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インターミッション Bullet for My Birthday

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「まァその、なんトいうカ、簡単に言うとダ サプラーイズ?」
「…………」
 さてリベルタの混乱はいかばかりだろうか、客から宝探しの依頼を受け、謎のネイティブニンジャに追いかけられ、ニンジャマスターに指を詰められ、挙句に逃げ込んだ遺跡船の中でハッピーバースデー?

「もー!頭がおかしくなりそう!だいたい、誕生日はもうとっくに過ぎてるし!どうなってるの!?」
「落ケ着けってリベルタ 俺ダってコんな形でココに来るコとニなるとハ思ってモ無かっタ ほら、アいツが死ぬ直前に連絡がアっだろう?
 この星ニ来なさイって アイツはこの場所ガいたく気にイってなぁ コこでパーティーを開コうって言イ出しタんだよ」

「はぁー…… イカれてるけどパパらしいわ……」
「7つのお祝イの時ハ無人島で暴風雨ノ中で祝ったナぁ!」
「8才の時なんか戦場でケーキを焼いたわ 火炎放射器の燃料で」
「良イ思いでダ」
 少女は沈黙と憮然とした表情で答えを返した。
「マァマァ、ふテくされるナよ 今回のハまぁマシな方だろ?」
「外でニンジャが私を狙ってなければね それで、あいつらも狙ってたお宝ってなに?」

 格納庫の一部のライトが出し抜けに点灯し、一箇所にスポットライトが当たる。
 そこにはマルティニのオフィスで見たピラミッド型の物体が鎮座しており、手書きの文字で''ドレッドホークより、リベルタへ''と書かれていた。
 リベルタが手を触れようとしたとき、かすかなアコースティックギターの音と共に音声が流れ始めた。
<<あー、あー うっ、ううんっ よし、もう回ってるな?
 あーこの音声は念のために録って置いたものだ 
 念のためってのは……ほら、俺はガンマンでいつ死ぬか判らないだろ?
 ガンマンってのは突然死ぬもんだ

 撃たれたりとか銃の暴発とか、崖から落ちるとか、酒の飲みすぎとか性病とかで簡単に死ぬ
 あー、最後のは無しだ 聞かなかったことにしてくれ>>

 流れ出した声は伝説的ガンマンでリベルタの父親であるドレッドホークの声だった。
 少女は驚きのあまり口を両手で塞いだまま硬直していた。

<<あーそうだこれ言っておかないとな この音声を聞いてるって事は多分俺は死んだんだろう
 だがリベルタ、君には強く生きてほしい……これって最初にいれるべきだったか?
 とにかくだ、俺がいつも言ってるようにお前は誰よりも強くなってほしい
 強いってのは単に撃ちあいで負けないって事じゃない
 誰かを助けたりとか何か世の中のためになる事をするのも強さだ 

 パパはお前をいつも助けてる もちろんお前だってパパのことを助けている
 だから俺たちは強いんだ
 ええと、何を言いたかったんだっけ? そうそう、誕生プレゼントなんだがな
 毎年銃だのミサイルだのってんじゃ面白くないからな
 今年は取って置きのを入れて置いた 空けてびっくりしてくれよ そしてそれを…… 
 良いことのために使え、リベルタ それじゃぁな、ドレッドホーク、アウト>>

「パパ……」
 神妙な面持ちで聞いていた少女の瞳が潤み、涙が頬に橋を作る。
 小さくえづきつつもそっとピラミッドに手を伸ばした。

<<そうそう、一応銃のほうが良かったって言われたときのために銃も用意してあるぞ、心配するなよ!
 ああ、あと俺が居なくてもちゃんと歯は磨いて、髪の毛も毎日梳かすこと、いいな? よしそれじゃぁ今度こそ…>>

「パ、パパ……」
<<最後にもうひとつ!実はお前の隠してたババロアケーキを食べたの俺なんだ すまない!許してくれ!! レッドホークアウト!>>

「…………パパ」
「あーそノ何ダ…… まぁ奴ハあマリ良イ父じゃぁ無いナ……」
「最悪」

 Beep!Beep!Beep!船内のブザーが突然鳴り始めた。同時に船がかすかに振動する。
「外壁のドアガ開いてテる! クそっやっパりか!」
「閉じられないの!?」
「ダメだ 精一杯妨害はしてるが、マスターキーが使わレてル、すぐにコこに来るゾ 忘レたノか? そもソモ、この船の持ち主ハあいつラなんだ」
「ねぇパパが言ってた銃って?」
「アレだ」

 その言葉と同時に少女の居る貨物室の壁が音を立ててスライドしていく。
 そこはウエポンラックとなっており10丁ほどの銃器やナイフ、それに新品のカウボーイハットまでが、まるで工芸品の用に美しく飾られていた。
「わお…… これなら軍隊とだって戦えるわ」
 まだ血の流れ出る指の断面をテープで巻き、帽子を新品に交換した。ブーツの紐を結びなおし、ソードオフショットガンを背中につるし、ナイフを胸ポケットに突っ込み、そして自分の身長ほどもある巨大なキャノン砲を抱え上げる。
 砲のエンジンを温め、今まさに開こうとしているドアの前に少女は仁王立ちで構えた。

「さぁ来なさい、何人でも! 一人残らずぶっ殺す!」
「ま、まってくれお姉さん! 戦うつもりは無いんだ」
「はぁ?」

 小柄な三人のニンジャ達がサイバーヘルメットを外す。
 まだ幼さのこる少年……そう、昨晩スラムのはずれで出会った物売りの少年たちだ。
 さらに奥に居たボロを被った人物は故買商の老人であった。

「あんたたち、どうして?」
「僕らと長老は止めに来たんだ!ZEROや皆の事を!」「争って奪い合っても何も解決にならない」
「それじゃぁマルティニの連中と一緒だって!」

 リベルタはめまいを覚えた。一体何がどうなっているのか理解の範疇を超えていた。
 どうしてこいつらは自分の誕生日プレゼントを奪い合ってるのだろうか。
「はぁ……もう全然わかんない事だらけなんだけど…… アレは私の誕生日プレゼントよ!?パパは一体何をしてくれたわけ?」
「…… プレゼントだと…… そうか、自分の目で確かめると良い」
 と足を引きずり、ボロボロのスーツでZERO-NEMOが促した。
 リベルタはいぶかしみつつもキャノンを向けたまま下がり、例のピラミッドの位置まで来た。
 はたしてその中身とは……

 ジャジャーン!!
 安っぽい電子ファンファーレに一瞬体を振るわせつつも中身を確認する。中には一枚の紙が入っておりこう書かれていた。

---- 株式会社 マルティニ・ウェポン・ホールディングス ----
       壱百万株  IC第04786号
      本株券は当会社の定款により
      この株券所持者が上記株数
      の株主であること証する
 株式会社 
マルティニ・ウェポン・ホールディングス 
   代表取締役 マルティニ・ラッセル

「何コレ」
「見テの通り、株券ダな しカも百万株だ!ソんだケあリゃァ、あのクそ髭のおっさンも土下座するダロウな」
「弾一発分も興味ない はぁ~こんなもんのために争ってたわけ?ばっかじゃないのっ!?」
「我々には意味がある」
 ZERO-NEMOが続ける。

「それがあればマルティニの支配から抜け出すことが出来る」
「でもそれって結局マルティニの庇護下に居るってことでしょ?」
「仕方が無い タタラ社は我々を解雇した ワタシは戦士だが多くの者は違う 彼らを生かすのが戦士の使命だ」

 沈黙が訪れた。リベルタはそこらの荷物の上に座り込み、大きくため息をついて空を見上げた。
「あーもー ……パパ、あんたのせいでなんかもう滅茶苦茶よ……」
 心底疲れ果てた様子でやっとこ腰を上げリベルタは髪の毛をかきむしりながら、もう一度、これ見よがしに大きくため息をついた。
「パパの遺言でよいことのために使えって言ってたもんね それにあのウィリアムとかいう親父の土下座も見たいし」

「じゃ、じゃぁ!」「僕たちを助けてくれるのお姉さん!?」
 固唾を呑んで押し黙っていた少年たちの顔が明るくなった。驚きと喜びの混じった複雑な表情だ。
「ま、まぁ…… 仕方ないじゃん それとあたしはリベルタだよ」
「ありがとうリベルタ!」「これで皆が助かる!」「ありがとう!ありがとう!」
「あたしからも礼を言うよリベルタ」
「あー、あなた故買商の…?」
「その人は僕らの長老だよ 長老は紙切れのために争うなってみんなを説得してたんだけど皆出ていちゃって……」

「……」 
「何とか言いなさいよZERO-NEMOー」
 そっぽ向き、腕を組んで押し黙ったままのニンジャにリベルタが追い討ちを掛ける。
 この騒動の首謀者は間違いなくこの男だ。

「ワタシはすべきことしただけだ…… その、すまない
 私が知っていたのは中身のことだけだったのだ まさかお前の物だとは……」
「まぁいいよ もうどうでも良くなって来ちゃった さっさと帰って終わりにしよう」

<<<BEEEP!BEEEP!BEEEP!BEEEP!>>>
「な、何事!?」
 突如船内に赤い警告灯がともり、非常を告げる不穏な電子が響いた。
<<<コウゲキテキ エネルギー ハンノウ ケンチ コウゲキテキ エネルギー ハンノウ ケンチ >>>
<<<BEEEP!BEEEP!BEEEP!BEEEP!>>>

 衝撃音と共に船が大きく揺れた。
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