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第5話 ヒロインは悪役令嬢に勝ちたい!〔中編〕
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シャーロット様に『わたくしと親しくなりたければ何かひとつでもわたくしに勝ってみなさい!』って言われてから一週間、私はあれから毎日シャーロット様に勝負を挑み続けている。
初日は語学、二日めは計算問題、三日めはピアノ、四日めが歌、昨日の五日めがゲームでもミニゲームになってたカードゲーム。そして六日めの今日は取って置き!私が得意なダンス!!
勝負結果が出てダンスホールから出たら、丁度シャーロット様を迎えに来たライアン様に会った。今日も女の子に囲まれてますなぁ。
「ごきげんようミーシャ嬢」
ライアン様は常にシャーロット様とご一緒だから、シャーロット様へのアプローチの為必然的に毎日顔を合わせてたおかげで今やすっかり彼とも顔見知りになってしまったので、私に気づいたライアン様はにこやかに声をかけてくれる。
ギロッと一斉に向いたライアン様ファンの眼差しは無視して、にこっと笑ってスカートの裾をつまんで膝を折る。よく絵本でドレスのお姫様とかがやっていた、プリンセスやお嬢様特有のご挨拶だ。まさかこれを堂々とやれる立場の女の子になれるなんて!!転生してよかった!!!!
「今日はずいぶんと機嫌がいいね。勝負の結果はどうだったのかな?」
「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれました!」
「えっ、じゃあまさか……!」
「明日はかけっこ勝負を挑みに来ますね!!」
「あ、なんだ、いつも通り負けたんだね」
「当たり前でしょう、このわたくしがこのような子に負けるはずがございませんわ」
ぶいっと手をつき出した私に苦笑するライアン様に、私の背後から現れたシャーロット様が呆れ顔で言う。
「あっ!シャーロット様っ、ダンスで疲れましたし今日こそこのあとお茶でも「行きません」そうですか、じゃあまた明日ですね!」
「全く傷つきもせずに即答で明日の予定に話を切り替えるのいい加減止めてくれ……っ下さる?」
「あれ?シャーロット様、今なんか口調が……」
呟いた途端、扇で口元を隠したシャーロット様がぷいっとそっぽを向く。クール美女のツンデレ仕草美味しいです、ありがとうございます。
「ーっ!失礼、怒りのあまり口調が乱れましたわ。本日の勝負はもう済んだのですから、わたくしは帰らせていただきますわ」
「はい!また明日会いに来ますからねーっ!!」
いつもより更に早足で去っていくシャーロット様に全力でブンブンと手を振って見送っていたら、ふと隣から視線を感じた。いつもならシャーロット様を追って去っていくはずのライアン様がじっと私を見てるせいだ。
「私から聞くのも何だけれど……、君は本当にシャーロットが好きなの?毎日毎日勝負に負けてはつれなくされて、悔しくなったり、シャーロットが嫌いになったりしないのかい?」
少し言いづらそうな顔のライアン様の言葉に一瞬きょとんとしてしまった。
「嫌いになんてなるわけないじゃないですか!寧ろこの一週間でもっと好きになりました!!」
「あれだけこてんぱんにされているのに……。理由を聞いても?」
「だって、勝負をしてみて更に良くわかったんです。シャーロット様はどの分野で戦っても基礎からしっかりしてて完璧なんですもん。それって、単に才能だけじゃなくてシャーロット様ご自身が昔からずっと努力して色んな力を得てきたからあんなにすごいんだってことですよね!ますます憧れちゃいます!!」
「……っ!」
でもだからこそあきらめない!私も頑張ってシャーロット様に追い付いて、お友達になってみせる!
「……なるほど。こりゃ面白い、この子の影響であいつがどれだけ変わるか見ものだな」
「へ?」
「なんでもないよ」
ライアン様にシャーロット様の魅力を語って気合いも入り直した時、ぼそっとライアン様がなにかを呟いた気がして顔をあげた……ら、ポンポンと頭を撫でられた。
ライアン様の手がそっと離れた自分の頭を触りながら首を傾げる。
「何ですか?急に、髪が乱れちゃうじゃないですか~。せめて見た目もちょっとはシャーロット様に近づこうって朝メイドに可愛くしてもらったのに」
「ははっ、やはり反応も他のお嬢さん方とは違うね……。そう怒らないでくれ、今のは私からのほんの応援だよ。明日こそは君が勝利出来るよう、私も祈っているから」
「はぁ、ありがとうございます……」
「……ふっ、笑える間抜け面」
あっ、またボソッとなんか言った!全然聞き取れなかったけど、なんか悪口だった気がするぞ……!この人ゲームでも実際腹黒だったし!
「むぅ……」
「ふふ、時間を取らせてすまなかったね。ではミーシャ嬢、また明日お会いしましょう」
じとーっと怪しむ気持ちを視線に込めて睨み付ける私の手をわざとらしいくらいスマートな動きで取ったライアン様は、王子様らしく膝をついて手の甲にキスをしてから去っていった。ごめんライアン様、正直微塵もときめかなかったわ。
でもなんかよくわかんないけど、ライアン様も応援してくれるし明日こそいいことありそうな気がする!
そんなわけで翌日の放課後も、私はチャイムと同時に教室から飛び出した。今日はかけっこ勝負を挑むつもりなので、外履きに履き替えるために下駄箱を開ける。
中から上品な花柄の便箋がひらりと落ちた。
「あれ、なんだろこれ……」
『先日は冷たくしてしまいごめんなさい。本日ならば時間があるので、ゆっくりお話でもいかがかしら?この手紙を読んだら、“お一人”で裏庭にある東屋までいらっしゃい』
ざっと目を通した手紙を握りしめて震える。
「こっ、これはシャーロット様からのアフターデートのお誘い!いや、私別に女の子が好きな訳じゃないけど!!でもやったぁ!今すぐ参りまーす!!」
喜びのまま全力疾走して、手紙にあった指定場所に五分とかからずに着いた。のはいいんだけど、目の前の建物に違和感がすごい。
「な、なんかこの学院らしくないふっるい小屋……。東屋ってより物置みたい。シャーロット様も居ないし……。シャーロット様、居ませんかー?」
もしかしたら中に居るのかもと思って、今にも屋根が剥がれそうなその小屋の、これまた錆びた扉の隙間から中を覗き込んだ時だ。
「きゃっ!!」
突然背中を思い切り押されて中に転がり込む。古いマットに突っ込んでほこりが舞う。薄暗い中で舞うほこりって、光でキラキラ光って意外と綺麗だななんてのんきな私の後ろで、重たい鉄扉がガチャンと勝手に閉まった。
~第5話 ヒロインは悪役令嬢に勝ちたい!〔中編〕~
『もしかして……、閉じ込められた?』
初日は語学、二日めは計算問題、三日めはピアノ、四日めが歌、昨日の五日めがゲームでもミニゲームになってたカードゲーム。そして六日めの今日は取って置き!私が得意なダンス!!
勝負結果が出てダンスホールから出たら、丁度シャーロット様を迎えに来たライアン様に会った。今日も女の子に囲まれてますなぁ。
「ごきげんようミーシャ嬢」
ライアン様は常にシャーロット様とご一緒だから、シャーロット様へのアプローチの為必然的に毎日顔を合わせてたおかげで今やすっかり彼とも顔見知りになってしまったので、私に気づいたライアン様はにこやかに声をかけてくれる。
ギロッと一斉に向いたライアン様ファンの眼差しは無視して、にこっと笑ってスカートの裾をつまんで膝を折る。よく絵本でドレスのお姫様とかがやっていた、プリンセスやお嬢様特有のご挨拶だ。まさかこれを堂々とやれる立場の女の子になれるなんて!!転生してよかった!!!!
「今日はずいぶんと機嫌がいいね。勝負の結果はどうだったのかな?」
「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれました!」
「えっ、じゃあまさか……!」
「明日はかけっこ勝負を挑みに来ますね!!」
「あ、なんだ、いつも通り負けたんだね」
「当たり前でしょう、このわたくしがこのような子に負けるはずがございませんわ」
ぶいっと手をつき出した私に苦笑するライアン様に、私の背後から現れたシャーロット様が呆れ顔で言う。
「あっ!シャーロット様っ、ダンスで疲れましたし今日こそこのあとお茶でも「行きません」そうですか、じゃあまた明日ですね!」
「全く傷つきもせずに即答で明日の予定に話を切り替えるのいい加減止めてくれ……っ下さる?」
「あれ?シャーロット様、今なんか口調が……」
呟いた途端、扇で口元を隠したシャーロット様がぷいっとそっぽを向く。クール美女のツンデレ仕草美味しいです、ありがとうございます。
「ーっ!失礼、怒りのあまり口調が乱れましたわ。本日の勝負はもう済んだのですから、わたくしは帰らせていただきますわ」
「はい!また明日会いに来ますからねーっ!!」
いつもより更に早足で去っていくシャーロット様に全力でブンブンと手を振って見送っていたら、ふと隣から視線を感じた。いつもならシャーロット様を追って去っていくはずのライアン様がじっと私を見てるせいだ。
「私から聞くのも何だけれど……、君は本当にシャーロットが好きなの?毎日毎日勝負に負けてはつれなくされて、悔しくなったり、シャーロットが嫌いになったりしないのかい?」
少し言いづらそうな顔のライアン様の言葉に一瞬きょとんとしてしまった。
「嫌いになんてなるわけないじゃないですか!寧ろこの一週間でもっと好きになりました!!」
「あれだけこてんぱんにされているのに……。理由を聞いても?」
「だって、勝負をしてみて更に良くわかったんです。シャーロット様はどの分野で戦っても基礎からしっかりしてて完璧なんですもん。それって、単に才能だけじゃなくてシャーロット様ご自身が昔からずっと努力して色んな力を得てきたからあんなにすごいんだってことですよね!ますます憧れちゃいます!!」
「……っ!」
でもだからこそあきらめない!私も頑張ってシャーロット様に追い付いて、お友達になってみせる!
「……なるほど。こりゃ面白い、この子の影響であいつがどれだけ変わるか見ものだな」
「へ?」
「なんでもないよ」
ライアン様にシャーロット様の魅力を語って気合いも入り直した時、ぼそっとライアン様がなにかを呟いた気がして顔をあげた……ら、ポンポンと頭を撫でられた。
ライアン様の手がそっと離れた自分の頭を触りながら首を傾げる。
「何ですか?急に、髪が乱れちゃうじゃないですか~。せめて見た目もちょっとはシャーロット様に近づこうって朝メイドに可愛くしてもらったのに」
「ははっ、やはり反応も他のお嬢さん方とは違うね……。そう怒らないでくれ、今のは私からのほんの応援だよ。明日こそは君が勝利出来るよう、私も祈っているから」
「はぁ、ありがとうございます……」
「……ふっ、笑える間抜け面」
あっ、またボソッとなんか言った!全然聞き取れなかったけど、なんか悪口だった気がするぞ……!この人ゲームでも実際腹黒だったし!
「むぅ……」
「ふふ、時間を取らせてすまなかったね。ではミーシャ嬢、また明日お会いしましょう」
じとーっと怪しむ気持ちを視線に込めて睨み付ける私の手をわざとらしいくらいスマートな動きで取ったライアン様は、王子様らしく膝をついて手の甲にキスをしてから去っていった。ごめんライアン様、正直微塵もときめかなかったわ。
でもなんかよくわかんないけど、ライアン様も応援してくれるし明日こそいいことありそうな気がする!
そんなわけで翌日の放課後も、私はチャイムと同時に教室から飛び出した。今日はかけっこ勝負を挑むつもりなので、外履きに履き替えるために下駄箱を開ける。
中から上品な花柄の便箋がひらりと落ちた。
「あれ、なんだろこれ……」
『先日は冷たくしてしまいごめんなさい。本日ならば時間があるので、ゆっくりお話でもいかがかしら?この手紙を読んだら、“お一人”で裏庭にある東屋までいらっしゃい』
ざっと目を通した手紙を握りしめて震える。
「こっ、これはシャーロット様からのアフターデートのお誘い!いや、私別に女の子が好きな訳じゃないけど!!でもやったぁ!今すぐ参りまーす!!」
喜びのまま全力疾走して、手紙にあった指定場所に五分とかからずに着いた。のはいいんだけど、目の前の建物に違和感がすごい。
「な、なんかこの学院らしくないふっるい小屋……。東屋ってより物置みたい。シャーロット様も居ないし……。シャーロット様、居ませんかー?」
もしかしたら中に居るのかもと思って、今にも屋根が剥がれそうなその小屋の、これまた錆びた扉の隙間から中を覗き込んだ時だ。
「きゃっ!!」
突然背中を思い切り押されて中に転がり込む。古いマットに突っ込んでほこりが舞う。薄暗い中で舞うほこりって、光でキラキラ光って意外と綺麗だななんてのんきな私の後ろで、重たい鉄扉がガチャンと勝手に閉まった。
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