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3. 天才魔術師の地味なお仕事
3-2 魔術連盟の会合?
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マグノリアさんは語る。
「アッシュ殿は、素晴らしい才能の持ち主ですから。それを世の中に知らしめねばと思ったのです! 実際魔術連盟の中には、あの儀式を見て、アッシュ様を見直したという方もいらっしゃったんですよ」
「そうなんだ……」
おれが召喚されたことが、アッシュ様の評価を上げるきっかけになったかもしれない、ってことだよね? アッシュ様本人は、あんまり評判とか名声とかに興味なさそうだけど……。でも、ご主人様が褒められるのは喜ぶべきことなわけで。
「使い魔さんも思うでしょう? アッシュ殿にもっと光が当たってほしいと。もっと大きな活躍を見てみたいと!」
「えーっと、そうですねぇ……」
ぐいぐい来るなぁ、マグノリアさん。何だか、アッシュ様の才能を大いに信じている……というか、心酔しているみたいだ。
「……おい」
なんてやり取りをしていたら、アッシュ様がマグノリアさんの後ろに立っていた。いつの間に……。
アッシュ様、身長高い上に表情も固いから、急に出てこられるとびっくりしちゃうんだよね。
そんなアッシュ様は、じろりとマグノリアさんを睨む。
「うちのにちょっかいをかけるんじゃない」
「ちょっかいじゃあ御座いませんよ、初めましての挨拶です! ね、使い魔さん」
「あはは……」
挨拶……にしては、濃かったけどね……?
確かに想定していない出会いではあったものの、そんなにピリピリすることないと思うんだけどなぁ。外出の件に限らず、アッシュ様ってやっぱり、おれに対してやや過保護な面がある。
「では、私はこれで。『会合』の件、宜しくお願い致しますね」
「……?」
ひらりと手を振って去っていく、マグノリアさんの背中を見送る。
後ろをついて行く接客担当のメイドさんたちも、見えなくなったくらいで……おれは、アッシュ様に尋ねた。
「『会合』って、何の話?」
「……ああ。今度、王都で『魔術連盟』の会合があるんだ。それに出ろと言われた」
「ほえー……」
王都、ですか。また未知の場所が出てきたなぁ。
つまりは日本でいう東京、都ってことですもんね。きっと栄えてる場所なんだろうなぁ。未だにお屋敷から出たことがないおれには、想像もつかないような場所だけど。
「年に一度の会合なんだが、そこには王室の方も視察にいらっしゃるんだ」
「え!? それ、めちゃめちゃ重要な会合なんじゃない……!?」
「人の多い場所は苦手なんだが……」
そう言って、溜息をつくアッシュ様。……いやいや、そんなこと言ってる場合じゃなくないですか。欠席した方が何かと面倒なことになるやつでしょ!
「ローレルにも言われた。お前が好む地味な仕事は魔術連盟の方針と合っていないんだから、会合くらいちゃんと出席しろと」
「うーん、それはそう……」
たぶんローレル様的には、もう少し柔らかい言葉で伝えたんだろうけど。
そう思いながらふと、この前見てしまったローレル様の素顔を思い出す。……本心としては、こっちで合ってるのか逆に。「大事な会合なんだからつべこべ言わずに出ろ。代わりに上から小言を言われるのは俺なんだぞ」みたいな感じかなぁ……。
「そんなことより、メグム」
そんなことではないと思いますが。
ともかくアッシュ様は、おれに向かって言う。
「明日は外での仕事だ。お前を同行させると約束しただろう」
「!」
おれの猫耳が、ぴこんと起き上がる。
外……外でのお仕事に? おれが、一緒に行くってこと?
「おれ、外に行けるの?」
「そうだ」
「やったぁー!」
思わず、ハタキを持ったままバンザイする。
念願の外! お屋敷の外! 異世界の景色! メグム、俄然やる気が湧いてきましたよっ。
「……そんなに楽しみか」
「もちろん!」
アッシュ様はやや怪訝そうな目でおれを見ているけど、おれの気持ちは止まらない。
よぅし。今夜はしっかり寝て、明日のお出かけに備えないとね。
「アッシュ殿は、素晴らしい才能の持ち主ですから。それを世の中に知らしめねばと思ったのです! 実際魔術連盟の中には、あの儀式を見て、アッシュ様を見直したという方もいらっしゃったんですよ」
「そうなんだ……」
おれが召喚されたことが、アッシュ様の評価を上げるきっかけになったかもしれない、ってことだよね? アッシュ様本人は、あんまり評判とか名声とかに興味なさそうだけど……。でも、ご主人様が褒められるのは喜ぶべきことなわけで。
「使い魔さんも思うでしょう? アッシュ殿にもっと光が当たってほしいと。もっと大きな活躍を見てみたいと!」
「えーっと、そうですねぇ……」
ぐいぐい来るなぁ、マグノリアさん。何だか、アッシュ様の才能を大いに信じている……というか、心酔しているみたいだ。
「……おい」
なんてやり取りをしていたら、アッシュ様がマグノリアさんの後ろに立っていた。いつの間に……。
アッシュ様、身長高い上に表情も固いから、急に出てこられるとびっくりしちゃうんだよね。
そんなアッシュ様は、じろりとマグノリアさんを睨む。
「うちのにちょっかいをかけるんじゃない」
「ちょっかいじゃあ御座いませんよ、初めましての挨拶です! ね、使い魔さん」
「あはは……」
挨拶……にしては、濃かったけどね……?
確かに想定していない出会いではあったものの、そんなにピリピリすることないと思うんだけどなぁ。外出の件に限らず、アッシュ様ってやっぱり、おれに対してやや過保護な面がある。
「では、私はこれで。『会合』の件、宜しくお願い致しますね」
「……?」
ひらりと手を振って去っていく、マグノリアさんの背中を見送る。
後ろをついて行く接客担当のメイドさんたちも、見えなくなったくらいで……おれは、アッシュ様に尋ねた。
「『会合』って、何の話?」
「……ああ。今度、王都で『魔術連盟』の会合があるんだ。それに出ろと言われた」
「ほえー……」
王都、ですか。また未知の場所が出てきたなぁ。
つまりは日本でいう東京、都ってことですもんね。きっと栄えてる場所なんだろうなぁ。未だにお屋敷から出たことがないおれには、想像もつかないような場所だけど。
「年に一度の会合なんだが、そこには王室の方も視察にいらっしゃるんだ」
「え!? それ、めちゃめちゃ重要な会合なんじゃない……!?」
「人の多い場所は苦手なんだが……」
そう言って、溜息をつくアッシュ様。……いやいや、そんなこと言ってる場合じゃなくないですか。欠席した方が何かと面倒なことになるやつでしょ!
「ローレルにも言われた。お前が好む地味な仕事は魔術連盟の方針と合っていないんだから、会合くらいちゃんと出席しろと」
「うーん、それはそう……」
たぶんローレル様的には、もう少し柔らかい言葉で伝えたんだろうけど。
そう思いながらふと、この前見てしまったローレル様の素顔を思い出す。……本心としては、こっちで合ってるのか逆に。「大事な会合なんだからつべこべ言わずに出ろ。代わりに上から小言を言われるのは俺なんだぞ」みたいな感じかなぁ……。
「そんなことより、メグム」
そんなことではないと思いますが。
ともかくアッシュ様は、おれに向かって言う。
「明日は外での仕事だ。お前を同行させると約束しただろう」
「!」
おれの猫耳が、ぴこんと起き上がる。
外……外でのお仕事に? おれが、一緒に行くってこと?
「おれ、外に行けるの?」
「そうだ」
「やったぁー!」
思わず、ハタキを持ったままバンザイする。
念願の外! お屋敷の外! 異世界の景色! メグム、俄然やる気が湧いてきましたよっ。
「……そんなに楽しみか」
「もちろん!」
アッシュ様はやや怪訝そうな目でおれを見ているけど、おれの気持ちは止まらない。
よぅし。今夜はしっかり寝て、明日のお出かけに備えないとね。
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