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第一話「銀髪美少女と銀髪美女に出会った日」
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「――はい。今日の話は以上となります。単位の事や履修科目など、分からないことがあれば遠慮せずに聞いてくださいね。では」
扇形に作られた講義室で教員によるオリエンテーションが終わり、俺は銀髪美少女である彩芽の隣に座っていた。この上ない幸せであります。
「さっきの銀髪美少女、もう男作ってるぞ」
後ろの席から嫌いなタイプの声がする。
「ほんまや、やっぱりああいうのは早いんやなぁ。俺も付き合ってみたいわぁ」
「しかももう一人綺麗な人居るぞ」
「……ほんまやなぁ、俺もああいう綺麗で可愛い子と付きおうてみたいわぁ」
聞こえるように言っているあたり、かなり解せない。これ以上続くならば――
「ふぅー終わったー……つかれたー」
力の抜けた彩芽の声が聞こえ俺の意識はそちらへと持っていかれた。机にぺたりと伏せて脱力している彩芽。素晴らしい。
「でさでさ」
彩芽を挟むようにして座る彩香がハキハキと好奇心に満ちた目で妹に問いかける。
「どうして銀治とぶつかったの?」
ぎ、銀治だとっ!
「ぎ、銀治って」
彩香が下の名前で呼んでくれたことが嬉しくて今にも昇天しそうな気持ちである。
「だってあんたって言い続けるのもなんだし芥川って言いにくいじゃん。銀治で良いでしょ?」
「ありがとうございますそれが一番です最高ですご褒美です」
「あ、あははー……」
なぜ顔が引きつっているのかは分からないが、笑っているので良しとしよう。
「で、彩芽。なんでぶつかったの?」
「それは……」
「言ってくれなきゃ今日ごはん作らないよ?」
上から目線で意地悪する彩香の顔はいやらしく笑っていた。俺も一緒に上から見下ろして頂きたい。
「そんなぁ……」
銀髪美女と銀髪美少女が見つめ合っている。彩芽の顔は見えないが、声のトーン的に相当ショックを受けているらしい。俺にとってはただの天国に変わりはない。
「言う、言うから……ご飯は作って……」
「よし!」
妹の頭をよしよしと撫でる銀髪美女。感動で目が……。
「うっ……うぅ……」
「なんで銀治は泣いてるの!?」
「いや……尊過ぎて……」
くぅ……涙で銀髪美少女たちが見えません。
「うん、よく分かんないや……。で、彩芽っ」
「はいはい……お姉ちゃ……じゃなくて彩香が――」
言い直すあたり彩芽はツンデレ属性まで所持しているらしい。
「ムッフッフー、お姉ちゃんでいいのにー」
嬉しそうな彩香の声に俺は感激していた。今この場には女神と天使が同時に降臨している。尊い、尊過ぎるぞ。
「ごほん……彩香が」
「むー……」
尊さに胸を痛めながら、一目でもその光景を見ようと横目で凝視する。頬を膨らませる彩香がとても美しい。
「……お、お姉ちゃんがぜんっぜん帰って来なかったからトイレに行こうと思って……。でもその前に男の人が私にぺ、ぺ、ぺた……」
彩芽の言葉がそこで途切れた。
「ぺた……?」
彩香が首を傾げながら問いかけるが、俺には分かる。
「ぺたんこ、まな板、絶壁。俺はいいと思う」
親指を立てながらグーサインを彩芽に向けると、なぜか彩香が俺に向けて同じくグーサインをしていた。
机に突っ伏したまま彩芽がこちらに顔を向ける。可愛いです最高です。
「言うなよぉ……傷付くだろぉ……」
涙目で訴えかけてくる彩芽の姿がとてもグッジョブなのだが、俺の中にある銀髪美少女三原則が警鐘を鳴らす。
――銀髪美少女三原則その三、悲しませない
「あ……ああ……今日一日で俺はどれだけの大罪を……」
頭を抱えながら、俺は両肘を机に置いた。
お、俺は一体どうやって罪を償えば良いんだ……。
「え、急にどしたの?」
彩香が俺に質問しているようだが、今はそれどころではない。
「もう死んで詫びるしかない……」
「なんでそんな物騒なことになってんの!?」
「ぎ、銀髪美少女三原則のその三を何回も破ってしまっているんだ……」
「え、何それ……」
彩香の声は昔、俺に対してドン引きしていた女の子の声とそっくりだった。唯一違うのは今、目の前に居るのが銀髪美女の彩香と銀髪美少女の彩芽だということ。それだけで生きる活力が湧いてくる。が、死なねばならぬ……。
「銀髪美少女三原則だ……」
「いや、二回言われても分かんないんだけど……」
「彩香、やっぱり離れよう? この変態絶対にやばいって……」
「変態じゃなくて紳士です……」
「それ、意味一緒だから」
彩芽の言葉に俺の中のオタクレーダーが反応した。
「ほう……オタク系の言葉をご存じなのか」
「うっ……」
彩芽は「やってしまった」と言わんばかりに顔をしかめる。
――何を隠そう、コスプレさせている姉にこの妹あり……コスプレする銀髪美少女こと彩芽もまたかなりのオタクなのであった。
「彩芽は結構そっちの知識多くてさー、私はコスプレしてくれる姿も好きなんだー。このままでも可愛いから十分なんだけどね」
頬杖を突きながらニコニコして話す彩香は美しく可愛かった。
「なんと素晴らしい……」
「ちょっと! 言わないでって言ったじゃんかぁ……」
「ごめんごめん」
「……ばか」
――彩芽の姉に向けた言葉がなぜか銀治へと突き刺さる!
「グハッ……」
血が出そうな破壊力に思わず机に伏せた。
「ぐふっ……」
――姉も姉で彩芽の言葉が突き刺さっていた!
「え、何!? 二人ともどうしたの!?」
慌てた彩芽は顔を上げ机に突っ伏した俺と彩香を交互に見つめていた。
「と、尊過ぎて……」
「お、同じく……」
俺の言葉に彩香は賛同していた。ああ、見上げれば銀髪美少女の顔が……。天使……天使が隣にいらっしゃる。
「さっきから尊い尊いって、そんなに褒められても……さっきの階段のこと、絶対許さないんだからね……」
言い終えた彩芽は顔を反対に向け、肩にかかる長い髪がキラキラと遠心力によって舞い上がる。
「グハッ……」
彩芽の方を向いていた俺は究極完全体の銀髪美少女のツンデレに耐えられず悶絶した。
やはり、兵器だ。これは世界を平和に導く兵器に違いない。
「くっ……」
身体が動かない! まさか、尊過ぎて動けないだとっ……なんという力なんだ……。
「お姉ちゃん、もうこの変態置いてさっさと帰ろう」
ガサゴソとリュックサックに荷物を詰めていく彩芽。
「はーい!」
彩香は可愛い返事をして同じようにリュックサックに筆記具やらノートを詰めていった。
「……お、俺も」
致命的なダメージを受けていた俺は必死に二人を見上げた。
「んじゃねー」
手を振ってその場を去って行く彩香。すらりとした体型、曲線美から放たれる爽やかスマイルが俺に襲いかかる。
「散りくたばれゲス野郎……」
彩芽は見下ろしながら、蔑んだ目で言っていた。
「ありがとう……ございます……」
銀髪美少女に言われるなら本望でございます。
俺は力尽きた。
「……」
出て行く二人の声を必死に聞き取る。
「彩芽ー、今日何食べたい?」
「うーん、オムライス……かな」
「よっしゃー! 美味しいの作ってあげるね!」
「うん」
「でさ、結局どういうぶつかり方したらパンツとかぺたんこの話に?」
「それはその……」
……zzz。
――銀治は力尽き倒れたのであった。
扇形に作られた講義室で教員によるオリエンテーションが終わり、俺は銀髪美少女である彩芽の隣に座っていた。この上ない幸せであります。
「さっきの銀髪美少女、もう男作ってるぞ」
後ろの席から嫌いなタイプの声がする。
「ほんまや、やっぱりああいうのは早いんやなぁ。俺も付き合ってみたいわぁ」
「しかももう一人綺麗な人居るぞ」
「……ほんまやなぁ、俺もああいう綺麗で可愛い子と付きおうてみたいわぁ」
聞こえるように言っているあたり、かなり解せない。これ以上続くならば――
「ふぅー終わったー……つかれたー」
力の抜けた彩芽の声が聞こえ俺の意識はそちらへと持っていかれた。机にぺたりと伏せて脱力している彩芽。素晴らしい。
「でさでさ」
彩芽を挟むようにして座る彩香がハキハキと好奇心に満ちた目で妹に問いかける。
「どうして銀治とぶつかったの?」
ぎ、銀治だとっ!
「ぎ、銀治って」
彩香が下の名前で呼んでくれたことが嬉しくて今にも昇天しそうな気持ちである。
「だってあんたって言い続けるのもなんだし芥川って言いにくいじゃん。銀治で良いでしょ?」
「ありがとうございますそれが一番です最高ですご褒美です」
「あ、あははー……」
なぜ顔が引きつっているのかは分からないが、笑っているので良しとしよう。
「で、彩芽。なんでぶつかったの?」
「それは……」
「言ってくれなきゃ今日ごはん作らないよ?」
上から目線で意地悪する彩香の顔はいやらしく笑っていた。俺も一緒に上から見下ろして頂きたい。
「そんなぁ……」
銀髪美女と銀髪美少女が見つめ合っている。彩芽の顔は見えないが、声のトーン的に相当ショックを受けているらしい。俺にとってはただの天国に変わりはない。
「言う、言うから……ご飯は作って……」
「よし!」
妹の頭をよしよしと撫でる銀髪美女。感動で目が……。
「うっ……うぅ……」
「なんで銀治は泣いてるの!?」
「いや……尊過ぎて……」
くぅ……涙で銀髪美少女たちが見えません。
「うん、よく分かんないや……。で、彩芽っ」
「はいはい……お姉ちゃ……じゃなくて彩香が――」
言い直すあたり彩芽はツンデレ属性まで所持しているらしい。
「ムッフッフー、お姉ちゃんでいいのにー」
嬉しそうな彩香の声に俺は感激していた。今この場には女神と天使が同時に降臨している。尊い、尊過ぎるぞ。
「ごほん……彩香が」
「むー……」
尊さに胸を痛めながら、一目でもその光景を見ようと横目で凝視する。頬を膨らませる彩香がとても美しい。
「……お、お姉ちゃんがぜんっぜん帰って来なかったからトイレに行こうと思って……。でもその前に男の人が私にぺ、ぺ、ぺた……」
彩芽の言葉がそこで途切れた。
「ぺた……?」
彩香が首を傾げながら問いかけるが、俺には分かる。
「ぺたんこ、まな板、絶壁。俺はいいと思う」
親指を立てながらグーサインを彩芽に向けると、なぜか彩香が俺に向けて同じくグーサインをしていた。
机に突っ伏したまま彩芽がこちらに顔を向ける。可愛いです最高です。
「言うなよぉ……傷付くだろぉ……」
涙目で訴えかけてくる彩芽の姿がとてもグッジョブなのだが、俺の中にある銀髪美少女三原則が警鐘を鳴らす。
――銀髪美少女三原則その三、悲しませない
「あ……ああ……今日一日で俺はどれだけの大罪を……」
頭を抱えながら、俺は両肘を机に置いた。
お、俺は一体どうやって罪を償えば良いんだ……。
「え、急にどしたの?」
彩香が俺に質問しているようだが、今はそれどころではない。
「もう死んで詫びるしかない……」
「なんでそんな物騒なことになってんの!?」
「ぎ、銀髪美少女三原則のその三を何回も破ってしまっているんだ……」
「え、何それ……」
彩香の声は昔、俺に対してドン引きしていた女の子の声とそっくりだった。唯一違うのは今、目の前に居るのが銀髪美女の彩香と銀髪美少女の彩芽だということ。それだけで生きる活力が湧いてくる。が、死なねばならぬ……。
「銀髪美少女三原則だ……」
「いや、二回言われても分かんないんだけど……」
「彩香、やっぱり離れよう? この変態絶対にやばいって……」
「変態じゃなくて紳士です……」
「それ、意味一緒だから」
彩芽の言葉に俺の中のオタクレーダーが反応した。
「ほう……オタク系の言葉をご存じなのか」
「うっ……」
彩芽は「やってしまった」と言わんばかりに顔をしかめる。
――何を隠そう、コスプレさせている姉にこの妹あり……コスプレする銀髪美少女こと彩芽もまたかなりのオタクなのであった。
「彩芽は結構そっちの知識多くてさー、私はコスプレしてくれる姿も好きなんだー。このままでも可愛いから十分なんだけどね」
頬杖を突きながらニコニコして話す彩香は美しく可愛かった。
「なんと素晴らしい……」
「ちょっと! 言わないでって言ったじゃんかぁ……」
「ごめんごめん」
「……ばか」
――彩芽の姉に向けた言葉がなぜか銀治へと突き刺さる!
「グハッ……」
血が出そうな破壊力に思わず机に伏せた。
「ぐふっ……」
――姉も姉で彩芽の言葉が突き刺さっていた!
「え、何!? 二人ともどうしたの!?」
慌てた彩芽は顔を上げ机に突っ伏した俺と彩香を交互に見つめていた。
「と、尊過ぎて……」
「お、同じく……」
俺の言葉に彩香は賛同していた。ああ、見上げれば銀髪美少女の顔が……。天使……天使が隣にいらっしゃる。
「さっきから尊い尊いって、そんなに褒められても……さっきの階段のこと、絶対許さないんだからね……」
言い終えた彩芽は顔を反対に向け、肩にかかる長い髪がキラキラと遠心力によって舞い上がる。
「グハッ……」
彩芽の方を向いていた俺は究極完全体の銀髪美少女のツンデレに耐えられず悶絶した。
やはり、兵器だ。これは世界を平和に導く兵器に違いない。
「くっ……」
身体が動かない! まさか、尊過ぎて動けないだとっ……なんという力なんだ……。
「お姉ちゃん、もうこの変態置いてさっさと帰ろう」
ガサゴソとリュックサックに荷物を詰めていく彩芽。
「はーい!」
彩香は可愛い返事をして同じようにリュックサックに筆記具やらノートを詰めていった。
「……お、俺も」
致命的なダメージを受けていた俺は必死に二人を見上げた。
「んじゃねー」
手を振ってその場を去って行く彩香。すらりとした体型、曲線美から放たれる爽やかスマイルが俺に襲いかかる。
「散りくたばれゲス野郎……」
彩芽は見下ろしながら、蔑んだ目で言っていた。
「ありがとう……ございます……」
銀髪美少女に言われるなら本望でございます。
俺は力尽きた。
「……」
出て行く二人の声を必死に聞き取る。
「彩芽ー、今日何食べたい?」
「うーん、オムライス……かな」
「よっしゃー! 美味しいの作ってあげるね!」
「うん」
「でさ、結局どういうぶつかり方したらパンツとかぺたんこの話に?」
「それはその……」
……zzz。
――銀治は力尽き倒れたのであった。
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