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 あれ・・・?と目を閉じながら、私は不思議な浮遊感を覚えていた。

 夢か現実か分からないうたかたの世界で私は揺られていた。

 そして、私はゆっくりと目を開く・・・。


「えっ・・・なにこれ」と呟き、私は驚いてしまう。


 気づくと、私は部屋の上空でプカプカと浮いていた。

 それは比喩ではなく、どうやら本当に浮いているようなのだ・・・

 ・・・どうやらまだ夢を見ているらしい。

 しかし、この浮遊感は悪くはなかった。まさに夢見心地という奴だ。

 この感覚に身を任せていたい・・・。

 そこで私はこの浮遊感を存分に味わうために部屋の窓を開けて、外に出ることにした。

 そして、私は大空へ向けて一気に羽ばたきたいと念じたのだ。

 ぴゅううううううと空気音と共に私は一気に速度を上げていく。


「はぁ・・・いい風・・・」と呟きながら、私は夜風に吹かれていた。


 心地よい風が私の全身を包み込む。私は両手を広げて風を感じていた。

 目を薄いて眼下を見てみれば、夜の街の明かりが地上を照らしていた。

 その光景はまるで、宝石箱のようだった。


「綺麗・・・」と思わず呟いてしまうほどだ。


 これが現実のことじゃないのだけがただただ惜しかった・・・

 しかし、せっかくこれだけいい夢を見ているのだから、もっと続きを見たかった。

 この夢の中では私の念じたことが具現化するようだった。

 この夢の世界では文字通り、私は神様になっていた。


「ふふっ・・・面白いじゃない・・・」と私はニヤリと微笑んだ。


 では、まず何して遊ぼうかと私は考える。

 そして、空の散歩をしていた時、ふと、学校で私に嫌がらせをしているリーダー格の女子の家が私の目に飛び込んできた。

 以前、プリントを彼女の家に配りに立ち寄ったことがあったから覚えていたのだ。

 噂によると、以前私の椅子の上に画びょうを置くのを指示したのも彼女だという。


「・・・・なんで、私の夢に出てくるの・・・?」と私は不快に思った。


 こんな夢の中でも私を不快にさせるとはね・・・。


「貴方の家なんて私の夢の中じゃ不要よ。どうしてやろうかしらね・・・」と私は呟いた。


 出来るだけすっきりする方法で消してやりたい。

 普段の恨みもあるし、出来るだけ残酷な方法でかつ、あの女子に自らの愚かさを思い知らせられるような方法はないだろうか?と私は考えた。

 あの女子はいつも私のことを「デカブス女」と呼んで陰で蔑んでいるようだ。自分の身長が小さいことをコンプレックスに感じ、それで私に八つ当たりをしているのだろう。

 ・・・だったら、そのコンプレックスをより強く刺激するような方法はないだろうか?と私は思いついたのだ。


「ふふっ。いい方法思いちゃった♪」と私は笑った。


 私は女子の家の上空までやってくると、彼女の家の前に静かに着地した。

 そして、家の全体を見渡しながら「じゃあ・・・はじめるわね・・・」と言ってニヤリと微笑んだ。

 私は指をパチン!と鳴らし、自分が大きくなることをイメージする。

 そう、私が思いついた良い方法というのは自分が巨大化することだった!

 そして、私の念じた通りに私の身体が大きくなっていった。

 グググッと巨大化していく感覚に私は快感を覚えてしまう。


「ふふっ・・・ちょっと気持ちいいかも」と思わず口にしてしまうほどだった。


 みるみるうちに女子の家が私の影に隠れていく。

 そして、私が巨大になった時、彼女の家を上空から見下ろすことが出来たのだ。地に足を着いた状態で。


「うわぁ!すごい!!本当に私大きくなっちゃった!!」と驚きながらも私は興奮を隠せなかった。


 夢の世界とはいえ、自分がこんなことが出来るなんて信じられなかった。

 この辺りは住宅街なのだが、私の身長より高い建物はなかった。


「巨人になるって、こんな感覚なんだ・・・」と私は感動していた。


 試しに女子の家の上に足をかざしてみると、私の足裏とほぼ同じ大きさしかなかった。

 文字通り一踏みで家を踏み潰せる程の巨人に私はなっていた。


「ふふっ・・・なんて小さいの」と笑ってしまう。


 そして、私は女子の家の窓を覗き込む。

 すると、そこには恐怖で顔を引きつらせた彼女の姿があった。

 どうやら異変に気づいて起きたようだ。


「ふふっ。良い表情してるじゃない・・・」と私はニヤリと微笑む。


「ねぇ?私って大きいでしょ?」と私は彼女に問いかける。


 しかし、彼女は何も答えない。ただ、ガタガタ震えているだけだ・・・。

 そんな様子にイラッとした私はさらに彼女に近づくことにした。


「ちょっと!聞いてるんだけど!!」と言って彼女を怒鳴りつけたのだ。


 彼女は「ひっ!」と悲鳴を上げると、腰を抜かしてしまったようだ。

 しかし、私はそんなことを気にせずに彼女に話しかける。


「ねぇ?聞いてるの?」と言うと私はそのまま四つん這いになった状態で彼女の家に覆い被さる様にして窓から彼女を覗き込む。


 家よりも遥かに大きい巨人が怖かったのだろう。彼女はついに泣き出してしまった。


「ごめんなさい!ごめんなさい!!」と言って泣きじゃくる彼女を私は容赦なく睨みつける。


「貴方って本当に小さいわね。ふふっ・・・まるで虫みたい・・・」と言ってやった。


 すると、彼女は「ごめんなさい!許してください!」と必死に訴えてくる。

 しかし、私は許さない。


「だめよ。貴方みたいな奴には天罰を与えてあげないとね」と言って私は立ち上がり、足を彼女の家にゆっくりと踏み降ろす。


 そして、そのまま彼女の家を押しつぶしていく・・・グシャッ!!っと私の体重で家が潰れていく感覚があった。


「あはっ!潰れちゃった♪」と言って私は笑った。


 そして、私はそのまま彼女の家を跡形もなく踏み潰してしまった。

 まるで、虫をプチッと潰したような感覚だった・・・。

 その感触に私はゾクッと快感を覚えてしまう・・・。


「あぁ・・・気持ちいいかも・・・」と思わず口にしてしまうほどだった。


 巨人になるのが癖になってしまいそうである。

 こんなことが出来るなんて夢のようだ。

 私は踏み降ろした足をどかして、嗜虐的な笑みを浮かべて見下ろした。

 瓦礫に変わり果てた家の中に、潰れて赤黒い肉塊に変わり果てたものが2つ3つ確認できる。

 彼女の家族もろともどうやら踏み潰してしまったようだ。


「ふふっ・・私って意外と残酷なのかもね・・・」と呟く。


 しかし、別に罪悪感はなかった。むしろ、もっと踏み潰したいと思ってしまうほどだった。

 所詮これは夢なのだ。夢の中でくらいすっきりしたい。


「・・・しかし、流石にちょっと、あっさり殺しすぎたかな?もうちょっと、あいつで弄びたかったんだけどね・・・」


それも仕方ない。足裏から伝わるあまりの感触の良さにそのまま足を踏み降ろしてしまった。

あの快感の波に抗うなんて私には出来なかった。


「あれ・・・でも待てよ・・・?」


 そこでふと私は気付く。

 別に夢の世界なら何でもありなはずだ。それなら・・・と思い私はある事を試すことにした。

 私は潰れた残骸に向かって手を掲げると、”再生”のイメージを頭の中に思い描いてみた。

 すると、潰れた残骸はグニャリと蠢き始めたかと思うと、徐々に元の形を取り戻していったのだ!

 まるで時間が巻き戻るかのように家々が修復され、中で潰された人間も元の姿に戻っていく・・・。


「えっ・・・?」と私は驚いてしまう。


 まさか本当に出来るとは思っていなかったからだ。

 そして、完全に元通りになった家を見て私は感動してしまう。

 まさに奇跡だった。まあ、夢の世界だからこそ出来たことなのだろうけど・・・。


「ふふっ・・・なんだ、出来るじゃない」


 私は元通りになった家と、家の中で茫然自失になっている彼女の姿を眺めながら、ニヤリと笑う。

 ・・・これでもっと楽しめそうだ。

 そう思って、私は家の中にいる彼女を摘み出そうと手を伸ばすのだが・・・


「あ、あれ・・・?」


 ・・・次の瞬間、私は立ち眩みがしたかと思ったら、みるみる身体が小さくなっていくことに気づいた。

 そして、気がつくと私の身体は元の大きさに戻っていたのだ!


「え・・・なんで?」


 驚いた私は再度巨大化をしようと念じるのだが、何故か出来なかった。

 まるで自分の身体からエネルギーが抜けてしまったような感覚だった。

 えっ・・・どうして?力使い過ぎた的な感じ?夢の中なのに・・・?

 そう頭の中に疑問符がいっぱい浮かんできてしまう。

 幸いなことに空を飛ぶことはまだ出来るみたいだった。

 ・・・まあ、巨大化出来なくなったことは仕方ない。所詮は夢だ。

 少し残念だが、これで諦めるとしよう。それにもう、十分すっきりした。

 彼女を家ごと踏み潰してやったのだ!意趣返しとしては十分すぎるほどだろう。

 そして、私はふわりと浮かび上がると、空から彼女の部屋の様子を伺った。

 彼女は相変わらず視線が定まっておらず、心ここにあらずという感じだった。

 そんな彼女に私はニヤリと微笑んで言う。


「ふふっ・・・嫌がらせの件はこれでチャラにしといて上げるわよ。感謝してよね?」


ふと、彼女の視線が空中にいる私に向かって来たので、私は彼女にウィンクをしてやる。


「じゃね♪」と言って私はそのまま飛び立ったのだった・・・。










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