16 / 50
2. ご主人様はクールで過保護
2-4 異世界魔術事情
しおりを挟む
「……つまり、『萌え』というのは……愛やら、トキメキやらといった概念なのか」
「んー、まあ、そんな感じ?」
やや卵の崩れたまかないオムライスを、スプーンに乗せて口に運ぶ。
イケメンが大真面目に『萌え』について分析してるの、やっぱりだいぶ面白い図だな。笑ったりしたら絶対怒られるけど。
「それを食べ物や飲み物に込めるまじない……と。なるほど、俺たちの使う魔術に通じるものがあるな」
通じるんだ……?
もしかしたら、元の世界のメイド仲間の子たちも、異世界に来たら救世主とかになれちゃうのかもしれない。メイドの冒険譚……ラノベ一本書けちゃいそうだな。
それはそれとして。
「……おれ、この世界の『魔術』のこと、まだあんまり分かってないんだけど。魔術師って、何するの?」
「そうか、確かに説明する必要があるな」
アッシュ様は軽く頷くと、おれのために講義を始めてくれた。
「伝承では、魔術にも様々な形態があると言われているが……現状、この世界で使われている魔術は、気軽に使えるようなものではない」
「そうなんだ?」
「封印、魔除け、浄化など……用途に応じた魔法陣を描き、そこに杖で魔力を込めることで魔術を実行することが出来る」
なるほどね……思ったより難しそうだなぁ。
もぐもぐとオムライスを頬張りながら、呑気なことを考える。せっかく異世界に来たんだし、おれも魔法が使えたら……なんて思ったんだけど、厳しいっぽいか。(萌えチャージも魔法のようなものではあるけど……)
「『魔術師』の称号は、魔術を使うための資格のようなものだ。然るべき教育を受け、試験に合格することで『魔術連盟』に認められ、魔術師を名乗ることができるようになる」
「魔術連盟……あ、前にメイドさんが言ってた気がする」
優秀な魔術師だけが加入できる組織、みたいな話だったような。話を聞く感じ、魔術師の業界では重要な組織なんだろうな。
「じゃあ、『魔術師』って資格みたいなものなんだ。魔術師じゃない魔術師は魔術師じゃないの?」
「早口言葉か」
おれも今にも噛みそうだった。
「魔術連盟に認められていない者は、一般に『魔術使い』と呼ばれるな。見習いの者や、認可されていない魔術を使っている者などが該当する」
「……それ、混ぜちゃっていいのかなぁ」
「それ以外にちょうど良い名称がないからな。後者は『黒魔術使い』と呼ばれることもあるが」
黒魔術……また怪しげな言葉が出てきたなぁ。難しい話ばっかりだけど、聞きたいことが多すぎる。
「俺の主な仕事は、各種結界の補強や、魔術研究なんだが……魔術連盟からは、あまり良い顔をされないな」
「……え、なんで?」
「魔術連盟としては、魔術の権威を知らしめるために、もっと派手なことをやってほしいんだそうだ」
そう言うアッシュ様は、何だか苦い顔をしている。
うーん。組織との方針の違いか……それは大変だよなぁ。
おれを召喚した事情もそうだけど、天才だからって好き勝手にやらせてもらえるわけじゃないってことか。社会人の苦労を感じるぜ……。
「おれ、よく分かんないけどさー……ご主人様がやってるみたいな、コツコツ積み上げてくことこそが、魔術の重要さを広めるためには大事なんじゃないの?」
「……分かってるじゃないか」
そうかな?
ぱっと思ったことを言っただけなんだけど。
アッシュ様は、おれのその反応が少し意外なようだった。
「お前は、派手な魔術の方が好きかと思っていた」
「偏見だなぁ……。確かに憧れはするけどね? ご主人様がやってることも、プロっぽくてかっこいいなって」
服を作るにも、リメイクするにも……材料の準備や下調べ、縫い方の研究とか、いろいろやることはあるもんね。かぁいい服ほど、見えないところに手間がかかってる。
「実際、魔術のプロフェッショナルなんだもんね。ご主人様って」
「……そう言ってもらえるのは、有り難いな」
アッシュ様は、笑って……はいないけど、少し柔らかい表情をしているように見えた。
そんな、アッシュ様や魔術のことについていろいろ知れたお昼でした。
ふふ、何だかお腹も心もいっぱいになった気分だなぁ。
「んー、まあ、そんな感じ?」
やや卵の崩れたまかないオムライスを、スプーンに乗せて口に運ぶ。
イケメンが大真面目に『萌え』について分析してるの、やっぱりだいぶ面白い図だな。笑ったりしたら絶対怒られるけど。
「それを食べ物や飲み物に込めるまじない……と。なるほど、俺たちの使う魔術に通じるものがあるな」
通じるんだ……?
もしかしたら、元の世界のメイド仲間の子たちも、異世界に来たら救世主とかになれちゃうのかもしれない。メイドの冒険譚……ラノベ一本書けちゃいそうだな。
それはそれとして。
「……おれ、この世界の『魔術』のこと、まだあんまり分かってないんだけど。魔術師って、何するの?」
「そうか、確かに説明する必要があるな」
アッシュ様は軽く頷くと、おれのために講義を始めてくれた。
「伝承では、魔術にも様々な形態があると言われているが……現状、この世界で使われている魔術は、気軽に使えるようなものではない」
「そうなんだ?」
「封印、魔除け、浄化など……用途に応じた魔法陣を描き、そこに杖で魔力を込めることで魔術を実行することが出来る」
なるほどね……思ったより難しそうだなぁ。
もぐもぐとオムライスを頬張りながら、呑気なことを考える。せっかく異世界に来たんだし、おれも魔法が使えたら……なんて思ったんだけど、厳しいっぽいか。(萌えチャージも魔法のようなものではあるけど……)
「『魔術師』の称号は、魔術を使うための資格のようなものだ。然るべき教育を受け、試験に合格することで『魔術連盟』に認められ、魔術師を名乗ることができるようになる」
「魔術連盟……あ、前にメイドさんが言ってた気がする」
優秀な魔術師だけが加入できる組織、みたいな話だったような。話を聞く感じ、魔術師の業界では重要な組織なんだろうな。
「じゃあ、『魔術師』って資格みたいなものなんだ。魔術師じゃない魔術師は魔術師じゃないの?」
「早口言葉か」
おれも今にも噛みそうだった。
「魔術連盟に認められていない者は、一般に『魔術使い』と呼ばれるな。見習いの者や、認可されていない魔術を使っている者などが該当する」
「……それ、混ぜちゃっていいのかなぁ」
「それ以外にちょうど良い名称がないからな。後者は『黒魔術使い』と呼ばれることもあるが」
黒魔術……また怪しげな言葉が出てきたなぁ。難しい話ばっかりだけど、聞きたいことが多すぎる。
「俺の主な仕事は、各種結界の補強や、魔術研究なんだが……魔術連盟からは、あまり良い顔をされないな」
「……え、なんで?」
「魔術連盟としては、魔術の権威を知らしめるために、もっと派手なことをやってほしいんだそうだ」
そう言うアッシュ様は、何だか苦い顔をしている。
うーん。組織との方針の違いか……それは大変だよなぁ。
おれを召喚した事情もそうだけど、天才だからって好き勝手にやらせてもらえるわけじゃないってことか。社会人の苦労を感じるぜ……。
「おれ、よく分かんないけどさー……ご主人様がやってるみたいな、コツコツ積み上げてくことこそが、魔術の重要さを広めるためには大事なんじゃないの?」
「……分かってるじゃないか」
そうかな?
ぱっと思ったことを言っただけなんだけど。
アッシュ様は、おれのその反応が少し意外なようだった。
「お前は、派手な魔術の方が好きかと思っていた」
「偏見だなぁ……。確かに憧れはするけどね? ご主人様がやってることも、プロっぽくてかっこいいなって」
服を作るにも、リメイクするにも……材料の準備や下調べ、縫い方の研究とか、いろいろやることはあるもんね。かぁいい服ほど、見えないところに手間がかかってる。
「実際、魔術のプロフェッショナルなんだもんね。ご主人様って」
「……そう言ってもらえるのは、有り難いな」
アッシュ様は、笑って……はいないけど、少し柔らかい表情をしているように見えた。
そんな、アッシュ様や魔術のことについていろいろ知れたお昼でした。
ふふ、何だかお腹も心もいっぱいになった気分だなぁ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる