっとだけ待ってくださいね……」
銀治君が深呼吸をしたあとに真直ぐこっちを見てきた。
「……」
なぜ、そんな真剣な目つきでこっちを見つめるんだ……。
「彩香、行こうか」
「っ……⁉」
な、なん……なんかコレ恥ずかしいよぉお……!
あ、でも、逃げ出すチャンスじゃないかな?
「せ、先輩方、そろそろ私行きますねー……」
そろりそろりと、彩芽に近寄るために鍛えた忍び足で扉に向かう。
あとは扉の前で「やっぱりサークル入るのもう少し考えますー!」って伝えれば大丈――
「あ、彩香さん!」
「はひゃいっ!」
唐突に呼ばれて扉の前で背筋がビクッと跳ねた。
「か、彼氏、連れて来てくださいね」
「……え」
一旦帰宅。
彩芽に泣きついてよしよししてもらう。
「彩芽ぇ……どうしよぉ……」
「自業自得じゃない?」
「うぇええん……だって、あのタイプの人間に出くわしたことなかったんだもーん……」
「はいはい」
彩芽の膝の上で頭を撫でてもらいながら至福のひと時。
「どうすればいいかなー……むふっ……♪」
「知らないわよ、そんなこと。あと、変な声出さないで」
「彩芽、ついてきてよー……」
「嫌よ、そんな人たちの所行きたくない」
「んじゃ、私どうすればいいのさー……」
「そうね……」
彩芽の撫でる手が止まった。
「その……あれよ、銀治にでも頼めばいいんじゃない?」
「え……」
撫でてくれている彩芽の顔を見つめる。
「他に頼める人いないでしょ」
「でも、銀治君は彩芽のことが好きだろうし、それに彩芽だって銀治君のこと好――」
「それ以上言ったらコロス……コロス……!」
「あ、あははー……」
彩芽の目が本気で怒ってるのでやめておこう。
がるるぅ……って唸りながら威嚇されてるけど、それもまた可愛いなぁ。
「で、でもさー、銀治君だって迷惑かもしれないしー」
「あの変態紳士なら喜んでついてきてくれるわよ。彩香のこと女神とか言ってたし」
「女神?」
「うん」
よく分かんないな……。
「とりあえず、頼めばついてきてくれるわよ。あいつ、なんだかんだ言って……」
「うん?」
「ううんっ! なんでもない! と、とにかく来てくれるわよっ」
なんか照れてる気がするけど……。
「彩芽だったらそうかもしれないけどさー」
「わ、私は関係ないでしょ!」
「そんなこと言ってー……、お姉ちゃんには全てお見通しだよー♪」
「うっ……ぅうううう……がうぅぅ……!」
「あ、彩芽……?
あれ、もしかして怒らせたかな……。
「うがぁああ!」
「ひゃぁ⁉」
――彩芽に五分間こしょばされ続けた……。
うぅ……脇腹が弱いの知ってて……彩芽のやつー……。でも、じゃれ合えたから満足……。
「ふんっ、バカ……」
「わ、笑い死ぬかと思ったよー……ん?」
すんすん……。
「なに嗅いでるのよ……」
「彩芽の布団良い匂いするなーと」
「はぁ……、そんなこと言ってないで結局どうすんのよ」
「んー、彩芽を連れて行く?」
「却下よ、却下」
「彩芽をおんぶして行く?」
「頭突くわよ……」
「う、嘘だよっ」
すでに構えているのでちょっとだけ距離を空けておこう……。
「まー、銀治君しか居ないよねー。ミー君も昨日ご飯食べたあと帰っちゃったし」
「メールしたら?」
「うーん」
メール……打つの面倒臭いなー……。
「……よいしょっ」
「どこ行くの?」
「隣だし、直接行ってくるよー」
「あっそ」
「一緒に行く?」
「い、行かないわよ!」
「フッフッフー、んじゃ、ちょっと銀治君借りるねー」
「べ、別に私に言うことじゃないし!」
「照れてる照れてるー」
「がうぅぅう……!」
「う、嘘、嘘だから! よしよーし……いい子いい子~」
頭を撫でて彩芽を落ち着かせる。
「ふんっ……」
ちょっと言い過ぎたかなー……、帰りにアイス買って帰ろう……。
「んじゃま、行ってくるねー」
「……いってらっしゃい」
――ということで、銀治の玄関の前だけども……。
ピンポーン♪
「……」
なんだかそわそわしてしまう……い、意外と、男の人の家に訪れるというのは、なんというか、緊張するかも……。
「あ」
開いたっ。
「ん……、あれ、彩香さん?」
ぼさぼさの頭でいかにも寝起きだなー。
「やっほーい」
とりあえず笑顔で手を振ってみるけど。
「おはようございます……」
反応が薄い……。
「それで、どうしたんですか?」
「そう、よく聞いてくれたよ銀治君っ! 実は――」
かくかくしかじか……。
話し始めて「彼氏の振り」というワードが出た瞬間にすごい喜んでくれたんだけど、なんか申し訳ないな……。振り、だからねー。
「その話、喜んでお引き受けいたします」
「いいの? 面倒臭いよ?」
「むしろこちらからお願いしたいです」
なんか、勢いがすごいな……。
「言っておくけど、ほんとの彼氏じゃないからね?」
「ええ、もちろんです。そんな恐れ多い……彼氏の振りで十分です。満足です。むしろご褒美です」
「あー、あははー……それは良かったー……」
ふむふむ、ミー君と話す時と違って敬語なの、ちょっと距離を感じるなぁ……。
「んじゃ、今から準備しますんで少しだけお待ちを」
「はーいっ、お待ちしてますっ」
……五分後。
「お待たせしました」
「早いねー」
「着替えるだけなので、いつもこんな感じですよ」
カッターシャツにネクタイ無し、黒いパンツ。
程よい筋肉でスラっとしてるし、銀治君で正解かもしれないなー。
「あ、そうだ。敬語だと怪しまれるから友達みたいに気楽にお願いします!」
「分かりました」
「それ! それだよっ!」
「あ……、そうか……」
顎に手を添えて悩み始める銀治君。
そんなに悩むことかな?
「……名前も彩香さんだとマズいですかね?」
「んー、念のため呼び捨てでいこっかー」
「では……ちょっとだけ待ってくださいね……」
銀治君が深呼吸をしたあとに真直ぐこっちを見てきた。
「……」
なぜ、そんな真剣な目つきでこっちを見つめるんだ……。
「彩香、行こうか」
「っ……⁉」
な、なん……なんかコレ恥ずかしいよぉお……!
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる