ダイヴのある風景

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第五章

第五章 ⑧

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「ちょっと。そこのあんたたち」向こうから、若い男が数人走ってくる。腕章をしていて、自然保護団体と書いてある。「ダイヴする人は、手早くお願いしますよ。ここで長時間騒がれると困るんだ。鳥や小動物が怯えるんでね」
「ほう。偉くなったもんじゃのう、高貴。わたしゃ、鼻が高いわい」と猫ばあさん。
「え──ばあちゃん!」男が言う。「元気だったのか!」
「ふふ。臭い演技はやめてくれないかい。わたしが健在だってことくらい、お見通しだったくせに」
 高貴と呼ばれた自然保護団体の男は、鼻を擦りながら照れる。「まあ、な。知ってたかもな」苦笑いのあと、男は冴子と花江に目を向けた。「あ。お嬢さんがた。それに彼氏たちかな。あんときゃ、失礼。怖い思いをさせてすまなかったな」
 男は後ろポケットからカツラを取り出した。頭に乗っけると、リーゼントの完成だ。
「えっ! じゃあ、あのときのヤンキーさんたちって」花江が目を見開いた。
「そうさ。二人いた俺の連れも、他の猫ばあさんの孫だよ」そう言って、後ろを振り返った。「おい、金と銀、こっちへ来い!」
 金男と銀男がやってきて、高貴さんと並んだ。二人ともなぜか笑い転げていた。相変わらずよく笑う人たちだ。しかし、なぜ笑う。
「嘘だあ。もっと不細工だったぞ!」と信良が弓矢で射抜く。
「絶対に女にモテない顔だったわ」と冴子が拳銃発射。
「友だちにすら、なりたくない顔だった」と僕が爆弾を落とす。
「名前、高貴だって? あり得ないよお」と花江が追加爆弾で加勢する。
 カナが高貴さんの履いているヘビーなブーツを指さしてぽつりと言う。「足、臭そうですね」
 世紀末核兵器の発射完了。
 高貴さんたちは落ち込んでウンコ座り、いや、ヤンキー座りをして、地面にのの字を書き始めた。
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