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対抗戦編
対抗戦2
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なんとか、竜生をしとめることはできた。
たぶん、丸爺の鬼指導がなければ乗り切れなかった。こればっかりは、感謝しておかないと。
残りは、サツキだけだ。一対一に持ち込めばまだ勝機はある。さっきよりは勝率があがった。
「あら、竜生はやられたの?」
来た。
竜生を飛ばしたときにできた土煙のせいでまだ見えないがシルエットはわかる。
「仕方ないわ。それなら、私がルミをやるしかないわね」
土煙の中のシルエットがこっちにむかい始める。
突っ込んでくる。これなら、攻撃を流してカウンターを決めれ・・・。
そう思った刹那、悪寒がはしる。
本能がよけなければ死ぬと告げている。これは・・・まずい。
「鬼島式・・・」
声のする方向を確認してそこから足に金剛を集中させて回避に全力をかける。
土煙の中からこぶしが見え、すんでのところでよける。
土煙が一瞬にして消える。こぶし一振りで突風がおきた。
お互いの距離が視認できる。顔がはっきりと見える。サツキの目が赤い。火のように燃えるように赤いのに雰囲気は背中が凍るほど冷たい。
「もしかして、今のでビビった?」
「まさか。さっきとまったく雰囲気が違うけどいまさら本気になったの?」
「さっきまで本気になっていないわけじゃないの。ただ、異能が発動すると倫理感や理性のブレーキがかからなくなるから。そのせいで、さっきからあなたを殺したくてたまらないわ」
これはまずいよね、たぶん・・・
サツキが嘘を言っていないことは伝わってくるし、さっきから運営本部が慌てている感じも伝わってくる。ほんとうは棄権してでもやめるべきなんだろうけどここでは引くわけにはいかない。やめてしまえば、これまでの努力が努力しただけになってしまう。
たとえ負けであっても、負けという結果を残すことに少なからず意味はあるはずだ。
「どうしたのルミ?早く続きを第二ラウンドを始めましょう。これで、邪魔者はいなくなったのだから」
ほんとうに、余裕な顔をして楽しんでいるように見える。
私は、少し距離をとり構えなおす。
「いいわ。やっぱり、そうでなくちゃ困るわ」
お互いに間合いに入らないようにしながら距離を詰めていく。模造刀とはいえこちらには刀があり、あっちは素手だ。
お互いをにらんだまま、今の場所から一歩も動かない。
じれったい。
じれったい。
じれったい。
ただ早とちりをすれば、自分がやられる。
逆に、遅れればそれで決着がつく。
観客も今か今かと待ち、静まり返る。
聞こえるのは風とタイマーの数字がめくれる音。
タイマーの数字がめくれる感覚がだんだん遅くなっていくような気がする。
風は止み場外から入ってきた一枚の葉っぱが地面に落ちる。
今だ!!
動き出しはほぼ同時。
「金剛系・・・」
「鬼島式」
「爆砕拳!!」
こぶし同士が同じタイミングでぶつかる。
もう一撃いれ・・・。
ボキッ
「へっ?」
「あらら、残念。仕方ないわ」
何が起きたかもわからないまま、左脇に強い衝撃がはしり、さつきが遠くになっていく。
とりあえず、立たないと。
両手に力をこめて起き上がろうとする。
思った以上に上半身が起き上がらない。
そういえば、私の右腕はどこ?
「うあああああああ!」
静まり返った会場で私の叫び声が響き渡る。
いたい、いたい、イタイイタイ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「痛そうね。でも大丈夫、腕が変な方向に曲がってるだけだわ。ほらっ」
サツキが私の腕を正しい方向に直す。
再び私の叫び声が響き渡る。
観客はだれもみようとはしない。止めようとはしない。もし動けば、この大会が終わってから報復を受けるのではないかと思い動くことも助けることもできない。そもそも、助けにすらならない。
「かわいそうに、だれも助けてくれないのね」
私の顔を見ずにサツキは話し続ける。
「今回の一件で分かったでしょう。凡人は才能のある人間に対してどんな努力をしても意味がないってこと。これが生まれ持った、才能の差。凡人と才能のあるものの完全な隔たり。一生埋まらない差なの。わかる?だから、凡人があなたたちが何人集まって努力したところでかわらない」
「・・・さい、うるさい!!金剛斬!」
手元にあった刀を振って少しでもサツキを遠ざける。
自分を否定されていつき先輩やさやたちを否定されてはらわたが煮えくり返る。
私はなんとかして、刀を支えに起き上がる。
「殺す殺す殺す殺す殺す」
「いまさら殺気立っても遅いわ。片腕で戦う気?両腕あっても負けたのに勝てるわけないでしょ。そうね、勝ちたいなら人間をやめて命を懸ければ勝てるんじゃない。まあ、無理だろうけど」
「そうか、それならいいのね。ハハハハハっ」
叫び声ではなく笑い声が会場に響き渡る。どうやら、私は頭がおかしくなってしまったらしい。
「何がおかしいの」
「気にしないで、ちょっと頭のねじが二、三本抜けたみたい。カートリッジ起動」
<Start-Up>
<Select your movement to next>
無機質な機械音声が鳴る。
「エクストラカートリッジ」
<NO.0 Extra Are you ready?>
<Inject>
「人間やめれば勝てるのよね」
「やめられるならね」
そうか、それならやってやる。
「人間なんていくらでもやめてやる!!」
たぶん、丸爺の鬼指導がなければ乗り切れなかった。こればっかりは、感謝しておかないと。
残りは、サツキだけだ。一対一に持ち込めばまだ勝機はある。さっきよりは勝率があがった。
「あら、竜生はやられたの?」
来た。
竜生を飛ばしたときにできた土煙のせいでまだ見えないがシルエットはわかる。
「仕方ないわ。それなら、私がルミをやるしかないわね」
土煙の中のシルエットがこっちにむかい始める。
突っ込んでくる。これなら、攻撃を流してカウンターを決めれ・・・。
そう思った刹那、悪寒がはしる。
本能がよけなければ死ぬと告げている。これは・・・まずい。
「鬼島式・・・」
声のする方向を確認してそこから足に金剛を集中させて回避に全力をかける。
土煙の中からこぶしが見え、すんでのところでよける。
土煙が一瞬にして消える。こぶし一振りで突風がおきた。
お互いの距離が視認できる。顔がはっきりと見える。サツキの目が赤い。火のように燃えるように赤いのに雰囲気は背中が凍るほど冷たい。
「もしかして、今のでビビった?」
「まさか。さっきとまったく雰囲気が違うけどいまさら本気になったの?」
「さっきまで本気になっていないわけじゃないの。ただ、異能が発動すると倫理感や理性のブレーキがかからなくなるから。そのせいで、さっきからあなたを殺したくてたまらないわ」
これはまずいよね、たぶん・・・
サツキが嘘を言っていないことは伝わってくるし、さっきから運営本部が慌てている感じも伝わってくる。ほんとうは棄権してでもやめるべきなんだろうけどここでは引くわけにはいかない。やめてしまえば、これまでの努力が努力しただけになってしまう。
たとえ負けであっても、負けという結果を残すことに少なからず意味はあるはずだ。
「どうしたのルミ?早く続きを第二ラウンドを始めましょう。これで、邪魔者はいなくなったのだから」
ほんとうに、余裕な顔をして楽しんでいるように見える。
私は、少し距離をとり構えなおす。
「いいわ。やっぱり、そうでなくちゃ困るわ」
お互いに間合いに入らないようにしながら距離を詰めていく。模造刀とはいえこちらには刀があり、あっちは素手だ。
お互いをにらんだまま、今の場所から一歩も動かない。
じれったい。
じれったい。
じれったい。
ただ早とちりをすれば、自分がやられる。
逆に、遅れればそれで決着がつく。
観客も今か今かと待ち、静まり返る。
聞こえるのは風とタイマーの数字がめくれる音。
タイマーの数字がめくれる感覚がだんだん遅くなっていくような気がする。
風は止み場外から入ってきた一枚の葉っぱが地面に落ちる。
今だ!!
動き出しはほぼ同時。
「金剛系・・・」
「鬼島式」
「爆砕拳!!」
こぶし同士が同じタイミングでぶつかる。
もう一撃いれ・・・。
ボキッ
「へっ?」
「あらら、残念。仕方ないわ」
何が起きたかもわからないまま、左脇に強い衝撃がはしり、さつきが遠くになっていく。
とりあえず、立たないと。
両手に力をこめて起き上がろうとする。
思った以上に上半身が起き上がらない。
そういえば、私の右腕はどこ?
「うあああああああ!」
静まり返った会場で私の叫び声が響き渡る。
いたい、いたい、イタイイタイ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「痛そうね。でも大丈夫、腕が変な方向に曲がってるだけだわ。ほらっ」
サツキが私の腕を正しい方向に直す。
再び私の叫び声が響き渡る。
観客はだれもみようとはしない。止めようとはしない。もし動けば、この大会が終わってから報復を受けるのではないかと思い動くことも助けることもできない。そもそも、助けにすらならない。
「かわいそうに、だれも助けてくれないのね」
私の顔を見ずにサツキは話し続ける。
「今回の一件で分かったでしょう。凡人は才能のある人間に対してどんな努力をしても意味がないってこと。これが生まれ持った、才能の差。凡人と才能のあるものの完全な隔たり。一生埋まらない差なの。わかる?だから、凡人があなたたちが何人集まって努力したところでかわらない」
「・・・さい、うるさい!!金剛斬!」
手元にあった刀を振って少しでもサツキを遠ざける。
自分を否定されていつき先輩やさやたちを否定されてはらわたが煮えくり返る。
私はなんとかして、刀を支えに起き上がる。
「殺す殺す殺す殺す殺す」
「いまさら殺気立っても遅いわ。片腕で戦う気?両腕あっても負けたのに勝てるわけないでしょ。そうね、勝ちたいなら人間をやめて命を懸ければ勝てるんじゃない。まあ、無理だろうけど」
「そうか、それならいいのね。ハハハハハっ」
叫び声ではなく笑い声が会場に響き渡る。どうやら、私は頭がおかしくなってしまったらしい。
「何がおかしいの」
「気にしないで、ちょっと頭のねじが二、三本抜けたみたい。カートリッジ起動」
<Start-Up>
<Select your movement to next>
無機質な機械音声が鳴る。
「エクストラカートリッジ」
<NO.0 Extra Are you ready?>
<Inject>
「人間やめれば勝てるのよね」
「やめられるならね」
そうか、それならやってやる。
「人間なんていくらでもやめてやる!!」
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