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1. おれ、使い魔になる!?

1-2 ご主人様と使い魔

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 言われてみれば、床に白く光る模様みたいなものが描かれている。これ、魔法陣だよね? 召喚といえば、のやつ。そしておれは、その円の中央に座ってるわけだ。
 金髪美形お兄さんは、魔法陣(たぶん)の外側から、おれに向けて語りかけてくる。

「俺はアッシュ。『使い魔』のお前を生成した……お前の主人だ」
「……ご主人様?」
「そうだ」

 頷くお兄さん改め、アッシュさん。や、アッシュ様? ご主人様っていうなら、それっぽく呼んだ方がいいかな。
 っていうか……なんか、アレだな。『ご主人様』っていうと、元の世界での仕事を思い出すなぁ。


 おれは元の世界で、ジェンダーレスメイドカフェで働いていた。
 いわゆるコンカフェの一つだ。女装男子もいれば、普通に女の子もいたし、性別を明らかにしてないキャストもいて――その上、メイド服のデザインも各々バラバラで――なかなかにカオスな空間だったなぁ、って感じ。
 成人男性でも合法的にかわいい格好ができて、とっても楽しい職場だったけどね。


「お前の身体となる依り代を生成し、そこに異界から喚んだ魂を取り込んだ。……どうだ、身体は馴染んでいるか」
「うーん……?」

 アッシュ様に言われて、首を捻ったり、手を開いたり閉じたりしてみる。
 依り代がどうのってことは、おれ自身がそのまま召喚されたわけじゃない? のかな? でも身体は問題なく、おれの意思で動かせる。

「大丈夫そう、ですけどー――」
「アッシュ殿、アッシュ殿!」

 と、アッシュ様の元に誰かが駆け寄ってきた。藍色の髪の男の人で、黒いローブを着ている。わー、なんか魔術師っぽい格好だぁ。

「魔術連盟の皆様がお話を聞きたいそうです。参りましょう」
「……そうか」

 アッシュ様はローブのお兄さんの方を見て頷くと、すっと踵を返す。
 ……え、いや、おれは?
 戸惑うおれの視線に気付いたのか、アッシュ様はくるりとおれの方を振り向いて、

「お前は……好きにしていろ」

 それだけ言って、結局おれから離れていってしまった。囲みの人々と連れ立って、部屋を出ていく。

(……いや、そう言われましても)
 どうしろって言うんだろう。おれ、まだ魔法陣の上にいるんだけど。迂闊に動いたらヤバい魔法が発動したりしない?
 と、おれが為す術なく床に座り込んでいると。

「使い魔様!」

 さっきまでとは違う、女の人の声が部屋に響いた。
 使い魔……って、おれのことだよね。さっきアッシュ様がそう言ってたし。
 見れば、数人の女の人が、部屋に入ってきていた。手分けして窓を開けたり、物をどかしたりしている。そのうちの一人がおれのところにやって来て、ぺこりとお辞儀をした。

「私どもはこの屋敷のメイドでございます。アッシュ様はお忙しいので、私どもが使い魔様へのご案内をさせていただきますね」

(……メイド!)
 長いスカート、白いエプロン。絵に描いたようなクラシックメイドだ。
 異世界でもメイドさんってこんな感じなんだ。いいなぁ、清楚かわいい。

「使い魔様には、お名前はあるのですか?」

 そう尋ねられて、おれはハッと我に返った。いけないいけない、かわいいものに気を取られてた。

「萌、っていいます」
「メグム様! まあ、素敵なお名前ですこと」

 『萌』って書いて『メグム』。なかなか正しく読んでもらえない名前だけど、見た目も響きもかわいいから、自分ではわりと気に入ってる。……あっでも、この世界に漢字はないのか。なら読み間違えられることももうないのかな。

「えーっと……これ、動いて大丈夫ですか?」
「ええ、使用済みの魔法陣ですから大丈夫ですよ。もう魔力も残っていませんからね」

 ほっ。そんな危険なトラップではないと。
 おれは、そろりと立ち上がってみる。立つのも、歩くのも、問題なく出来そうな感じだ。

 まあ、とりあえずは何とかなりそう……かな?
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