ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

9月

13

 セクハラ生徒会長こと雪平千尋。

 ゆるふわな癖っ毛アッシュシルバーに、薄い藤紫色の瞳。中身がペテンな俺もこの人の温和な雰囲気に騙された。

  勧誘はしつこいは出会いがしらに毎度人に抱きついたりベタベタしてくるわ。男の俺でもこれは訴えていいレベルだと思う。

 １つ年上ってだけで何？このバカ力。腰に回された腕から抜け出せないんですけど（号泣）




「会長、凪沙から離れて下さいっ」

「お、っと？！」




 ジタバタしていた腕を強引に引かれ、会長から引き離された俺は前につんのめりそうになる。

 慌てて態勢を整えれば、フェンス向こうにいたはずの吉良が俺の片腕を持ったまま会長を睨みつけていた。




「可愛い後輩を可愛いがって何が悪いのかな？」

「本人が嫌がってます」

「だからってフェンス飛び越えて助けにくるなんて、君も随分過保護だね」




 え？飛び越えた！？

 このフェンス2メートルはあるはずなのに、吉良の運動神経は凄い。俺は確実に保健室に行く自信がある。

 いや、それは一先ず置いといてーー



（何、この構図…）



 俺を挟んで明らかに会長を威嚇する吉良と、いつも通り穏やかで笑っているようで目が全く笑ってない会長。

 フェンスの向こう側では色めき立つ女子テニス部員達の声が聞こえる。

 校内でもモテ上位に入るイケメン2人が揃っているんだ。女子が騒がない訳はないよね。

 イケメンの部類なら吉良がモデル系なら会長はアイドル系かなー。

 …はい、すいません。現実逃避です。

  実は2人の異様な空気に足が恐怖で動けないんですぅ。