呪いを受けた王太子

城ねこ

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※ロイ

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「グレン!」

 どうして俺の耳を塞ぐんだ?

 黒い瞳が間近で俺を見つめ、眉間にしわを寄せたかと思えば珍しく表情が変わり、だがそれは揺すられているからそう見えたのかもしれなかった。

「ああ!」

 これは呪いのせいで感じているのか?感覚がさっきと違うように思う。

 グレンはしつこくある一点を突いて、その度に抑えられない声が出てしまう。

 さっきはただただ陰茎を望む欲求が熱となって下半身に集まり快感に落とされたが今はなかにグレンを…

 一際ひときわ強く抱き締められたあとグレンが腰を押し付け俺のなかに熱い子種を吐き出した。

「く…あ…グレ…ン」

 陰茎は…俺の陰茎の状態はどうなんだ?

「殿下…」

 そうだ…グレンは俺の子種を…見せたろ…

 のしかかる大きな体は未だに俺の耳を覆っているのはなぜだ?

「グレン…抜け」

 グレンは俺の命令に従わなかったが耳から手を離し、俺の体に腕を巻き付けた。

「…なにか…」

 呪いのせいでおかしなことが起こったのか?

『このまま』

「…答えろ…子種は出たのか?」

『…俺が吐き出したら出た』

 そうか…前回は湯のなかだったからな。

「硬さは?」

『柔らかいままだ』

 それでは困る…女に挿入れることができないぞ。いや…子種さえ出れば…

「グレン…曖昧あいまいだが…覚えている」

 グレンの重さが心地いいなど…

 俺はおもだるい腕を上げて頬をくすぐる黒い頭を撫でる。

「…俺の言葉は忘れろ」

 いいだの、もっとだの…娼婦の台詞せりふだろ…たぶん…

「離れんと言ったこともか」

「…それは嘘ではないからな…覚えていていい」

 グレンと同じ性質を持つ者がいるとは思えない。いたとしても秘密を話せないなら意味はない。

「お前が俺を裏切ることがなければ…そばにいろ」

 俺の秘密も醜態しゅうたいさらしたんだ…お前に裏切られたら…落ち込むぞ。

「…殺すんだろ?」

「ああ…戸惑わずな…グレン…どうした?」

 心の声は聞こえてこないが様子がおかしい。なにを考えている?

「…こんな体で女は抱けない」

「ああ」

 だから困っている。

「結婚などできないだろ」

「結婚したとしてもお前はそばに置く」

「…ああ」

 こいつは…俺が王族だと理解していないな。いつまでも不遜ふそんな態度を…

「抜け。風呂に入るぞ」

 黒い髪を引っ張れば、グレンは上体を上げて俺を見下ろした。

「…かき出すか?」

 そうだ…前回はグレンの子種を放置したら腹を下した。

「ああ…頼む」

 そのせいで男色ものの本を一通り読んで事後じごの処置を知った。

 次は外に出すよう…

 三度目も来るのか?

 グレンはゆっくりと腰を引いた。

「く…」

 この感覚…慣れないな…

 手足に力が入らないぞ…グレンに運んでもらわねば…

 グレンの手が延びて抱き上げられると思ったが、その手は俺の腹を押した。

「出ないな…奥に出しすぎた」

「…そうか」

 としか言えないぞ。

「湯に入りたい…お前も入れ…汚れている」

 俺たちの体は香油と子種で汚れているはずだ…

 少しぼーとしていると指先が俺の胸の頂に触れて摘まんだ。

「ん……なにしてる?」

「…ここに触れたとき喘いだ」

「よく話すようになったな、阿呆…呪いが発動中は全身性感帯なんだろう…」

 なんて下劣げれつな呪いなんだ…あの男…生かしてはいるが…殺したい。



「殺してやる」

「ん?」

 俺の背もたれとなっているグレンが呟いた。

「お前…まさか…俺に言っているのか?」

 俺を抱くことがそんなに負担か?

「殿下が言った」

「ふ…ん…ああ…地下牢にいる男のことだ。俺の意思に反して…女のように高い声を上げたからな…腹が立った」

 思い出せば聞こえる…俺が出した喘ぐ声が…

 湯をすくって顔を濡らす。体を後ろに倒せば固い体があり、グレンの肩に頭を預ける。

「なんだろうな…お前は俺に対して態度が…不敬すぎるが…それに腹が立たんのは…与えられる静寂が心地いいからか?」

 今の俺にはグレンが必要だ。いつか呪いが解けるまでそばにいてもらわねばならない。

 しかし…子種は出たか…呪いの発動中しか出ないのか?いや、問題解決にはなんでも試さないとならない。

「グレン」

 俺の頭にグレンが顔を寄せた。

「…悪いが…呪われていない俺でも抱けるか?」

『抱ける』

「ははっ若いな」

 こいつが男嫌いではなくて助かったな。

「この前渡した本は読んだか?」

 グレンにも男色の本を渡した。

 返らない返事に顔を上げると近くに黒い瞳があった。

「どうし…」

 グレンは字が読めないと、なぜ俺は思い付かなかった?

「お前の…頭のなかは空っぽか?」

 返事すらこなかった。

 そんなことがあり得るのか?便利だと思ってそこにあえて意識を向けなかった。

「…俺が覚えた…俺の言う通りに…動け」

 グレンの性質の謎を探ったとしても意味がないことのように思うし、俺に関係があることじゃない。

「もう…夜が明け…」

 目蓋まぶたが重くなってきた。窓の外の暗闇がわずかだが薄くなっている。









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