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32 隼人side

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「はや君たちも一緒に写真撮ろうよ!!」

今の今まで息子と2人で幸せそうに写真撮ってたのに俺たちも一緒に写真撮ろうなんて優しい・・・いや、優しすぎるやつ。

小さい頃からそうだった。隣同士で飯食ってて俺の好物があればおれにくれたりデザートのいちごをもっと食べたいと小さいのが騒げば自分のをあげて。

そんな優しいやつだから、だからこそ汚い大人の策略にハマったんだろう。でも、楓のような善人が不当な扱いを受けていたことが俺は我慢ならない。この世の誰よりも幸せになって欲しいやつだから。

昔からずっと楓のことが好きで好きでたまらなかった。里親の話、実は最初は断った。楓と離れたくなかったから。

でも、この施設にいるよりも確実にいい教育が受けられる。そうすれば楓を幸せにしてやれる。楓が本当は1番好きないちごを誰にもあげることなくお腹いっぱい食べをさせてやれる。そう思ったから俺は里親の元へ行くことに決めた。適度に会いにいけばいいって思ってたのに引き取られてそんなにしないうちにに全寮制の学校に入ったから会えなかったんだけどな。

この間ほんのり俺の気持ちを匂わしたが全くと言っていいほど響いていなかった。別に期待してきたわけじゃない。それでも、こいつは俺のこと全く意識していないんだなって思うとちょっと悔しくなる。どうやったら楓が意識するかななんて頭を働かせるが俺は今のあいつについてはそこまで詳しくない。一つ確実に言えることはあいつの中の優先順位1位は、確実に優だってことだ。優に夢中だから今アタックしまくっても無駄なことはわかってる。それでも、リハビリがうまくいけば頭を撫でたり優の好きそうなものを買ったりなんて小せえことして点数を稼ごうとしてる。

点数稼ぎとも知らずにはや君ってニコニコと俺を呼ぶ声にいつもいつも俺は惑わされている。楓に翻弄されながらも楓への点数稼ぎと同時に息子の優にも媚びておく。

優は名前の通りかなり優しい。楓のことをすごく考えてくれているし、楓のことが大好きなんだと分かる。入院したばかりの時は楓になかなか甘えられなかったのに今目の前では大好きなママに抱きついて、手を繋いで頭を撫でてもらってっていう甘えたな子供だ。

「楓、昼飯食いに行くぞ。」

「はや君!お昼何食べるの?」

「寿司」

「え!お寿司!!本当?食べていいの?」

「ああ。お前の内臓はかなり回復してるし病院じゃ出せねえからな。好きだろ?」

「うん!!お寿司好き!!優は?お寿司好き?」

「ママが好きなら好き!!」

「なんだよそれ!俺納豆巻き食べたいな。」

昔から納豆巻き好きだよなこいつ。

「ママ、それお寿司じゃないよ?」

「そんなことないよ!立派なお寿司だよ?じゃあ優は何が好きなの?マグロ?サーモン?」

「・・・アジ」

こいつ、食の好みおっさんなんじゃねえの?小5でアジなんて好きになるか?光り物なんて大人になってからしか食べねえよ。

「ふふっ、あんまり子供っぽくないね。子供ってマグロとかサーモンとか玉子とかが好きなのかと思ってた。」

「マグロとかも好きだけど、俺はアジが1番好きなの!」

「他には?優の好きな食べ物なんでも教えて?」

まだまだ親子としてはお互いのこと知らないことだらけなんだと思う。それでも確実に一歩一歩お互い歩み寄っていて、お互いへの愛情はそこらへんの親子にだって負けねえんだろうな。

2人はよく似ている。何度か夜病室を覗いたが寝ている時に口が開いてるところや寝言なのかよく分かんねえがむにゃむにゃ言うところも似てる。

寿司食べてる姿だってそっくりだ。

「ママ!納豆巻きだよ!はい、あー」

「んっ!おいしい!ありがとうな!」

「ママ他には何食べたいの?俺同じの食べる!!」

「優は好きなの食べたらいいんだぞ?俺に無理に合わせなくても。」

「ママと一緒がいいからいいの。」

「じゃあ優の好きなアジ一緒に食べよう?」

なんか親子っていうよりバカップルみたいな感じがするのは俺だけか?甘々な雰囲気出てんだけど。それ俺が楓と出したい雰囲気なんだけど。

横見て見れば柊さんはエグい量の寿司食ってるし。

「柊さん、大食いなんすね。」

「え?そうですか?まだ25皿ですよ?俺寿司行く時よく幹也先輩と行くんですけど、あの人40皿とか食べるから俺なんて全然普通だと思ってました。」

幹也?ああ、探偵か。あの探偵ガリガリだったよな?あの腹の中に40皿入るのかよ。うわー、ちょっと見てみてえ。俺食えても15とかだもんな。

ていうか、なんだこのテーブル。大食いのやつとカップルみたいにラブラブする親子と俺って。なんかカオスじゃねえか?

はあ、俺はいつになったら楓に気持ち伝えれんだろうな。ていうか伝えれるのか?
タイミングが掴めなさすぎるんだよな。

まあ、こいつが笑っているならそれでいいか。

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