ロリコンの珍事情

tattsu君

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13話 舞踏祭開幕

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 どうも。大庭怜です。
リリスの父に初めて会って早々、鬼の形相で吠えられ気絶しました。そして、次に気がついて目を覚ますと、あら不思議。剣とか槍とか物騒なものに囲まれた部屋に寝ていたではありませんか。

 …って、まじでここどこ!?さっきまで城の中央ホールにいたはずだよね!?
そう、俺はさっきまで中央ホールの玉座前にいたのだ。リリスの父にビビって気絶した俺だったけど…。
 その時、扉がノックされリリスが入ってきた。

「やっと目が覚めたの?遅いわよ、あんたの順番もう回ってくるわよ?」

 入ってきて早々、わけのわからない事を当然のように話すリリス。
日本語でオーケーだよ~。

「いやいや、順番ってなんだよ!?てか、ここどこだよ!?俺はなにをされるんだよ!?」
「質問が多いわね…。ったく、めんどくさい…」

 えっ?おれが悪いの?ただでさえわけのわからない魔界にいるのに更にわけのわからない事が続いて戸惑ってる俺に対して言う言葉がそれなんですか?

「まぁ、いいわ。あんたは今から舞踏祭に参加することになったのよ。」

「舞踏祭?それってアレか?踊ったりするやつか?じゃあ、なんでこんな物騒なものがあるんだよ」
 
 俺は当然の疑問を言ったのだが、リリスは何行ってんのこいつって目で俺を見てきた。

「何言ってんのよ。あんたは今から戦いに行くのよ」

 ははは~。リリスも冗談が上手くなってきたぜ。あともう少しで吹き出すところだったわ!それじゃあ、舞踏祭にならないだろって。

「いや、戦いの舞って意味での舞踏祭だからね。熱き戦いをして、最後まで勝ち残った者が勝者となる、それが魔界の舞踏祭よ」

「ちょいまてーい!!!」

 いやいやいや、そんなの聞いてないぞ!?なんで俺はそんな物騒な催しに参加することになってんの!?人間界だと書類にサインが必要なレベルを超えてるよ!?

「なんで、俺がそんなモンに参加することになってんだよ!?」

 そう必死の形相でリリスに問いかけるとリリスは、少しバツの悪そうな顔をして俯き

「だって、これに参加して強い所を見せたらお父様だって認めてくれると思ったから…」
「…いや、それにしたってもう少しやり方とかがあるだろ?それに俺はそんなに…」

 強くないと言おうとしたところでどこからかアナウンスが響き渡る。

「第24試合、出場者の大庭怜、ケイネス・ブラウンはステージに上がってきてください!」

 そう言うと会場がバッと盛り上がったのが聞こえてくる。

「え?本当に俺行かないとダメなの?」
「お願い!頑張って強い所を見せないとお父さんに怜が認めてもらえないから…」

そう言って少し気まずくも悲しそうにも見える顔をするリリス。
 まぁ、いやっちゃ嫌だが、こんな顔をされたらな…

「…しょうがないな、出てやるよ」
「ほ、本当!!」

 俺が言うとリリスは表情を明るくした。俺はそんなリリスに微笑みかけ、

「ま、参加することになったなら勝てるところまで勝ち続けてみせるよ!」
「うん!応援する!」

 そう言って無邪気に笑うリリス。しかし、すぐに顔を真っ赤に染めて

「わ、私が契約した相手なんだから下手な戦いしたら承知しないんだからね!」

 そう言ってリリスは風のように走り去ってしまった。
 
 ………………今のリリス可愛かった。

 ロリコンである怜にとってさっきのリリスの表情は怜のやる気に火をつけるのには十分すぎるものであった。

「おっしゃぁぁぁぁぁ!!!勝ち残ってみせるぜぇぇぇぇ!!ヒャッホォォォォォ!!!!!」
 
 そう言ってキチガイでクレイジーにくねくねした動きをしながら怜は闘技会場に向かうのだった。

この舞踏祭が超過酷なものだとは知らずに…。




  闘技場が割れんばかりの歓声に包まれる。
  のどか乾く。汗が滝のように背を蔦って落ちていく。

  目の前にはツンツンのモヒカンをはげ頭に乗せた某漫画の世紀末にでてくる雑魚そのものが。
  堂々と仁王立ちをしつつ、背中の釘バットの如き鉄の棒に手をかけて悪そうな笑顔をこちらに向ける。
  一見ただの雑魚なのだが、明確で強い殺気を感じる。いや、覇気といった方が正しいのかもしれない。まるで、歴戦の王にも思えるほどのカリスマさえ感じさせる。
  しかし、怜としてはこの試合負けるわけにはいかない。リリスとの契約を認めてもらうには勝たねばならない。勝ち続けなければならない。認めてもらうには最低でもリリス父との戦いまで勝たなければ。

「へっ!悪いが兄ちゃんには早々にご退場願うぜ。俺のためにもここは死んでくれや」
「っ!……悪いがここで死ぬわけにはいかないんだ!この戦い俺が勝つっ!」

 こいつ絶対にネタだろ…。弱ければいいなぁ…。
  お互いに言葉を交わすとアナウンスからの指示が入る。

『ええ!それでは!試合開始の準備のためアルバート選手と怜選手は規定の位置まで移動してくださ~い!……では!行きます!レディ~』

  観客、アナウンス、選手二人がゴクリと喉をならし、今か今かと待ちわびる。

『ファイ!』

  アナウンスの一言と同時にゴングがなる。
  先程の歓声とは比較にならない音量が耳に入ってくる。爆音とはこういった感じだろう。

 そういえばこいつ名前アルバートなんだ…似合わなっっ!!

  アルバートの名前にツッコミをいれていると直感的に危機を察し、斜め前に転がり込む。
  その直後

ドガンッッッッ!!!!!!

  アルバートの姿が見えたと思ったら鉄釘の棒が降り下ろされ地面を抉る。数十メートルに渡り地面に割れ目が走る。
  怜は慌てて振り返るがそこにはすでにアルバートはおらず、再び直感のもとにすばやく屈む。 

ブオンッ!!!

  怜の真上で暴風が産み出され、その風でからだが吹き飛ばされる。

「軽いし遅いな……これは恩恵使わずに勝てちまうんじゃねぇのか?」
「ッッッ!!!」

  怜的には恩恵を使った上でこの強さだと思っていたのだが違ったようだ。
  純粋な身体能力。一瞬で背後に回り、一薙ぎで暴風を起こすそんな人間がいるとは驚きだ。化け物じゃないか。悪魔でも精霊でも神霊でもない生身の人間でこれ…。これからこんなやつらと戦争すんのかよ……。
  怜は小さく舌打ちをし、距離をとる。

「まぁなんだ?かわいそうだから恩恵使う間くらいは待ってやるよ」
「……後悔すんなよ?」
「しねぇよ別に。負けるきはしねぇし」

  人を殺す勇気はまだない…。だが、ここで負ける。死ぬわけにはいかない。契約のために…みんなを守るために…覚悟を決める。
  真剣な表情をして、ズボンのチャックを開ける。
  観客からとてつもないレベルの悲鳴が聞こえる。主催者の悪魔王や技術提供者の情報王?と経済王?も目を細め様子をうかがう。リリスも皆の反応に今ごろになってお見せできるものではないと理解し頭を抱え俯く。馬鹿げた行為にリリス父は額に大きな青筋を浮かべる。この試合が終わったあと怜は死ぬだろうとリリスは不吉な未来を思い浮かべ、合掌。南無。
おい、まて!!!なんでもう死ぬ前提で話が進んでんの!?

「おい……てめぇ…!!せっかく慈悲で恩恵の使用を認めてやったのに……なめてんのか!ゴラァァァ!!!!!!!!」

  怜の愚行にアルバートが本気の怒号をあげ、体が光ったかと思うと地面が揺れて亀裂を生み地割れを起こしていく。

「……死ね!!!クズがッッッ!!!!」

  割れた地面が次々と浮遊したかと思うと、怜に向かって飛んでいく。時速は200kmといったところか……。
  怜は集中する。死にたくない、力を手に入れるためにも。

ガンッッ!!ガガがガガがががッッッッ!!!!

「……は?」

  アルバートも観客も主催者達も唖然とする。
  弾岩が砕けちり霧散する。ほんの数刻まで固い地面だった物は今や砂と化している。
  その後も弾岩となった途端になにかに貫かれたように砂とかす。

「ッッッ!!」

  謎の攻撃を放たれ続け、焦るアルバート。焦りは怒りとなり、思考を弱らせる。
  怒りに身を任せるように弾岩を自分に纏い岩装を作り出す。化け物じみた身体能力で怜に駆け寄る。
  だが、

「すまない……」

ボゴッッッッ!!!!!!

  体の一部を岩装と共に削り取られる。左足から左の腹辺りまでを吹き飛ばされ、アルバートはそのまま床に落ちる。アルバートは最初から最後まで怜の恩恵を見抜けず、困惑した表情で倒れていった。


そこで試合終了のゴングが鳴り響き遅れたように歓声が湧く。

  アルバートは医務室に緊急搬送され、一命をとり止めたようだ。



「エアル、お前はあれがなにかわかったか?あれは…」
「言うな。わかっている。あれは確実にやつと同じ力だ。たが…あやつがか…?そうは見えんぞ。それに前回はうちの娘と契約なんぞしていなかったはずだが……。」
「……なにがどうなっている。運命は着実に変わってきているととらえていいのかね?情報王殿、経済王殿」
「さぁ?どうでしょうね……。僕からはなんとも…。知っていても教えることはできないんですよ。制約上ね」
「僕からも言うことはない。言えないし、言わない。君達の目で見て感じたことを思うようにしてくれればそれでいい」

「……あくまで不干渉なんだな?」
「えぇ。僕は世界の為だけに動いていますから」

  悪魔王とその側近は何を考えているのかわからない最強達に頭を悩ませ続ける。
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